コラム・ブログ

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2025年7月6日

「“歩くと足の甲が痛い”…それ“疲労骨折”かも?」

ハイライト

「最近、歩くだけで足の甲が痛む…」そんな症状、もしかすると“疲労骨折”が原因かもしれません。運動習慣のある人だけでなく、一般の方にも起こるこの隠れた骨のトラブルについて、症状から診断、治療、そして再発予防まで丁寧に解説します。

目次

疲労骨折とは?──痛みの正体を知ろう

疲労骨折とは、骨に繰り返し微小な外力(負荷)がかかることで、骨が壊れていく「使いすぎによる骨折」のことを指します。通常の骨折のように転倒や強打によるものではなく、日常の動作や運動、長時間の歩行などの“繰り返し”によって骨の微細な損傷が蓄積していき、ついには亀裂が生じてしまうのです。

疲労骨折は下記の部位で起こりやすいとされています:

◾️中足骨(足の甲)

◾️脛骨(すねの骨)

◾️腓骨(外くるぶし)

◾️大腿骨

◾️骨盤(恥骨)

◾️脊椎(特に若年スポーツ選手)

特に「足の甲の痛み」として現れるものの多くは、中足骨(ちゅうそくこつ)の疲労骨折が疑われます。

疲労骨折の背景には以下の要因があります:

◾️急激な運動量の増加

◾️長時間の立ち仕事や歩行

◾️不適切な靴

◾️偏った体重のかかり方(アライメント異常)

◾️栄養不足や骨密度の低下(女性アスリートトライアドなど)

これらはアスリートに限らず、一般の方にも当てはまります。特にダイエット目的のウォーキングや、観光などで歩く機会が急増した際にも起こりやすいのが特徴です。

足の甲に多い“中足骨疲労骨折”の特徴

中足骨は、足の甲の部分を形成している5本の長い骨で、足指と足首の間にあります。歩行やランニング、ジャンプの着地などで負荷が集中する部位です。

足の甲の一点が痛む

歩行時や押した時にズキズキ痛む

運動後に痛みが強まる

腫れや軽い熱感を伴うことも

初期にはレントゲンに写らないこともある

疲労骨折の痛みは“鈍く重い痛み”から始まり、進行するにつれて“ピンポイントな痛み”へと変化していきます。

特に疲労骨折が多いのは第2・第3中足骨です。この部分は構造的に他よりも動きが制限され、衝撃が集中しやすいためです。

疲労骨折の診断と見極め方──整形外科での対応

  • 診断の流れ

整形外科では、以下のような流れで診断を進めます:

  1. 問診(いつから・どんな痛み・運動歴など)
  2. 視診・触診(腫れや圧痛点の確認)
  3. 画像検査
    • レントゲン:早期では写らないことがある
    • MRIや骨シンチグラフィ:早期診断に有効
    • 超音波検査:骨膜反応や浮腫の確認が可能
  • 鑑別診断も重要

疲労骨折に似た症状を示す疾患も多く、以下のような鑑別も行います:

足背腱鞘炎

中足骨頭痛(モートン病など)

関節炎(リウマチなど)

有痛性外脛骨

このため、専門医の診断が必要不可欠です。

保存療法から復帰まで──リハビリテーションの重要性

  • 治療の基本は「安静」

疲労骨折の治療は基本的に保存療法が中心で、以下が含まれます:

■活動量の制限(ランニングやジャンプの中止)

■松葉杖や足底免荷ブーツの使用

■鎮痛薬(必要に応じて)

骨折部位や重症度により、治癒期間は3〜8週間程度です。

  • 整形外科クリニックでのリハビリ

当院など整形外科クリニックでは、下記のようなリハビリを提供しています:

■免荷期の筋力維持トレーニング(大腿四頭筋、下腿三頭筋など)

■荷重再開時の動作指導

■フォームや歩き方の修正

■足部・下肢のアライメント評価と改善

また、超音波治療(LIPUS)や電気刺激療法など、骨癒合を促進する機器も導入されています。

*当院にも超音波療法を実施しています!!詳細はこちらから↓↓

  • 復帰までの段階的アプローチ

痛みが改善しても、いきなり通常の活動に戻ると再発のリスクがあります。リハビリスタッフとともに、徐々に負荷を戻す計画が重要です。

予防と再発防止のためにできること

  • 正しい靴の選び方とインソール

足の形に合わない靴やクッション性の乏しい靴は、中足骨に無理な負担をかけます。足底圧の評価を基にしたオーダーインソールも有効です。

  • 骨の健康を保つ生活習慣

■カルシウム・ビタミンDの摂取

■適度な日光浴

■女性では無月経や低体重の管理も重要

  • 運動時の注意点

急な運動強度の増加を避ける

オーバートレーニングの回避

疲労や違和感が出たら早めに休養をとる

  • 筋力と柔軟性の向上

足のアーチを支える筋肉(足底筋群・後脛骨筋)や下肢全体の柔軟性を高めることも、負担の分散に役立ちます。

参考文献

1)Kahanov L, Eberman LE, Games KE, Wasik M: Diagnosis, treatment, and rehabilitation of stress fractures in the lower extremity in runners. Open Access J Sports Med. 4: 15–23. 2013.

2)Matheson GO, et al: Stress fractures in athletes. A study of 320 cases. Am J Sports Med. 15(1): 46–58. 1987.

3)Snyder RA, Koester MC, Dunn WR: Epidemiology of stress fractures. Clin Sports Med. 25(1): 37–52. 2006.

4)田中康仁: 中足骨の疲労骨折に対する診断と治療. 整形外科. 63(7): 777–782. 2012.

5)日本整形外科学会: 疲労骨折の診断と治療ガイドライン. 2020.

 



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