コラム・ブログ

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2025年8月2日

「熱中症の原因とその対策」

ハイライト

熱中症は「体にこもった熱を外へ逃がせなくなること」で起こります。高温・多湿・強い運動や体調不良などが原因。予防は「水分・塩分補給」「涼しい環境」「活動の調整」。もし発症が疑われたら、“まず冷やす”ことが最優先です。整形外科クリニックでは応急対応だけでなく、リハビリ中の環境管理や地域への啓発も重要な役割です。

目次

熱中症とは?──体の中で何が起こっているのか

 

症状は軽いものから重いものまでさまざまです。

◾️軽度:めまい・立ちくらみ・こむら返り(熱けいれん)・大量の汗

◾️中等度:頭痛・吐き気・だるさ・注意力の低下

◾️重度:意識がもうろう・けいれん・体温40℃近い・肝臓や腎臓の機能障害

 

このように、ただの「疲れ」や「夏バテ」と思って放置すると、急に命に関わる重症化を起こす危険があります。

誰がなりやすい?──リスクの高い人と環境

◾️高齢者:暑さを感じにくく、喉の渇きも自覚しづらい。汗をかく力も弱くなっています。

◾️子ども:体温調整が未熟で、環境の影響を強く受けやすい。

◾️慢性疾患のある人:心臓病・腎臓病・糖尿病などがあるとリスクが上がります。

◾️薬を服用している人:利尿薬(尿を増やす薬)、抗コリン薬(排尿や発汗を抑える作用)、精神安定剤、降圧薬、鎮痛薬(NSAIDs)などは体温調整に影響します。

◾️炎天下の屋外活動(スポーツ・作業)

◾️換気の悪い室内(エアコンを我慢した部屋など)

◾️梅雨明けなど「体がまだ暑さに慣れていない時期」

◾️厚着・ヘルメット・防具を着けた状態での活動

「熱中症は外だけ」と思われがちですが、実際には室内での発症が非常に多く報告されています。

日常・運動・仕事での予防法

  • 日常生活での工夫

◾️室内の温度・湿度を測定し、暑ければ冷房を迷わず使う

◾️就寝中も高温多湿を避ける(熱帯夜はエアコンを活用)

◾️水分をこまめに摂取(1日1.2L以上を目安に)

◾️汗をかいたら水だけでなく塩分(経口補水液・塩飴など)も摂る

◾️通気性の良い服、帽子や日傘を利用する

 

  • 運動時の予防

◾️WBGT(暑さ指数)が28℃以上では激しい運動を控える、31℃以上では中止

◾️運動中は10〜20分ごとに水分補給

◾️発汗量が多いときはスポーツドリンクや経口補水液を利用

◾️休憩時に日陰・扇風機・冷却ベストを活用

◾️部活動やスポーツ大会では「暑さ指数」に基づいた活動制限を導入

 

  • 職場での予防

◾️暑さ指数を基準に作業時間・強度を調整

◾️涼しい休憩所を用意し、定期的に休む

◾️作業開始前に体調確認(睡眠不足や二日酔いはリスク大)

◾️「熱中症警戒アラート」が出た日は作業内容を縮小・中止する勇気も必要

 

熱中症が疑われたときの応急処置と病院に行く目安

  • 応急処置の手順
  1. 涼しい場所に移動する
  2. 衣服をゆるめ、できれば脱がせる
  3. 全身を水で濡らし、扇風機やうちわであおいで冷却(蒸発で体を冷やす)
  4. 氷嚢を首・脇・太ももの付け根に当てて冷却
  5. 意識がしっかりあれば少しずつ水分・塩分を補給
  • 病院受診が必要なサイン

◾️意識がもうろう、呼びかけに反応が鈍い

◾️歩行が困難、けいれんがある

◾️嘔吐を繰り返す

◾️改善せず、体温が高いまま

 

こうした場合はすぐに119番を。救急車を待つ間も「冷やし続ける」ことが救命に直結します。

整形外科クリニックでの役割と患者さんへのサポート

  • 外来での対応

夏には「運動後のめまい・倦怠感」で受診する方もいます。受付で「炎天下での活動」「服薬内容」を確認し、熱中症の可能性を早期に見極めることが大切です。軽症なら補水・安静で改善しますが、重症例ではすぐに救急搬送と冷却が必要です。

  • リハビリ室での取り組み

◾️室温・湿度を管理し、暑さ指数(WBGT)で運動強度を調整

◾️こまめに休憩・補水を促す

◾️外歩行訓練は日陰や朝夕の涼しい時間帯に実施

◾️発汗が多いときは電解質飲料の摂取を許可

  • 整形外科的症状との関わり

熱中症では「筋けいれん」がよく見られます。これは大量に汗をかき、塩分が不足して筋肉が異常収縮を起こすものです。整形外科でよく扱う「こむら返り」と似ていますが、背景に脱水・電解質異常があるため、対応としては水分・塩分の補給が不可欠です。

 

参考文献

1)日本救急医学会: 熱中症診療ガイドライン2024. 日本救急医学会. 2024.

2)横堀將司ほか: 熱中症診療ガイドライン2024の特徴. 保健医療科学. 2025.

3)環境省・気象庁: 熱中症予防情報サイト. 2025.

4)日本スポーツ協会: 熱中症予防運動指針. 2024.

5)文部科学省: 学校における熱中症対策ガイドライン. 2024.

6)日本生気象学会: 日常生活における熱中症予防指針 Ver.4. 2022.

7)厚生労働省: 職場における熱中症予防 基本対策のススメ. 2023.

 

 



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