コラム・ブログ

コラム・ブログ

2025年7月30日

「“腰椎分離症”からのスポーツ復帰、いつからOK?焦りが禁物な理由」

ハイライト

“腰椎分離症”は無理をすると悪化しやすい病態。競技復帰の目安は「痛みが取れたら」ではなく「骨が癒合してから」。焦らず確実なステップが、長く競技を続けるカギとなります。

目次

腰椎分離症とは?─発症の背景とメカニズム

腰椎分離症とは、腰椎の後方にある椎弓という部分が骨折する、または疲労して亀裂が入ることで起こる障害です。10代の成長期に多く見られ、とくに部活動などで身体を酷使している中学生・高校生に多く発症します。

この疾患は、ジャンプや腰の反復的な回旋動作(例えば野球のスイングや体操のひねり動作など)により、椎弓に繰り返し負荷がかかることが原因とされています。とくにL5(第5腰椎)で多く見られます。

成長期は骨の柔軟性が高い反面、疲労にも弱いため、負荷が重なることで骨にストレスが蓄積し、微細な骨折(疲労骨折)が生じます。これが「分離症」です。

腰痛が主な症状で、安静時には痛みがないものの、運動時や後屈・ひねり動作時に痛みが増します。

診断にはX線やMRI、CTが用いられ、とくにMRIでは骨の浮腫を確認することで早期診断が可能です。

なぜ腰椎分離症はスポーツ障害になりやすいのか?

腰椎分離症が“スポーツ障害”と呼ばれるのには理由があります。スポーツ選手は筋力がある一方で、繰り返される過負荷が慢性的に加わるため、身体の一部に過剰なストレスが集中しやすく、結果として疲労骨折につながりやすいのです。

◾️野球(特に投手や捕手)

◾️サッカー(キック動作、ヘディング)

◾️体操(着地や回旋)

◾️テニス(サーブ動作)

◾️バレーボール(ジャンプ着地)

◾️陸上競技(跳躍種目)

これらに共通するのは「反復する体幹の動き」や「瞬発的な力の発揮」です。腰に回旋+伸展の動作が加わる競技は、特にリスクが高いとされています。

 

骨の成長が急速な時期には、筋肉や腱とのバランスが一時的に崩れやすくなります。さらに練習量が過剰で、休養やコンディショニングの意識が低いと、より発症リスクが高まります。

スポーツ復帰のタイミングと注意点

  • 治療の基本ステップ

腰椎分離症の治療では、骨癒合の可否がポイントになります。

 

骨癒合が得られる初期分離期(MRIで浮腫あり)

  • 安静+装具療法(コルセットなど)
  • 3〜6ヶ月のスポーツ休止(初期で発見できれば早期に骨癒合が期待できる)
  • MRIで浮腫消失後、CTなどで骨癒合の確認、徐々に運動再開

 

骨癒合が得られない終末期の場合

  • 痛みがなければスポーツ再開可
  • しかし再発リスクあり、運動量調整と体幹筋トレが必須

 

  • 復帰の目安

◾️「痛みが取れた=復帰OK」ではない

◾️骨癒合がしっかりできているかを確認

◾️医師・理学療法士との連携が重要

 

  • 焦りは禁物な理由

急いで復帰しようとすると、骨癒合が進まず慢性化したり、他の部位への代償動作による新たな障害(ヘルニア、腰椎椎間関節症、仙腸関節障害など)を招くリスクがあります。

 

職業との関連と労働災害、腰痛との関係

腰椎分離症は若年層に多い疾患ではありますが、大人になってからも後遺症として腰痛が残るケースも少なくありません。とくに重労働や同一姿勢が長時間続く職業では、症状が再燃することもあります。

  • 腰痛が多い職業例

◾️介護職(中腰姿勢、持ち上げ動作)

◾️建設・運送業(重量物の搬送)

◾️看護師(患者の移乗動作)

◾️IT・デスクワーク(長時間同一姿勢)

  • 労働生産性への影響

腰痛による欠勤や作業能率低下は、労働生産性に直接的な影響を与えます。腰椎分離症の既往がある方は、体幹筋の筋力低下や柔軟性の低下があることが多く、再発リスクが高いため、労働衛生上の対策も重要です。

整形外科クリニックにおけるリハビリテーションの役割

整形外科でのリハビリは、「治療」だけでなく「予防」と「競技復帰後の再発予防」も含みます。

 

リハビリで行う主な内容

  • 体幹筋強化トレーニング(特に腹横筋・多裂筋など)
  • 股関節・胸郭の可動域改善(腰への代償動作を減らす)
  • 姿勢・動作指導(スポーツ時の身体の使い方)
  • 段階的な競技復帰プログラム

 

  • 装具療法との併用

初期にはコルセットによる固定を行いながら、筋力が維持できるよう非負荷の体幹筋トレーニング(ドローインやプランクなど)を導入します。

 

体幹の筋肉をエコーで可視化しながらトレーニング!!

 

参考文献

1)山田真也 他: 腰椎分離症に対するMRIを用いた治療方針の再評価. 整形外科と災害外科. 58(1): 1–6. 2009.

2)中村俊康: 成長期スポーツ障害の予防とリハビリテーション. 小児科臨床. 68(5): 865–871. 2015.

3)宇佐神慎: 腰椎分離症・分離すべり症に対する保存療法と装具治療. MB Orthop. 33(9): 46–52. 2020.

4)厚生労働省: 職業別にみた腰痛の発生状況. 職業性疾病統計調査. 2022.

5)日本臨床スポーツ医学会: 成長期スポーツ選手の腰痛診療ガイドライン. 南江堂. 2017.

 



一覧へ