2025年7月13日
腰痛は、日本の労働者における最も多い身体的訴えのひとつであり、仕事への支障や労災申請の主因にもなっています。本コラムでは、腰痛が仕事に及ぼす影響、発症しやすい職業、原因、整形外科クリニックでのリハビリの役割を詳しく解説します。
日本における腰痛の有病率は非常に高く、厚生労働省の「国民生活基礎調査(2022年)」によれば、男性では1位、女性では2位の症状として報告されており、全年齢層にわたって広く見られます1)。
労働者においても腰痛は極めて頻度が高く、厚生労働省の「労働者健康状況調査(2022年)」では、腰痛を訴える労働者は約60%を占めており、業務継続に支障をきたすケースも少なくありません。
腰痛は短期的な欠勤や長期の療養休暇、さらには離職につながるリスクを持ちます。特に慢性化した腰痛は、いわゆる「プレゼンティーイズム(出勤してもパフォーマンスが落ちている状態)」の大きな要因ともされ、企業全体の生産性にマイナスの影響を及ぼします。
厚生労働省の推計によれば、腰痛による労働損失(医療費、欠勤、生産性低下など)は年間数千億円にのぼるとされ、国や企業にとっても深刻な問題です2)。
腰痛のリスクはすべての職種に存在しますが、特に以下のような職業では発症リスクが高くなります。
① 介護職
ベッドからの移乗、オムツ交換、体位変換など、腰部に強い負荷がかかる動作が日常的に求められます。日本の労災統計でも、介護職は腰痛による労災申請のトップに位置します3)。
② 建設・製造業
重い荷物の持ち運びや不自然な体勢での作業が多く、筋肉・椎間板・椎間関節などへの慢性的なストレスが蓄積されやすい環境です。
③ 長時間座位のデスクワーク
意外に思われるかもしれませんが、オフィスワーカーにも腰痛は多く見られます。静的な座位姿勢によって腰背部の筋肉が持続的に緊張することが、血流低下や筋疲労、椎間板圧迫につながります。
④ 運転手・配達業
長時間の車両運転は、振動や不自然な姿勢により椎間板や靭帯に負荷をかけ続けることになり、腰痛の大きな要因になります。