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2025年8月7日

「足首のぐらつきにはテーピングが有効⁉︎」

ハイライト

足首の“ぐらつき”は単なる捻挫の後遺症ではなく、「慢性足関節不安定症」と呼ばれる状態に進行することがあります。適切なリハビリやテーピングを活用することで、日常生活やスポーツでの再発リスクを軽減できる可能性があります。本コラムでは、足首不安定性のメカニズムと治療・予防のポイントを整形外科的視点から詳しく解説します。

目次

足首の“ぐらつき”とは? ― 捻挫と慢性足関節不安定症

足首の捻挫はスポーツ外傷の中でも最も多い外傷の一つです。特に内反捻挫(足首を内側にひねる動作)が圧倒的に多く、外側の前距腓靱帯(anterior talofibular ligament: ATFL)が損傷することが多いとされています。

軽度であれば自然に回復しますが、靱帯が大きく損傷すると「ぐらつき」や「踏ん張れない感覚」が残ります。こうした不安定感が繰り返されると、**慢性足関節不安定症(Chronic Ankle Instability: CAI)**へ進行し、再発を繰り返す“クセ”のある足首となってしまいます。

◾️足首が抜けるような感覚

◾️何もない場所でつまずく

◾️スポーツ動作で力が入りにくい

◾️捻挫の再発を頻発する

この状態を放置すると、軟骨損傷や変形性足関節症のリスクにもつながることが報告されています 。

なぜ足首はぐらつくのか? ― 靱帯損傷と固有感覚の低下

足関節外側には前距腓靱帯・踵腓靱帯・後距腓靱帯があり、関節の安定性を担っています。特に前距腓靱帯は内反捻挫で最も損傷されやすい靱帯です。損傷後に十分な治癒が得られないと、関節の安定性は低下します。

靱帯や関節包には固有感覚受容器が存在し、足関節の位置を脳へ伝えています。損傷によりこれらの感覚が低下すると、体は足首の正確な位置を把握できず、無意識に“ぐらつき”や転倒を繰り返すようになります。

捻挫後は腓骨筋群の反応が遅くなることも知られています。本来であれば不意の内反に対し素早く収縮して足首を守りますが、遅れることで再び捻挫が発生するのです。

テーピングは本当に有効? ― 種類と目的を整理

  • テーピングの役割

テーピングは、靱帯や筋肉の働きを補助し、関節の安定性を一時的に高めることを目的としています。特にスポーツ時やリハビリ初期においては有効なサポートとなります。

  • 主なテーピングの種類(詳細は過去のコラムに記載しています!!)

◾️非伸縮テープ(ホワイトテープ)

強力な固定力があり、急性期や競技中の再発予防に有効。

ただし長時間の使用は循環障害のリスクがある。

◾️伸縮テープ(エラスティックテープ)

固定と可動性のバランスを持ち、復帰期に最適。

動きを妨げずに安定感を与える。

◾️キネシオロジーテープ

皮膚を持ち上げて血流改善や痛み軽減を狙う。

効果には個人差があり、短期的な補助として利用される。

  • テーピングの限界

テーピングはあくまで補助であり、根本的な解決には靱帯機能や筋力の回復が不可欠です。長期的に依存すると、関節周囲筋の働きが弱まり、逆に再発リスクが高まることもあるため、適切な場面で活用することが重要です。

慢性足関節不安定症と整形外科でのリハビリテーション

  • リハビリの目的

◾️足関節の安定性を取り戻す

◾️再発を防ぐ

◾️スポーツ復帰や日常生活の質を高める

  • 主なリハビリ内容

◾️固有感覚トレーニング

バランスボードや片脚立ちを用いて、足首の位置感覚を回復させる。

◾️筋力トレーニング

特に腓骨筋群・後脛骨筋を強化し、内反捻挫を防ぐ。

コアや股関節筋群も連動して強化し、下肢全体の安定性を高める。

◾️関節可動域の調整

固さが残る場合はストレッチを、逆に過可動の場合は安定性強化を重視する。

◾️段階的なスポーツ復帰

ランニング → ジャンプ → スポーツ動作と段階を踏んで復帰を支援。

  • テーピングとリハビリの併用

◾️リハビリ初期やスポーツ再開時にテーピングを用いることで、不安感を減らしながら段階的に機能回復が可能となる。

当クリニックでの取り組みと患者さんへのメッセージ

  • 客観的評価の活用

当院では、超音波検査やストレスX線を用いて靱帯損傷の程度や関節の動態を評価しています。これにより、テーピングの必要性やリハビリ方針を科学的根拠に基づき決定します。

  • 個別性のあるリハビリプログラム

◾️スポーツ選手には競技特性を踏まえた復帰プラン

◾️高齢者には転倒予防を重視したバランス訓練

◾️仕事で長時間立つ方には、靴選びや生活動作の指導

 

参考文献

  1. Hertel J: Functional anatomy, pathomechanics, and pathophysiology of lateral ankle instability. J Athl Train. 37(4):364-375. 2002.
  2. Gribble PA, et al.: Evidence review for the 2016 International Ankle Consortium consensus statement on the prevalence, impact, and long-term consequences of lateral ankle sprains. Br J Sports Med. 50(24):1496–1505. 2016.
  3. Kaminski TW, et al.: National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Conservative Management and Prevention of Ankle Sprains in Athletes. J Athl Train. 48(4):528–545. 2013.

 

 

 



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