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2025年6月17日

「“雨の日は動きたくない…”は脳の反応?運動と気分の深い関係」

ハイライト

「雨の日は気分が沈んで体も動かない…」そんな感覚、実は脳や神経、ホルモンの働きによるものかもしれません。今回は、天気と脳の関係、気分と運動のつながり、さらに整形外科的なリハビリテーションが心身に与える影響までをわかりやすく解説します。

目次

雨の日に“やる気”が出ないのはなぜ?

雨が降ると、何となく気分が落ち込んだり、やる気が起きなかったりする…そんな経験は誰にでもあるでしょう。この現象は、単なる“気のせい”ではありません。実は天候と気分には科学的な関連があり、脳の働きが関係しています。

雨の日は日照時間が減り、太陽の光を浴びる量が自然と少なくなります。すると、脳内で「セロトニン」と呼ばれる神経伝達物質の分泌が低下すると考えられています。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分の安定や意欲の維持に深く関与しています¹⁾。

さらに、雨の日は「低気圧」によって自律神経が乱れやすくなります。自律神経は、呼吸や体温調節、内臓の働きなどを無意識にコントロールする重要な神経で、交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、身体のだるさや気分の不調が現れることがあります。

運動が脳に与えるポジティブな影響

運動をすると「エンドルフィン」や「ドーパミン」などの神経伝達物質が分泌されます。これらは気分を高めたり、ストレスを軽減したりする効果があり、うつ状態の改善にも効果があるとされています²⁾。

特に「リズム運動」(ウォーキングや軽いジョギングなど)はセロトニンの分泌を促すとされています。朝の散歩やストレッチでも効果があり、天気の悪い日こそ積極的に取り入れたい習慣です。

「雨の日だから運動できない」は言い訳になりません。室内でできる簡単なストレッチやスクワットでも、十分に気分転換になります。整形外科クリニックでは、室内で行える運動指導や自主トレーニングの提案も行っています。

気分が落ちたとき、身体に出るサインとは

  • 心と身体の密接なつながり

「気分が重い」とき、肩や首がこる、腰が重い、動くのが面倒になるといった“身体の症状”を訴える方が多く見られます。これは心理的なストレスが筋緊張や自律神経を介して身体にも影響を及ぼしているためです³⁾。

  • 不定愁訴として現れる症状

「病院に行っても原因がわからない」と言われるような症状、いわゆる“不定愁訴”も、気分の低下やストレスと関連している場合があります。こうした症状が続くと、日常生活にも支障が出るため、早めの対処が大切です。

リハビリテーションで「心」も整える

  • リハビリは“身体”だけじゃない

整形外科のリハビリというと「運動機能の回復」だけに注目されがちですが、実は心理的な側面にも効果があります。体を動かすことで気分が前向きになったり、社会的なつながりを感じたりすることができるのです。

  • 実際のリハビリ場面での工夫

整形外科のリハビリテーションでは、季節や天気に応じて内容を柔軟に調整します。雨の日でも安全にできる屋内でのエクササイズ、モチベーションを維持するための声かけや簡単な日記の導入なども行っています。

  • 高齢者にとってのリハビリの意義

特に高齢者では、運動不足が心身の不調を助長します。リハビリテーションを通じて「少しでも動く」習慣を身につけることで、筋力の維持だけでなく、うつ症状の予防や改善にもつながります⁴⁾。

今日からできる!雨の日でも心が晴れる生活習慣

  • 室内でも朝日を浴びる工夫

雨の日でも、カーテンを開けてできるだけ自然光を取り込むだけでセロトニンの分泌は促されます。照明器具を工夫するのも一つの方法です。

  • 食事からも“やる気”を補う

ビタミンB群やトリプトファン(セロトニンの原料)を含む食品を意識して取り入れることも気分の安定に役立ちます。納豆、豆腐、バナナなどはおすすめです。

*栄養についてのコラムはこちらから↓↓

筋肉を作る栄養素

  • 小さな運動習慣を持つ

テレビのCM中にストレッチ、階段を使う、5分だけ体操する…そんな“ながら運動”でも、続ければ大きな効果があります。クリニックでは、個々のライフスタイルに合った運動指導も行っています。

 

参考文献

1)Young SN: How to increase serotonin in the human brain without drugs. J Psychiatry Neurosci. 30(5): 368–377. 2007.

2)Craft LL, Perna FM: The benefits of exercise for the clinically depressed. Prim Care Companion J Clin Psychiatry. 6(3): 104–111. 2004.

3)Nakao M et al: Somatization and somatoform disorders in Japan: treatment and research. Psychosom Med. 61(5): 652–659. 1999.

4)Blumenthal JA et al: Exercise and pharmacotherapy in the treatment of major depressive disorder. Psychosom Med. 69(7): 587–596. 2007.



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