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2025年6月23日

「骨密度を上げるには運動より“日光浴”?ビタミンDの意外な重要性」

ハイライト

骨を強くするには運動だけでは不十分!? 実は“日光浴”によるビタミンDの生成が、骨密度の維持と改善に重要な役割を果たしています。この記事では、ビタミンDの知られざる働きと、整形外科でのリハビリにおける活用法について詳しく解説します。

目次

骨密度とは?なぜ重要なのか

骨密度を高める要因:運動・栄養・そしてビタミンD

骨を強くするには、骨に負荷をかける「運動」、骨を構成する材料を取り入れる「栄養」、そして骨形成を助ける「ビタミンD」が三本柱です。

ウォーキングや軽いジャンプなど、重力を利用した運動が骨に刺激を与え、骨芽細胞の働きを活性化させます。しかし、高齢者では激しい運動が難しい場合もあります。

カルシウムやたんぱく質、マグネシウム、ビタミンKなどが重要です。ただし、これらを摂取しても、体内で適切に利用されなければ骨形成は進みません。

ビタミンDは、腸管でのカルシウム吸収を促進するだけでなく、骨芽細胞の分化・活性化にも関わります。つまり、カルシウムを効率よく利用するためにビタミンDが不可欠なのです。

ビタミンDの役割と“日光浴”の効果

ビタミンDには2つの主な型があり、D2は植物性食品から、D3は主に皮膚が紫外線に当たることで生成されます。

  • 日光とビタミンD生成

人間の体は、日光(紫外線B波)を浴びることで皮膚内でビタミンD3を合成します。これが肝臓や腎臓で活性型ビタミンDに変化し、骨代謝を促進します。

適切な日光浴の目安は、夏場であれば腕や顔に15分ほど、冬場は30分程度です(地域や時間帯によって異なります)。ただし、日焼け止めを使うと合成が抑えられる点には注意が必要です。

  • 食事だけでは補いきれない

ビタミンDを含む食品には、サケ、サバ、卵黄、キノコ類がありますが、食事だけでは推奨量に届かないことが多く、日光浴の重要性が高まります1)

ビタミンD不足のリスクと現代人の課題

現代人は屋内活動が多く、ビタミンD欠乏が社会的な問題となりつつあります。特に高齢者では、皮膚での合成能力も低下し、ビタミンD不足によって以下のような健康リスクが懸念されます。

◾️骨軟化症(成人のくる病)

◾️骨粗鬆症の進行

◾️筋力低下や転倒リスクの増加

◾️免疫機能の低下

さらに、慢性疾患(糖尿病、心血管疾患など)とも関連が報告されており、単に骨の問題にとどまらない点が注目されています2)

整形外科でのビタミンDを意識したリハビリの工夫

整形外科では、骨粗鬆症患者へのリハビリテーションが重要な役割を担っています。従来は運動療法と栄養指導が中心でしたが、近年はビタミンDの補充とその効果にも注目が集まっています。

  • リハビリ室での工夫

◾️窓際での軽運動やストレッチを行い、日光に当たる時間を確保

◾️屋外歩行の習慣化を支援

  • ビタミンD補充療法との併用

骨折リハビリ中や高齢者では、ビタミンD製剤の併用も効果的とされ、骨密度の改善や再骨折の予防にも寄与する可能性があります3)

 

*当院でも骨密度の測定も実施しています!!ご興味ある方は是非ご相談ください。

骨密度について

参考文献

1)小川佳宏ら:ビタミンDの代謝と骨代謝への関与. 日本内科学会雑誌. 106(3):450-455. 2017.

2)Holick MF: Vitamin D deficiency. N Engl J Med. 357(3):266–281. 2007.

3)Bischoff-Ferrari HA et al: Fall prevention with supplemental and active forms of vitamin D: a meta-analysis of randomized controlled trials. BMJ. 339:b3692. 2009.

 



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