2025年4月25日
筋力は年齢とともに低下しますが、適切な運動を行うことで何歳になっても向上が可能です。本コラムでは、加齢による筋力低下のメカニズムやそれに伴うリスク、そして年齢に応じたトレーニング方法について詳しく解説します。
「サルコペニア」という言葉をご存知でしょうか?これは加齢に伴って筋肉量が減少し、筋力が低下していく現象を指します。一般的に30歳を過ぎた頃から、筋肉量は年間1%程度ずつ減少していくとされ、特に下肢筋力の低下が著しいと報告されています 1)。
加齢による筋力低下の主な要因は以下の通りです。
▪️筋線維の萎縮(特に速筋線維)
▪️運動量の減少
▪️ホルモンバランスの変化(テストステロンや成長ホルモンの減少)
▪️神経系の変化による筋力発揮能力の低下
ある研究では、70歳の高齢者は20代の若年者に比べ、筋力が約30〜40%低下しているとされています 2)。しかし、これは運動習慣によって大きく変動することも知られており、「動かない高齢者ほど筋力は落ちる」のが現実です。
筋力の低下は、単に「力が弱くなる」だけではありません。歩行速度の低下、バランス能力の低下を招き、転倒や骨折のリスクが高まります 3)。特に大腿骨近位部骨折は高齢者にとって致命的となることが多く、要介護状態への移行を早める要因にもなります。
「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」とは、筋肉・関節・骨などの運動器が衰えることで、日常生活に支障をきたす状態を指します。これは筋力低下が大きな要因のひとつとされており、将来的な寝たきり予備軍ともいえる状態です 4)。
筋力が低下すると、以下のような日常動作が困難になります。
▪️階段の昇降
▪️買い物や料理などの家事
▪️外出や旅行などの趣味活動
これらが制限されることで、精神的な意欲の低下にもつながり、うつ傾向や社会的孤立の原因にもなります。
結論から言えば、「何歳でも筋力はつきます」。実際に80歳を超えてからトレーニングを始めた人でも、筋力の向上や歩行能力の改善がみられたという研究報告が多数存在します 5)。
特に、下記のような内容のトレーニングは高齢者においても高い効果が認められています。
▪️レジスタンストレーニング(自重・マシン・ゴムバンド)
▪️バランストレーニング
▪️有酸素運動の併用(ウォーキング、サイクリング)
筋肉は非常に「可塑性(適応能力)」の高い組織であり、刺激を与えれば年齢に関係なく応えてくれる組織です。もちろん若年層に比べると成長スピードは緩やかになりますが、地道な積み重ねで確実に成果は現れます。
安全に、そして効果的に筋力を高めるためには以下のようなメニューがおすすめです。
▪️スクワット(椅子使用でも可)
大腿四頭筋・大殿筋の強化。転倒予防に効果的。
▪️かかと上げ(カーフレイズ)
ふくらはぎの筋力を鍛えることでバランス維持に貢献。
▪️タオルギャザー
足の指でタオルをたぐり寄せ、足部の細かい筋肉を鍛える。
▪️チューブを使った上肢運動
肩周りの筋肉維持と猫背防止に有効。
▪️週2〜3回を目標に実施
▪️10〜15回×2〜3セットを目安に
▪️「少しきつい」と感じる程度が理想
無理をせず、自身の体調と相談しながら継続することが成功のカギです。