2025年4月15日
テニス肘として知られる「上腕骨外側上顆炎」は、肘の外側に痛みを引き起こす一般的な障害で、スポーツ選手だけでなく日常生活で腕をよく使う人にも発症します。正確な診断と早期の治療、適切なリハビリが重要です。
上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)は、肘の外側にある「上腕骨外側上顆」という部位に炎症が起こる疾患です。特に手首を伸ばす動作を繰り返すことによって、伸筋群(特に短橈側手根伸筋)が微細な損傷を受け、それが蓄積することで痛みが発生します。この疾患は、テニスのバックハンドのような動作が原因となることから「テニス肘」とも呼ばれていますが、実際にはテニスをしていない人にも多く見られます。
▪️肘の外側の圧痛
▪️手首を反らすときの痛み
▪️握力の低下
▪️タオルを絞る・ドアノブを回すなどの動作時に痛む
30〜50代に多く見られ、男女差はあまりありません。日常生活や仕事で手をよく使う人、特に同じ動作を繰り返す人に起こりやすいのが特徴です。
上腕骨外側上顆炎の発症には、繰り返される微小な外力による腱の障害が関与しています。肘の外側には、手首や指を伸ばす筋肉の腱が付着しており、これらの筋腱複合体が過剰に使われることで、腱の付着部に微細な断裂や変性が生じます。
この「腱障害(tendinopathy)」は、単なる炎症ではなく、腱そのものの変性や再生の遅れが関係しています。以前は「炎症」として扱われていましたが、現在では変性性病変という視点からの理解が進んでいます 1)。
主な誘因には以下のようなものがあります
▪️テニスなどのラケットスポーツ
▪️コンピュータ作業などでのマウス操作
▪️工場での組み立て作業
▪️家事や介護など繰り返しの動作
特に短橈側手根伸筋(ECRB)は、肘の外側上顆から始まり、手関節を伸展・外転させる重要な筋であり、損傷しやすい部位とされています。
診断は主に問診と身体所見に基づいて行われます。画像診断は補助的な役割を果たします。
痛みの部位や、どのような動作で痛みが出るかを詳しく聞き取ります。特に反復動作や最近の負担の増加がないかが重要です。
▪️Thomsenテスト:肘を伸ばした状態で手首を背屈させ、抵抗を加えると痛みが誘発される。
▪️中指伸展テスト:中指を伸ばす動作に抵抗を加えると肘の外側に痛みが出る。
▪️Chairテスト:肘を伸ばしたまま椅子を持ち上げると肘外側に痛みが出る。
▪️X線:骨の異常(骨棘形成や関節症の有無)を確認。
▪️超音波(エコー)検査:腱の肥厚、変性、血流増加を評価。
▪️MRI:腱の変性、部分断裂などの詳細な評価が可能。(当院にはMRIがありませんので、希望の方は提携病院への紹介をさせていただきます。)
▪️注射療法
局所麻酔薬+ステロイド注射:一時的な効果。繰り返しの使用には注意 2)。
▪️装具療法
テニスエルボーバンド:前腕の筋腱にかかるストレスを軽減。
保存療法で効果が乏しい場合に腱の病変部を切除・再建。
▪️炎症を抑えるための安静
▪️アイシングや電気療法
▪️軽いストレッチ
当院で導入されている電気治療機器についての説明です。興味ある方は是非読んでみてください!!
▪️前腕伸筋群のストレッチ
▪️手関節周囲の筋力トレーニング
▪️姿勢やフォームの修正
当院ではテニス肘をはじめとする腱障害に、拡散型体外衝撃波治療を行っています!!
詳しくは↓
1) Nirschl RP, Pettrone FA: Tennis elbow. The surgical treatment of lateral epicondylitis. J Bone Joint Surg Am. 1980;62(5):869-876.
2) Bisset L, Coombes B, Vicenzino B: Tennis elbow. BMJ Clin Evid. 2011;2011:1117.