コラム・ブログ

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2025年7月2日

“コルセット”は腰痛に効く?

ハイライト

「腰痛に“コルセット”は本当に効くのか?」という疑問に迫ります。使い方を間違えると、逆に筋力低下を招き症状を悪化させる可能性も。正しいタイミングと使い方、そしてリハビリとの併用の重要性を、医師の視点でわかりやすく解説します。

目次

腰痛とコルセットの関係とは?

腰痛は日本人の約80%が一生に一度は経験するとされており、その原因も多岐にわたります。

急性腰痛(ぎっくり腰)や慢性腰痛、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などが主な原因です。

コルセットは腰椎周辺を外からサポートし、腰への負担を軽減する目的で使用されます。

特に、以下のような目的で使用されることが多いです。

◾️急性期の痛みの軽減

◾️腰の安定性の向上

◾️日常生活や作業中の不意な動作による悪化予防

ここで重要なのは、コルセットは症状を「軽減」するものであって、根本的に治す道具ではないという点です。

あくまで補助的な役割であることを認識する必要があります。

コルセットの種類とそれぞれの役割

コルセットはその構造によって、大きく2種類に分けられます。

◾️プラスチックなど硬い素材で作られており、強固に固定

◾️腰椎の動きを制限して、椎間板の動きを抑える

◾️主に術後や重度の椎間板障害で使用される

◾️ゴムや布素材で伸縮性がある

◾️腰を軽く支える程度で、動きを完全には制限しない

◾️日常生活でのサポートや軽度の腰痛に使われる

◾️骨盤を締めるタイプのコルセット

◾️出産後の骨盤の不安定さや仙腸関節由来の痛みに使用される

医師の処方によって作製される体幹装具は、医療用具として保険適用があり、より精密なサポートが可能です。

コルセットの“効く”タイミングと“効かない”タイミング

  • コルセットが有効なケース

◾️急性腰痛(ぎっくり腰)発症初期

→ 炎症が強い時期に動きを抑制することで、痛みを軽減します。

◾️術後の安静が必要な時期

→ 背骨の手術後や圧迫骨折の直後など、固定が必要な場面。

◾️日常動作で痛みが増すとき

→ くしゃみや重い荷物の持ち上げ時に着用することで予防的に使用

  • コルセットが不要なケース

◾️長期間の常用

→ 筋力が低下し、自力で腰を支える力が失われる

◾️痛みが落ち着いてきた回復期

→ リハビリが優先されるべきフェーズであり、動きの自由度を確保する必要がある

  • 使用期間の目安

◾️一般的には2週間以内の使用が推奨されることが多く、それ以降はリハビリとの併用が重要になります。

間違った使い方によるデメリット

  • 筋力低下

コルセットを長期間使用し続けることで、腹筋・背筋の活動が低下します。

→「つけないと不安」「つけないと動けない」という依存状態が生まれ、悪循環に陥ります。

  • 姿勢の悪化

本来働くべき筋肉が働かなくなると、姿勢保持が難しくなり、猫背や反り腰などの姿勢不良に繋がります。

  • 皮膚トラブル・かぶれ

長時間の着用で汗をかくと、摩擦によって皮膚炎や湿疹が起きることもあります。

→ 特に高齢者では皮膚が弱いため注意が必要です。

  • 血流の悪化

締めすぎによって下半身の血行が悪化し、むくみや冷えを感じるケースもあります。

コルセットとリハビリテーションの正しい併用法

  • コルセット「卒業」へのステップ

コルセットは一時的なサポートツールであり、長期使用は避けるべきです。

整形外科クリニックでは、コルセット依存からの脱却を目指したリハビリテーションが行われます。

  • リハビリで重点を置くポイント
  1. 体幹筋の再教育
    • ドローインや腹横筋の活性化など、インナーマッスルの強化が重要。
  2. 姿勢の再構築
    • 骨盤の前後傾・胸椎の可動性を高め、全体の姿勢バランスを整える。
  3. 動作の再学習
    • 中腰や立ち上がり動作など、日常での正しい身体の使い方を習得。

↑↑リハビリでもエコーを用いて腹筋を評価しています!!

  • 生活習慣へのアプローチ

◾️座りっぱなしを避ける

◾️こまめなストレッチ

◾️正しい靴の選択

◾️体重管理など、再発予防もリハビリの大きな目的です。

参考文献

1)山本義晴: 腰痛診療ガイドライン. 南江堂. 120-135. 2019.

2)日本整形外科学会: 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン. 医学書院. 80-102. 2011.

3)福井康人ら: 腰痛患者における腰部コルセット使用の影響. 理学療法学. 30(1):45-50. 2003.

 



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