2025年4月22日
「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」とは、加齢や疾患により運動機能が低下し、将来介護が必要になるリスクが高まる状態のこと。放置すれば寝たきりに近づきますが、早期発見と対策で予防可能です。本コラムでは、その概要・原因・診断・予防法・リハビリまで詳しく解説します。
「ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)」とは、骨・関節・筋肉・神経などの運動器の障害により、歩く・立ち上がるといった移動機能が低下し、要介護になるリスクが高まった状態のことです。2007年に日本整形外科学会が提唱し、今では高齢社会における健康課題の中核的な概念となっています。高齢者だけでなく、40代以降の中高年層においても、早期に対策することが重要とされており、厚生労働省もロコモ予防を積極的に啓発しています。
自覚症状が乏しいまま進行するケースが多いため、「ちょっと動きにくくなった」「階段が辛い」といった初期の兆候を見逃さないことが大切です。
運動器の構造的・機能的障害(骨粗鬆症、変形性関節症、脊柱管狭窄症など)
それによる移動機能の低下(歩行困難、立ち上がり困難など)
要介護の主な原因である「運動器障害」に焦点を当て、医学的な評価と予防・リハビリを統合的に行う必要性を提起するものです1)。
▪️加齢による筋力低下(サルコペニア)
▪️骨量減少(骨粗鬆症)
▪️関節の軟骨摩耗(変形性関節症)
これらは特に下肢に集中し、歩行能力や立位保持能力を著しく低下させる原因となります。
▪️変形性膝関節症、変形性股関節症
▪️骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折
▪️腰部脊柱管狭窄症
▪️運動不足
▪️食生活の乱れ(タンパク質不足、カルシウム・ビタミンD不足)
▪️喫煙・過度の飲酒
ロコモは「サルコペニア(加齢性筋肉減少症)」や「フレイル(虚弱)」と相互に影響し合い、悪循環を形成します。これにより、身体機能の低下が急速に進むことも少なくありません 2)。
ロコモの評価は、早期の介入を可能にするために非常に重要です。日本整形外科学会は「ロコモ度テスト」を推奨しており、運動機能の低下を客観的に評価できます。(詳細は次のコラムで記載します!!)
▪️スクワット:太ももと臀部を中心に強化。壁に背をつけて行う「壁スクワット」も高齢者に有効。
▪️カーフレイズ(つま先立ち):ふくらはぎの筋肉を鍛え、バランス向上に寄与。
▪️片脚立ち:転倒予防のための平衡感覚強化。1分間×左右1日3回が目安。
▪️ウォーキング:心肺機能や全身持久力を維持するため、1日30分が目標。
▪️タンパク質の十分な摂取(1日体重1.0g~1.2g)
▪️ビタミンD・カルシウムの補給
▪️水分補給の習慣化
これらにより、骨や筋肉の健康を内側から支えることが可能になります。
▪️健康体操教室への参加
▪️ボランティアや趣味活動を通じた交流
身体活動量だけでなく、社会参加もロコモ予防に重要な要素です。
整形外科では、ロコモの原因となる疾患の診断・治療から、再発予防の運動指導までトータルにサポートします。
▪️レントゲンやMRIによる関節・脊椎の評価
▪️骨密度測定(DXA法)
▪️筋力・バランス機能の測定(握力、Time Up and Go テストなど)
▪️鎮痛薬・関節注射(ヒアルロン酸など)
▪️装具(膝サポーター、足底板)
▪️骨粗鬆症の治療(ビスホスホネート製剤など)
理学療法士による個別運動指導や、物理療法、筋トレマシンを通じて、患者ごとの症状に合わせたオーダーメイドのリハビリプログラムを実施します。
加えて、生活環境の調整や動作指導なども行い、患者が自宅でも継続的にケアできるよう支援しています。
1)日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム啓発資料. https://locomo-joa.jp
2)Chen LK, et al: Sarcopenia in Asia: Consensus Report of the Asian Working Group for Sarcopenia. J Am Med Dir Assoc. 21(3):300-307, 2020.