コラム・ブログ

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2025年9月2日

外で遊ばない子どもは骨が弱くなる?運動と骨の発達

ハイライト

子どもの骨は成長期に大きく発達しますが、屋外での遊びや運動不足は骨を弱くし、将来の骨粗鬆症や関節障害のリスクを高めます。今回は、運動と骨の関係、骨の成長メカニズム、外遊び不足がもたらす影響、整形外科の視点からの対策、家庭でできる予防策までを詳しく解説します。

目次

子どもの骨の成長メカニズムとは?

子どもの骨は「骨端線(成長線)」という軟骨組織が長さを伸ばす中心的な役割を担っています。骨端線は思春期を過ぎる頃に閉鎖し、その後は骨の長さは伸びなくなります。成長期にしっかりと骨に刺激を与えることが、その後の骨の強さを決定づけるのです。

骨密度は20歳前後でピークに達するとされており、この時期に十分な骨量を獲得しておくことが将来の骨粗鬆症予防に直結します。子ども時代にどれだけ「骨に負荷をかけた生活」を送ったかが重要です 。

骨は筋肉の牽引や体重負荷によって強くなります。運動不足の子どもは筋肉も弱くなり、骨への刺激が減少するため、骨も十分に成長できません。

外遊び不足と骨の発達への影響

近年はスマホやゲームの普及、安全面の懸念、学習時間の増加などにより、外で遊ぶ機会が激減しています。その結果、骨への「荷重刺激」が不足し、骨密度の獲得が不十分になる子どもが増えているのです。

骨が弱いとスポーツや転倒時に骨折しやすくなります。特に前腕骨や大腿骨といった荷重を受けやすい部位での骨折が多く報告されています。

骨の成長が不十分な子どもは、猫背や側弯症、膝や腰の慢性痛といった整形外科的問題を抱えやすくなります。いわゆる“子供ロコモ”の背景にも骨発達の遅れが関与しています 。

骨の発達に必要な運動と栄養

  • 荷重運動の重要性

骨を強くするには「ジャンプ」「走る」「登る」といった荷重が加わる運動が有効です。水泳や自転車も体力作りには良いですが、骨強化には着地刺激を伴う運動が不可欠です。

  • 推奨される運動習慣

◾️毎日30分以上の外遊びやスポーツ活動

◾️ジャンプ運動や鬼ごっこなどの全身運動

◾️体幹を鍛えるバランス運動(片足立ちなど)

  • 栄養の3本柱

◾️カルシウム:牛乳、小魚、野菜から摂取

◾️ビタミンD:日光浴や魚類から摂取

◾️タンパク質:筋肉と骨の材料(肉、魚、大豆製品)

骨は運動と栄養の相互作用でしか強くならない点を忘れてはいけません 。

整形外科でできるサポートとリハビリテーション

  • 診断と評価

整形外科では姿勢観察、歩行評価、骨密度測定などを行い、子どもの骨の成長状態を確認します。必要に応じて画像検査で成長線の状態を評価します。

  • リハビリテーションの役割

◾️ストレッチ:骨の成長に追いつかない筋肉を柔軟に保つ

◾️筋力強化:下肢・体幹を中心に骨を支える筋肉を育てる

◾️バランス訓練:転倒予防、骨折予防につながる

◾️運動習慣の教育:無理のない運動プログラムを家庭でも実施できるよう指導

 

整形外科医と理学療法士の連携による介入は、骨と運動器の健全な発達を促します。

家庭や学校で実践できる予防策と生活習慣

  • 家庭での工夫

◾️毎日少なくとも30分は外で体を動かす習慣をつける

◾️食卓にカルシウム・タンパク質を意識した献立を取り入れる

◾️スマホやゲームは1時間に1度休憩を入れる

  • 学校での取り組み

体育の授業だけでなく、休み時間に外遊びを推奨することで骨への刺激が増えます。また学校給食による栄養補給も大きな役割を果たします。

  • 早期発見と早期介入

「疲れやすい」「よく転ぶ」「骨折しやすい」といったサインを見逃さず、早めに整形外科を受診することが将来の骨粗鬆症予防につながります。

参考文献

  1. 日本整形外科学会: ロコモティブシンドローム予防啓発資料. 2015.
  2. 文部科学省: 体力・運動能力調査報告書. 2023.
  3. 大森豪, 他: 子供における運動器疾患とロコモティブシンドロームの関連. 日本小児整形外科学会雑誌. 30(2): 101–108. 2021.
  4. Nakamura K: The concept and treatment of locomotive syndrome: its acceptance and spread in Japan. J Orthop Sci. 16: 489–491. 2011.
  5. Kato T, et al: Locomotive syndrome in children: lifestyle factors and prevention. Clin Orthop Relat Res. 478(3): 512–518. 2020

 

 



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