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2025年6月6日

“夜に脚がムズムズして眠れない”…それ“むずむず脚症候群”かも?

ハイライト

夜になると脚がムズムズして眠れない――それ、実は「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」かもしれません。原因は鉄不足や神経系の異常、薬の副作用までさまざま。リハビリや生活習慣の見直しで改善を目指せることもあります。

目次

むずむず脚症候群(RLS)とは?

むずむず脚症候群(Restless Legs Syndrome: RLS)は、脚に不快な感覚が生じ、じっとしていられなくなる神経疾患の一種です。特に夕方から夜にかけて症状が悪化しやすく、睡眠障害の原因となることが多いです。欧米では人口の5~10%、日本でも2~4%の有病率が報告されており、決して稀な疾患ではありません1)

「脚がむずむずする」「虫が這うような感じがする」など、患者が主観的に訴える感覚が名前の由来となっています。近年では「ウィリス・エクボム病」とも呼ばれています。

症状の特徴と患者さんの訴え

◾️脚にムズムズ、チリチリ、ピクピクするような感覚

◾️寝ようとすると症状が強まり、脚を動かすと楽になる

◾️無意識に脚をバタバタと動かす「周期性四肢運動障害(PLMS)」を伴うことも

◾️睡眠の質の低下による日中の眠気、集中力低下

◾️慢性的な疲労、イライラ、抑うつ傾向

当院でも、「脚がムズムズして眠れない」「坐骨神経痛かと思った」という患者さんがRLSであるケースが見られます。腰部疾患との鑑別が必要です。

 

原因と関係する疾患・薬剤

  • 内因性の要因

◾️鉄欠乏:脳内ドパミン合成に必要な鉄が不足することで、RLSが発症することがあります2)

◾️ドパミン系の異常:ドパミンが運動制御に関わる神経伝達物質であるため、異常があると脚のムズムズ感が生じやすくなります。

  • 関連疾患

◾️慢性腎不全:透析患者の30~50%にRLS症状が見られます3)

◾️糖尿病:末梢神経障害との関連も報告されています。

◾️妊娠:特に妊娠後期に一時的に発症することがあり、産後は自然に治まるケースが多いです。

  • 関係する薬剤

◾️抗うつ薬(SSRI・SNRI)

◾️抗ヒスタミン薬(第1世代)

◾️抗精神病薬

患者の既往歴や服薬状況は、診断の手がかりとして非常に重要です。

診断方法と整形外科でできること

  • 診断基準(国際RLS研究グループの基準)

以下の4つの条件をすべて満たす必要があります:

①脚に不快感があり、動かしたくなる強い欲求

②安静にしていると症状が出現または増悪

③動かすと症状が一時的に軽減する

④夕方~夜間に症状が増悪する

これらに加えて、他の疾患(末梢神経障害、関節リウマチ、静脈うっ滞など)との鑑別が必要です。

  • 整形外科的視点

整形外科では、神経根症状との鑑別や、下肢の血流・筋肉の状態を評価することが重要です。問診に加え、神経学的評価やエコー、MRIが有効です。

リハビリテーション・セルフケア・予防法

  • 整形外科でのリハビリテーションの役割

RLSそのものは神経疾患ですが、運動療法が有効なことが複数の研究で示されています4)。整形外科リハビリの一環として、以下のようなアプローチが可能です:

  • ストレッチと軽い運動療法

◾️下肢のストレッチ(ハムストリングス、腓腹筋など)

◾️ウォーキング、軽い有酸素運動

◾️ストレッチポールやフォームローラーを使った筋膜リリース

当院のInstagramでもストレッチなど投稿してるのでぜひ、チェックしてみてください!!

 

  • 神経系への介入

◾️モビライゼーションなどによる神経の滑走改善

◾️自律神経への影響を意識したリラクゼーション手技

  • セルフケア・生活習慣の工夫

◾️カフェイン・アルコールの摂取制限

◾️睡眠環境の整備(入浴、照明調整)

◾️鉄分の多い食事(レバー、赤身肉、納豆、ほうれん草など)

  • 薬物療法との併用

症状が強い場合には神経内科でのドパミン作動薬やα2δリガンドの処方が必要になることもあります。整形外科では、その前段階として生活指導や運動療法のサポートが重要です。

参考文献

1)Allen RP, Picchietti DL, et al.: Restless legs syndrome: Diagnostic criteria, special considerations, and epidemiology. Sleep Med. 2003; 4(2):101–119.

2)Earley CJ, Heckler D, et al.: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial of intravenous iron sucrose in restless legs syndrome. Sleep Med. 2009; 10(2):206–211.

3)Takaki J, Nishi T, et al.: Clinical and demographic characteristics of restless legs syndrome in patients undergoing hemodialysis. Am J Kidney Dis. 2003; 41(4):833–839.

4)de Mello MT, et al.: Effects of physical exercise on patients with restless legs syndrome: A systematic review. Mov Disord. 2009; 24(8):1151–1155.



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