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2025年8月23日

大人だけじゃない?子供ロコモって知っていますか?

ハイライト

「ロコモ」といえば高齢者の問題と思われがちですが、実は子供にも広がっていることをご存じですか? “子供ロコモ”は、スマホやゲームの普及、運動不足、生活習慣の変化により進行し、将来の関節・骨の健康を脅かします。今回は、子供ロコモの実態、原因、症状、診断、予防法までを整形外科の視点から詳しく解説します。

目次

子供ロコモとは?──新しい運動器の課題

ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)は、日本整形外科学会が提唱した概念で、加齢や運動器疾患によって立つ・歩くといった移動機能が低下し、要介護や寝たきりになるリスクが高まった状態を指します 。従来は高齢者に多い問題とされてきました。

ところが近年、「子供ロコモ」と呼ばれる現象が注目されています。これは 成長期の子供に運動不足や姿勢不良が原因で運動器の機能低下が生じている状態 を意味し、放置すれば将来的に運動習慣の低下や整形外科的トラブル(関節障害や腰痛)につながります。

◾️成長期で骨や筋肉が柔らかい時期に起こる

◾️姿勢不良、柔軟性低下、バランス能力低下として現れる

◾️スポーツ外傷や慢性痛のリスク因子になる

このように、子供ロコモは単なる「体力不足」ではなく、 医学的に明確な“運動器機能低下”の一種 であると理解する必要があります。

なぜ子供にロコモが増えているのか?

子供ロコモが増加している背景には、現代社会特有の生活環境があります。

■スマホやゲームの長時間利用:長時間同じ姿勢で座り、運動不足に直結

■屋外遊びの減少:安全面や環境要因で外遊びの機会が減少

■塾・習い事による時間制約:自由に体を動かす時間の減少

成長期には骨が急激に伸びるため、筋肉や腱が追いつかず柔軟性が低下します。運動不足が加わると、さらにバランス能力が落ち、転倒や外傷を招きやすくなります。

ダイエット志向や偏食によって、カルシウム・ビタミンDなど骨形成に必要な栄養が不足する子供も少なくありません。これは将来的な骨粗鬆症リスクを高めます 。

子供ロコモの症状と見極め方

よくある症状

  • 姿勢が悪く、背中が丸まっている
  • 長時間歩くと疲れる、膝や腰が痛い
  • しゃがむ、正座するのが難しい
  • バランスが悪く、転びやすい
  • 運動が苦手で避ける傾向がある

チェック項目(ロコモ度チェック応用版)

子供向けに応用した簡易チェックで、以下の質問に当てはまる場合は要注意です。

  • 片足立ちで10秒以上立てない
  • 床に座って立ち上がるのがスムーズにできない
  • 走るとすぐ転ぶ
  • 体育の授業についていけない

このような症状が見られる場合、整形外科での評価をおすすめします。

*チェック項目の詳細については↓↓

整形外科での診断とリハビリテーション

  • 診断の流れ

整形外科では以下の流れで子供ロコモを評価します。

①問診(生活習慣、運動習慣、痛みの有無)

②姿勢・歩行観察(猫背、X脚・O脚の有無)

③可動域検査・筋力テスト

④必要に応じた画像検査(脊柱側弯症や関節異常の除外)

  • リハビリの役割

子供ロコモの改善には 運動療法・姿勢指導・生活習慣改善 が不可欠です。

◾️ストレッチ:ハムストリングス、下腿三頭筋などの柔軟性向上

◾️筋力強化:体幹、下肢の筋肉をバランス良く鍛える

◾️バランス訓練:片足立ち、ジャンプ運動などで協調性を高める

◾️姿勢教育:正しい座り方や立ち方の習慣化

また、理学療法士による個別プログラムが有効で、家庭で続けられる運動を指導することが再発予防につながります。

子供ロコモを防ぐ生活習慣と予防策

  • 適度な運動習慣

外遊びやスポーツ活動は運動器の発達に不可欠です。毎日30分以上の有酸素運動や体幹を使った遊びを推奨します。

  • 栄養管理

骨の成長に必要な栄養素を意識しましょう。

◾️カルシウム(牛乳、小魚、野菜)

◾️ビタミンD(日光浴、魚類)

◾️タンパク質(筋肉発達の基礎)

  • 姿勢習慣の改善

◾️勉強やスマホは1時間に1回休憩

◾️正しい椅子と机の高さを整える

◾️姿勢を意識する声掛けを家庭で行う

  • 早期発見・早期対応

痛みや姿勢異常に気づいたら早めに整形外科を受診することで、慢性的な障害を防ぐことが可能です。

参考文献

  1. 日本整形外科学会: ロコモティブシンドローム予防啓発資料. 2015.
  2. 文部科学省: 体力・運動能力調査報告書. 2023.
  3. 大森豪, 他: 子供における運動器疾患とロコモティブシンドロームの関連. 日本小児整形外科学会雑誌. 30(2): 101–108. 2021.
  4. Nakamura K: The concept and treatment of locomotive syndrome: its acceptance and spread in Japan. J Orthop Sci. 16: 489–491. 2011.
  5. Kato T, et al: Locomotive syndrome in children: lifestyle factors and prevention. Clin Orthop Relat Res. 478(3): 512–518. 2020.

 

 

 



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