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2025年3月27日

太ももの肉離れ!!スポーツ復帰をするためには

ハイライト

太ももの肉離れはスポーツ選手やスポーツ愛好家に多いケガのひとつです。早期発見と正確な評価、そして段階的なリハビリによって、安全に競技復帰が可能です。本コラムでは、肉離れの原因から診断、治療、復帰のタイミングまで詳しく解説します。

目次

肉離れとは?〜概要と発生のメカニズム〜

肉離れ(筋損傷)は、筋肉が過度に引き伸ばされることによって、筋線維が部分的または完全に断裂する状態を指します。特に太もも(大腿部)においては、ハムストリングス(大腿後面)や大腿四頭筋(大腿前面)がよく損傷を受けます。

このケガは、スポーツ活動中の急激なダッシュやジャンプ、方向転換などの際に発生することが多く、瞬間的に筋肉へ大きな負荷がかかることで筋繊維が耐えられなくなり損傷します。

 

筋損傷はその重症度によって以下の3段階に分類されます

▪️グレードⅠ(軽度):筋線維の微細な損傷。軽い痛みや張りを感じるが、運動は可能なことが多い。
▪️グレードⅡ(中等度):筋線維の部分的断裂。腫れや内出血、痛みが強く、日常動作に支障をきたす。
▪️グレードⅢ(重度):筋線維の完全断裂。強い痛みと可動域の制限があり、手術が必要な場合もある。

 

肉離れは適切に対応しなければ再発率が高く、長期の競技離脱につながる可能性があるため、初期の対応と回復過程が極めて重要です。

 

太ももの肉離れが起きる原因とは

肉離れの発症には、さまざまな要因が関与していますが、大きくは筋肉の柔軟性の低下、筋力の不均衡、ウォーミングアップ不足、疲労の蓄積などが主な原因です。

筋肉の柔軟性が低いと、関節の可動域が制限され、急激な動きに対する適応が困難になります。特にハムストリングスは硬くなりやすく、肉離れのリスクが高い部位です。

太ももの前面(大腿四頭筋)と後面(ハムストリングス)の筋力バランスが崩れている場合、動作時に特定の筋肉に過剰な負荷がかかりやすくなります。ハムストリングスの相対的な筋力低下は、特にスプリント中に肉離れを引き起こしやすくなります。

スポーツ前の適切なウォーミングアップは、筋肉の温度を上昇させ、柔軟性と反応性を高める役割を果たします。これが不十分だと筋肉が硬いまま急な動作に入るため、肉離れを起こしやすくなります。

連続的なトレーニングや試合によって筋肉が疲労している状態では、筋肉の反応速度や収縮力が低下し、損傷しやすくなります。

 

診断と評価方法について

太ももの肉離れが疑われる場合、問診・視診・触診・画像検査などを通じて、正確な評価が行われます。

どのような動作で痛みが出たか、どの部位に痛みがあるか、過去に同様の症状があったかなどを確認します

患部に腫れや内出血が見られる場合や、圧痛点(押して痛む部位)を確認します。また、筋肉の陥凹が触知されることもあります。

▪️超音波検査:損傷部位の確認が可能で、簡便に行える。
▪️MRI検査:筋線維の断裂の程度や範囲を詳細に評価でき、重症度判定に有効です。(当院ではMRIがないため、超音波検査を実施いたします。)

実際の超音波所見↓

リハビリテーションの重要性と具体的な内容

肉離れからの回復過程では、リハビリテーションが極めて重要な役割を果たします。特に痛みの管理、可動域の回復、筋力強化、神経-筋制御の再教育といった各段階を適切に踏むことが、再発予防と競技復帰の鍵となります 1)

 

リハビリの段階的アプローチ:

▪️安静・アイシング・圧迫・挙上(RICE処置)
▪️炎症と出血の抑制を目的とします
▪️動かさないことで二次的損傷を防ぎます

▪️軽度のストレッチ
▪️痛みのない範囲での関節可動域運動
▪️筋の再教育(アイソメトリック収縮など

▪️チューブやマシンを用いた筋力強化
▪️プライオメトリクスや体幹トレーニング
▪️動作時のフォーム修正

▪️スポーツ特異的な動作練習(ダッシュ、切り返しなど)
▪️疼痛や可動域の制限がなければ復帰許可が検討されます

※上記はあくまで目安です。損傷の程度によって進行は変化します。医師や理学療法士の評価の上で適宜アドバイスさせていただきます。

 

当院では超音波を使った勉強会を実施して知識の共有を図っています。興味ある方は是非読んでみてください!!

 

 

スポーツ復帰のための基準と注意点

肉離れからのスポーツ復帰は、単に痛みがなくなったという理由だけでは判断できません。機能的な回復が重要な指標となります。

▪️筋力が健側(ケガをしていない側)の90%以上まで回復
▪️柔軟性や可動域に左右差がない
▪️スポーツ特異的な動作が問題なく行える
▪️筋内の血腫が消失していること確認できている

特に、損傷した筋肉を伸ばした状態から収縮を入れて痛みが出るかなどもチェックしていきます。

▪️ウォーミングアップとクールダウンの徹底
▪️練習量・強度の段階的増加
▪️コンディショニングの継続
▪️定期的な評価(フォームチェック、柔軟性確認)

 

参考文献

1) Askling CM, Tengvar M, Saartok T, Thorstensson A: Acute first-time hamstring strains during high-speed running: a longitudinal study including clinical and magnetic resonance imaging findings. Am J Sports Med. 2007;35(2):197–206.



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