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2025年7月29日

“姿勢を整える”と気分が上がる?背骨と脳の知られざるつながり

ハイライト

猫背や前かがみの姿勢が、ただの「見た目の悪さ」だけではないとしたら?実は姿勢の乱れが、脳の活動や自律神経、気分の浮き沈みにも深く関係していることがわかってきました。本コラムでは、脳と姿勢の知られざる関係を解き明かし、腰痛が生じやすい職業やリハビリテーションとのつながりまで、医療の視点からわかりやすく解説します。

目次

姿勢と脳はつながっている?〜気分に影響する理由〜

自律神経と背骨の不思議な関係

腰痛が生じやすい職業とその背景〜なぜ姿勢が崩れるのか〜

現代の働き方は、座りっぱなしや立ちっぱなしといった「動かない姿勢」が多く、これが腰痛を引き起こす大きな要因となっています。

 

厚生労働省の統計によると、腰痛は労働者の訴える症状の中で最も多く、特に以下のような職種で顕著です

  • 介護・看護職:中腰姿勢、持ち上げ動作が多い
  • デスクワーク:長時間座位による骨盤の後傾・筋緊張
  • 運送業・配送業:反復的な重量物の運搬
  • 美容師・調理師:長時間立位での前屈み作業

 

これらの職業に共通しているのは「姿勢の偏り」と「同一動作の繰り返し」です。特定の筋肉や関節だけが使われ続けることで、体幹のバランスが崩れ、腰や背中への過剰な負荷がかかります。

 

また、これが慢性的になることで、自律神経のバランスも乱れ、腰痛だけでなく気分の不調も引き起こす「負のループ」に陥ることがあります。

「姿勢の悪さ」が招く体と心への影響

姿勢の乱れは、単なる筋骨格の問題にとどまらず、体のあらゆるシステムに影響を与えます。特に深刻なのが以下のような変化です。

  • 呼吸が浅くなる(肺が圧迫される)
  • 血流が悪くなる(特に下肢への循環不良)
  • 胃腸の動きが悪くなる(腹部の圧迫)
  • 脳への血流が減少し、集中力低下や倦怠感が出る

 

これらはすべて、自律神経を介して脳に影響し、「イライラしやすい」「気分が落ち込みやすい」といった症状を引き起こします。実際、うつ病の患者では姿勢に特徴が見られることが多く、背中を丸め、うつむいた姿勢をとる傾向があります。

 

逆に、意識して背筋を伸ばし、深呼吸をするだけでも、副交感神経が優位となり、身体と心のリラックスにつながるという報告もあります2)。

姿勢改善と整形外科リハビリテーションの役割

当院では、姿勢の歪みが原因で生じる腰痛や肩こり、自律神経の乱れを防ぐために、運動療法や理学療法を通じた「姿勢改善」に取り組んでいます。

 

代表的なリハビリ内容には以下のようなものがあります:

  • 体幹筋の強化トレーニング(インナーマッスルの活性化)
  • 骨盤の位置を正すモビライゼーション
  • 猫背改善のための胸郭ストレッチ
  • 頚椎のアライメント調整
  • 呼吸法を取り入れた自律神経調整リハ

 

これらの介入により、姿勢が整うことで、筋緊張が和らぎ、慢性痛が軽減し、さらに脳への血流も改善します。それによって「なんとなく気分が軽くなった」「イライラが減った」といった心の変化を感じる患者さんも少なくありません。

 

また、職業によって特有の姿勢負荷がある場合には、それに合わせた動作指導や職場環境の見直し、定期的なストレッチの提案など、再発予防まで含めたサポートが重要です。

 

*当院のYouTubeアカウントにストレッチ動画をUPしています!!興味のある方はぜひ見てください↓↓

参考文献

1)厚生労働省:国民生活基礎調査. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html

2)厚生労働省:職場における腰痛予防対策指針. https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000086443.html

3)労働災害統計(厚生労働省): 令和5年版. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/63-20.html

4)日本整形外科学会:腰痛診療ガイドライン2019. 南江堂.

5)田中秀幸ほか:職場復帰を目指した腰痛リハビリテーションの実際. リハ医学. 58:325-332. 2021年.

6)Waddell G, Burton AK: Occupational health guidelines for the management of low back pain at work. Occup Med (Lond). 51(2):124-135. 2001.

 

 



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