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2025年5月8日

手を動かすと痛む へバーデン結節かも?

ハイライト

指先の関節が腫れて痛む、動かしづらい…それは「へバーデン結節」の可能性があります。加齢や遺伝が関係するこの病気は、早期の対応で進行を抑えることができます。

目次

へバーデン結節とは?

へバーデン結節(Heberden’s nodes)は、主に手の指の第一関節(DIP関節)に生じる変形性関節症の一種です。この疾患は、40代以降の女性に特に多く見られ、徐々に関節の変形と痛みを伴うようになります。

症状としては、以下のようなものが代表的です。

▪️指先の第一関節の腫れ・変形

▪️関節の圧痛や慢性的な痛み

▪️朝のこわばり(進行とともに短くなる)

▪️関節周囲の骨性の硬いこぶ(結節)

病変は左右対称に出現することが多く、特に中指、薬指、小指に多く見られます。進行すると、指先の機能低下や外観の変化が著しくなり、日常生活に支障をきたすこともあります。

(C J Alexander: Heberden’s and Bouchard’s nodes. Ann Rheum Dis. 1999)

なぜ発症する?~原因とリスク因子~

へバーデン結節の原因は完全には解明されていませんが、以下の要素が発症に関与していると考えられています。

 

最も大きなリスク因子の一つで、年齢とともに関節軟骨がすり減ることが影響します。

母親がへバーデン結節を患っている場合、その娘にも発症する可能性が高いとされています。実際に、家族内発症の頻度は高く、遺伝的な関与が強い疾患です。

閉経後の女性に多く見られることから、女性ホルモン(エストロゲン)の低下も関与していると考えられています。

裁縫や楽器演奏、長時間のパソコン作業など、指先に負担がかかる仕事や趣味も一因になるといわれています。

診断方法と画像検査

へバーデン結節の診断は、主に問診と視診、触診により行われますが、正確な評価のために画像検査も併用されます。

▪️どの関節に痛みがあるか

▪️痛みの程度、持続時間

▪️関節の変形や腫れの有無

▪️朝のこわばりや日常生活への支障

X線画像で以下のような特徴が確認されます。

▪️関節裂隙の狭小化

▪️骨棘(骨のとげ)の形成

▪️関節周囲の骨硬化

▪️関節の変形

これらの所見は、進行度を判断する上でも非常に有用です。

(C J Alexander: Heberden’s and Bouchard’s nodes. Ann Rheum Dis. 1999)

他の疾患(関節リウマチ、乾癬性関節炎、痛風、偽痛風など)との鑑別も重要です。特に、関節リウマチは中手指節関節(MP関節)や近位指節関節(PIP関節)に主に症状が出るため、関節部位によって鑑別されます。

治療とリハビリテーション

へバーデン結節に対する治療は、主に保存療法が中心です。病状の進行度や患者のライフスタイルに合わせた治療が行われます。

  • 薬物療法

▪️NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):痛みや炎症を軽減

▪️外用剤(湿布や軟膏):局所的な痛みに対応

  • 装具療法

関節への負担を減らすために、サポーターやテーピングを使用します。

  • 温熱療法

温熱によって血流を改善し、関節周囲の筋肉や腱の柔軟性を高めることで痛みを緩和します。

  • 理学療法(リハビリテーション)

▪️関節可動域訓練:固まってしまった関節の柔軟性を保つ

▪️筋力訓練:手の内在筋・外在筋の強化

リハビリでは、疼痛コントロールとともに日常動作の円滑化を目的とします。

当院ではへバーデン結節の方に、拡散型体外衝撃波治療を行っています!!

詳しくは↓

  • 外科的治療

保存療法で効果が得られず、痛みや変形が著しい場合は手術が検討されます。DIP関節固定術などが選択肢となりますが、頻度は高くありません。

日常生活でできる予防と対策

へバーデン結節は完全な予防が難しい疾患ですが、日常生活での工夫により進行を遅らせたり、症状を軽減することが可能です。

  • 指先の酷使を避ける

長時間の裁縫、スマートフォンの操作など、同じ動作の繰り返しを避けるようにしましょう。

  • 定期的な手指の体操

▪️指のグーパー運動

▪️指関節のストレッチ

▪️セラピューティックハンドエクササイズボールの使用

  • 冷え対策

血流の低下は関節の酸素供給を妨げ、痛みを誘発します。手袋や温熱パックを活用しましょう。

  • 栄養バランス

抗炎症作用のある食品(オメガ3脂肪酸、ビタミンD、緑黄色野菜)を積極的に摂取することが勧められます。

参考文献

1)Kraus VB: Genetics of osteoarthritis. Curr Opin Rheumatol. 23(5): 479–483. 2011.

2)Zhang Y et al: Heberden’s nodes and associated factors. J Rheumatol. 36(1): 113–117. 2009.

3)Bijsterbosch J et al: Clinical burden of erosive hand osteoarthritis and its relationship to nodes. Ann Rheum Dis. 69(11): 1837–1840. 2010.

4)Spector TD, MacGregor AJ: Risk factors for osteoarthritis: genetics. Osteoarthritis Cartilage. 12 Suppl A: S39–S44. 2004.

5)Creamer P, Hochberg MC: Osteoarthritis. Lancet. 350(9076): 503–508. 1997.

 



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