2025年4月30日
「朝の手のこわばり」「指先の痛み」「原因不明の関節腫れ」…これらは関節リウマチの初期症状かもしれません。早期発見と適切な治療が関節の破壊を防ぐ鍵となります。
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)は、自己免疫の異常によって引き起こされる慢性の炎症性疾患です。主に手指や足指などの小さな関節に炎症が生じ、進行すると関節の破壊、変形を引き起こすことがあります。
国内では約70〜80万人が関節リウマチと診断されており、特に30〜50代の女性に多く見られます。男女比では女性が男性の約4倍とされており、ホルモンや遺伝的要因、ストレスなどが影響すると考えられています 1)。
RAは放置してしまうと、関節の破壊だけでなく、日常生活動作(ADL)の低下、ひいては要介護状態にもつながる病気です。そのため、初期のうちに気づき、適切な医療につなげることが非常に重要です。
関節リウマチの原因は完全には解明されていませんが、以下のような要素が複合的に関与しているとされています。
HLA-DR4やHLA-DR1などの遺伝子を持つ人が発症しやすいとされています。家族にRAの患者がいると発症リスクが高まる傾向があります。
本来ならば外敵を排除するはずの免疫系が、自分の関節を「異物」として攻撃してしまうのがRAの本質です。滑膜と呼ばれる関節の内膜が炎症を起こし、関節の破壊が進行します。
喫煙や歯周病はRAの発症リスクを高めることが報告されています。また、ウイルスや細菌感染が引き金となることもあると考えられています 2)。
関節リウマチは早期発見が鍵です。以下のような初期症状がある場合、整形外科やリウマチ専門医の受診をおすすめします。
▪️朝の手のこわばり(30分以上続く)
▪️手指や足指の腫れ・痛み(特に左右対称)
▪️疲れやすさ、微熱、食欲低下
▪️手をグーに握れない
▪️関節の腫れがひかず長引く
▪️血液検査:リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体、CRP、ESRなどの炎症マーカーを調べます。
▪️画像診断:X線、超音波、MRIなどで関節の変化や滑膜の炎症を確認します。
▪️臨床基準:アメリカリウマチ学会(ACR)の分類基準(2010年)に基づいて診断が行われます 3)。
RAは診断が難しい病気のひとつですが、これらの情報を総合して総合的に判断されます。
関節リウマチの治療は、現在では進歩が著しく、早期に治療を開始すれば関節破壊を防ぎ、ほぼ健常人と変わらない生活を送ることも可能です。
▪️抗リウマチ薬(DMARDs)
・メトトレキサート(MTX)が第一選択
・生物学的製剤(バイオ)やJAK阻害薬も有効
▪️消炎鎮痛薬(NSAIDs)
痛みや炎症を軽減しますが、根本治療ではありません。
▪️ステロイド薬
炎症を素早く抑える目的で短期間使用されます。
整形外科では、診断と治療の起点となる初期対応から、手術適応症例に対する人工関節置換術などの外科的治療まで幅広く対応しています。関節リウマチは「全身疾患」であるため、内科・整形外科・リハビリテーション科の連携が重要です。