2025年5月15日
「筋肉痛はなぜ起こるのか?いつピークを迎え、どれくらいで治るのか?」――このコラムでは、誰もが一度は経験する筋肉痛の仕組みから、診断の目安、回復の方法、予防のポイントまで、整形外科的視点から詳しく解説します。
一般的に「筋肉痛」と言われているものの多くは、遅発性筋肉痛(Delayed Onset Muscle Soreness:DOMS)と呼ばれるもので、運動後12~72時間ほど経ってから現れる筋肉の痛みを指します。特に、慣れない運動や高強度の筋トレ、登山、長距離のランニングなど、筋肉に大きな負荷がかかった後に発症しやすい傾向があります。
これに対して運動中や直後に感じる筋肉の張りや痛みは「急性筋肉痛」とされます。これは筋肉内の代謝産物(乳酸や水素イオンなど)の蓄積による一過性の痛みで、通常は数時間以内に消失します。
「痛みが長引く」「腫れがある」「関節も痛い」などの症状がある場合には、単なる筋肉痛ではなく筋損傷、腱炎、筋膜炎、あるいは感染や炎症性疾患の可能性もあります。これらとの鑑別が必要となるため、医療機関の受診が勧められます。
遅発性筋肉痛の主因は、筋繊維の微細な損傷です。とくに「エキセントリック収縮(伸張性収縮)」、つまり筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する動き(例:階段を降りる、下り坂を走る)で多く生じます1)。
この損傷に対して身体は自然修復を行い、その過程で炎症反応が起こり、痛みを感じるようになります。
筋損傷の修復過程で分泌される炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-αなど)が痛みの感受性を高め、痛みを強く感じる要因の一つとなります2)。
痛みは運動後12時間頃から現れ、24~48時間でピークに達し、72時間~5日間ほどで改善していきます。ただし個人差があり、筋力や年齢、運動の種類、普段の活動レベルによって異なります。
以下のような状況であれば、筋肉痛と自己判断できる場合が多いです。
▪️痛みが運動の翌日や2日後に出現した
▪️痛みは筋肉に限定され、関節や腱にまで及ばない
▪️動かすと痛みがあるが、安静にしていれば徐々に改善する
痛みが1週間以上続く、もしくは腫脹、熱感、赤み、強い圧痛がある場合は、他の疾患が疑われます。例えば:
▪️筋挫傷・肉離れ:急な力で筋肉が部分的に断裂した状態。超音波検査やMRIで確認可能。
▪️筋膜炎:筋肉を覆う筋膜の炎症。触診での広範囲な圧痛が特徴。
▪️感染性筋炎:細菌感染による筋肉の炎症。全身症状(発熱、倦怠感など)を伴うことが多い。
筋肉痛と確定診断するには、問診、視診、触診、必要に応じて画像診断が活用されます。