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2025年6月21日

“肩が痛い”は全部五十肩じゃない!?見落としがちな肩の病気いろいろ

ハイライト

肩が痛い=五十肩とは限りません。実は似た症状を持つ“見落とされがちな肩の病気”がいくつも存在します。今回は五十肩との違いや注意すべき他の病気、治療やリハビリについてわかりやすく解説します。

目次

五十肩(肩関節周囲炎)とはどんな病気?

一般的に「五十肩」と呼ばれる症状の正式名称は「肩関節周囲炎」です。40〜60代に多くみられ、明確な外傷や原因がないまま、肩の痛みや可動域制限が出現するのが特徴です。多くは自然経過で改善しますが、数ヶ月〜1年以上にわたり日常生活に支障をきたすこともあります。

関節包や滑液包、腱など肩周囲の組織に炎症や線維化が起こることで、肩の動きが制限され痛みが生じます。典型的には「結髪動作」や「結帯動作」など、腕を後ろに回す動作で強い痛みが出るのが特徴です。

五十肩は一般的に以下の3期に分類されます。

◾️急性期(炎症期):激しい痛みがあり、夜間痛も顕著。

◾️拘縮期:痛みはやや軽減するが、肩の動きが制限される。

◾️回復期:徐々に可動域が改善し、痛みも減っていく。

五十肩では、各病期に合わせたリハビリが重要です。急性期は過度な運動を避け、アイシングや薬物療法を併用します。拘縮期以降は関節可動域訓練や徒手療法、温熱療法を導入し、肩の機能回復を促します。

五十肩と間違いやすい疾患①:腱板断裂

腱板とは、肩甲骨と上腕骨をつなぐ4つの筋・腱の集合体で、肩関節の安定と動きを支える重要な構造です。この腱板が加齢や外傷などによって断裂すると、痛みや筋力低下、運動障害が生じます。

腱板断裂は中高年以降に多く、五十肩と同じく肩の痛みや挙上困難を訴えることがよくあります。しかし、以下の点が異なります。

◾️夜間痛よりも動作時の痛み筋力低下が顕著。

◾️自力で腕を挙げられないが、他人に支えられると挙上できる(疑似麻痺)。

◾️超音波検査やMRIが有用で、断裂の有無や大きさが評価できます。

◾️単純X線では骨の変化が見られにくいため、画像診断が重要。

◾️小断裂の場合は保存療法(運動療法・電気刺激)が中心。

◾️大断裂や機能障害が強い場合は手術(腱板修復術)を検討。

◾️リハビリでは、術後の拘縮予防や筋再教育を段階的に実施します。

五十肩と間違いやすい疾患②:石灰沈着性腱板炎

  • 石灰沈着性腱板炎とは?

肩の腱(主に棘上筋腱)にリン酸カルシウムの結晶が沈着し、炎症と強い痛みを引き起こす疾患です。40〜50代の女性に多く、突然の激痛で肩が動かせなくなることが特徴です。

  • 症状の特徴

◾️突発的な強い痛みがあり、特に夜間に激痛を訴えるケースが多い。

◾️肩の可動域は著しく制限され、微動だにできないことも。

◾️痛みは数日〜数週間で軽快するが、繰り返す場合もあります。

  • 診断方法

◾️X線で腱板内の石灰化が確認できます。

◾️超音波でも高エコー領域として描出可能。

  • 治療とリハビリ

◾️急性期は安静とNSAIDsで炎症を抑え、必要に応じて関節内注射を行う。

◾️慢性期や反復例には石灰吸引(穿刺)や体外衝撃波療法(ESWT)も有効。

◾️リハビリでは、痛みのコントロールと再発予防のための姿勢改善や肩甲骨運動を行います。

五十肩と間違いやすい疾患③:肩関節不安定症・脱臼後遺症

  • 肩関節不安定症とは?

若年層やスポーツ選手に多く、肩関節が「抜けそうな感じ」「ズレる感じ」を繰り返す状態を指します。外傷性脱臼後に残る場合や、先天的に関節が緩い人にもみられます。

  • 主な症状

◾️肩が不意に外れそうになる。

◾️特定の動作(例:投球動作)で疼痛や不快感が生じる。

◾️明らかな痛みよりも「不安定感」が主訴。

  • 診断と評価

◾️既往歴(脱臼歴)が重要。

◾️関節の不安定性を評価する徒手検査(Apprehension testなど)が有用。

◾️MRIで関節唇損傷(バンカート損傷)などを評価。

  • 治療とリハビリ

◾️保存療法では、肩甲骨周囲筋の筋力強化や安定化訓練が中心。

◾️脱臼を繰り返す場合は鏡視下手術(バンカート修復術)も考慮。

◾️リハビリでは肩関節の動的安定性を回復させる運動療法が鍵となります。

適切な診断とリハビリテーションの重要性

  • 「五十肩と決めつけない」ことの重要性

肩の痛みがあっても、それが必ずしも五十肩とは限りません。診断が誤っていると、適切な治療のタイミングを逃し、症状が長期化したり悪化したりすることがあります。

  • 整形外科クリニックでできること

◾️詳細な問診と徒手検査による初期評価

◾️必要に応じた画像検査(超音波、X線、MRIなど)

◾️病態に応じた保存療法・手術療法の選択

◾️専門的なリハビリによる機能回復支援

  • リハビリテーションの役割

◾️単なる“痛みの軽減”ではなく、“機能の回復”と“再発予防”を目的に行う。

◾️五十肩では関節包の柔軟性改善、腱板断裂では肩甲骨と上腕の協調運動強化など、それぞれの疾患に応じたアプローチが必要。

◾️病態理解に基づいたオーダーメイドのプログラムが効果的。

参考文献

1)Young SN: How to increase serotonin in the human brain without drugs. J Psychiatry Neurosci. 30(5): 368–377. 2007.

2)Craft LL, Perna FM: The benefits of exercise for the clinically depressed. Prim Care Companion J Clin Psychiatry. 6(3): 104–111. 2004.

3)Nakao M et al: Somatization and somatoform disorders in Japan: treatment and research. Psychosom Med. 61(5): 652–659. 1999.

4)Blumenthal JA et al: Exercise and pharmacotherapy in the treatment of major depressive disorder. Psychosom Med. 69(7): 587–596. 2007.



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