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2025年4月13日

膝痛に効果的!? パテラセッティング

ハイライト

膝の痛みに悩む方に朗報!パテラセッティングは、膝の手術後や変形性膝関節症の初期段階からでも安全に行えるリハビリ方法で、膝の機能回復をサポートします。この記事では、効果や実践方法まで詳しくご紹介します。

目次

パテラセッティングとは?

パテラセッティングとは、膝関節周囲の筋肉(特に大腿四頭筋)を収縮させることで、膝蓋骨(=パテラ:お皿の骨)を動かす運動療法です。膝蓋骨は、大腿骨の前面にあり、膝関節の動きに連動して滑らかに動く構造になっています。この動きが制限されたり、ずれたりすることで、膝の痛みや違和感を引き起こすことがあります。

 

パテラセッティングが膝に与える効果

パテラセッティングは、一見すると小さな運動ですが、その効果は非常に多岐にわたります。

手術や外傷後、あるいは変形性膝関節症の進行により、膝蓋骨の可動性が低下することがあります。パテラセッティングはこの動きの回復に寄与し、関節のなめらかな動作を助けます。

膝関節の安定には、大腿前面の筋肉である大腿四頭筋の機能が重要です。パテラセッティングによりこの筋群の収縮を促し、筋力低下を防ぐことが可能です。

筋収縮によって関節内の滑液の循環が促進され、関節内の圧力や炎症が緩和されることで、痛みの軽減効果が期待されます。実際、多くの研究においてパテラセッティングの疼痛緩和効果が報告されています 1)

長期間の安静や痛みにより、膝の可動域が狭くなることがあります。パテラセッティングは、そのような状況でも関節の動きを保つ助けになります。

 

変形性膝関節症や術後におけるパテラセッティングの意義

パテラセッティングが重宝される場面として、以下の2つが特に挙げられます。

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることによって起こる慢性疾患で、日本国内でも高齢者を中心に非常に多くの患者がいます。進行により膝の痛みや変形、関節の可動域制限などが起こりますが、初期段階では積極的な運動療法が有効とされています。
パテラセッティングは、関節に負担をかけずに行えるため、症状が比較的軽度な段階からでも安全に取り組むことができます。特に痛みが強くて他の運動ができない場合の“最初の一歩”としても適しています。

人工膝関節置換術(TKA)や半月板縫合術など、膝関節に関わる手術の後、リハビリの初期段階でよく採用されるのがパテラセッティングです。
理由としては、手術直後の腫れや痛みが強い状態でも実施でき、筋の萎縮を防ぐことができるためです。とくに大腿四頭筋の萎縮は術後の機能回復を妨げる要因であるため、早期からの筋活性化は非常に重要とされます2)

 

パテラセッティングの実施方法と注意点

仰向けに寝た姿勢、または長座位(足を伸ばして座る)をとります。

膝の裏に丸めたタオルなどを置き、自然な角度をつけます。

膝のお皿(膝蓋骨)を下方向(足側)に軽く押し込むようなイメージで、大腿前面の筋肉に力を入れます。このとき、実際には手で押さず、筋肉の力で引き寄せる感覚を持ちます。

 

 

当院のInstagramでも、トレーニングの方法をUPしています。興味ある方は是非読んでみてください!!

 

▪️痛みが強いときは中止する
炎症が強い時期は無理に行わず、まずは医師と相談しましょう。
▪️正しい筋肉の使い方を意識する
太ももの前側がしっかりと硬くなる感覚が得られるように行うことが重要です。
▪️呼吸を止めない
力を入れる際につい呼吸を止めがちですが、リラックスした呼吸を続けましょう。

 

日常生活に活かすパテラセッティングの活用法

パテラセッティングは、リハビリ室だけで行うものではありません。日常生活に取り入れることで、より高い効果が得られます。

道具も特別な器具も必要としないため、家庭内でも簡単に実施できます。朝の体操、入浴後のリラックスタイム、テレビを見ながらの“ながら運動”としても活用できます。

症状が改善した後も、パテラセッティングを継続することで、筋力や可動性を保ち、将来的な関節障害の予防につなげることができます。

加齢により筋力は徐々に低下しますが、膝の運動機能が維持されることで転倒リスクの低下にもつながります。パテラセッティングは高齢者でも取り組みやすく、介護予防の一環としても有用です 3)

参考文献

1)山本健司:膝蓋骨運動療法の疼痛緩和効果. 理学療法ジャーナル. 43(5): 381-386. 2009.
2)鈴木大輔ほか:人工膝関節置換術後の大腿四頭筋萎縮予防に対する運動療法の効果. 日本整形外科リハビリテーション学会雑誌. 27(2): 95-102. 2020.
3)佐藤弘美:高齢者における膝関節機能維持と転倒予防. 老年医学雑誌. 54(3): 210-215. 2017.



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