2025年5月6日
親指の付け根が痛むなら、それは「CM関節症」かもしれません。加齢や使いすぎが原因となるこの関節の変形性関節症は、放置せず早期の診断と治療がカギです。
CM関節症(正式には「第一手根中手関節症」)は、手の親指の付け根にある関節、すなわち母指の「手根中手関節(Carpometacarpal Joint:CMC関節)」に発生する変形性関節症です。特に女性に多く、40歳以上になると発症率が高まります。CM関節は鞍状関節と呼ばれる形態をしており、多方向の動きが可能である一方、負荷も集中しやすい構造をしています。
この関節は、物をつまむ・回す・握るといった日常的な親指の動きに深く関わっており、負担が集中する部位でもあります。変形性関節症とは、関節の軟骨がすり減り、骨の変形や炎症、滑膜の肥厚を伴って慢性的な痛みと機能障害を生じる疾患で、CM関節症はその一形態に該当します。
CM関節症の主な原因は、長年にわたる使用による関節軟骨の摩耗です。これには以下のような要因が関与しています。
加齢とともに関節軟骨の弾力性が低下し、摩耗が進行しやすくなります。特に閉経後の女性ではホルモンバランスの変化が関与しているとされます。
繰り返しの動作や負荷(例:長時間の手作業、育児、楽器演奏など)は関節にストレスを与え、軟骨の消耗や骨の変形を促進します。
家族内にCM関節症の患者がいる場合、遺伝的な要素が関与している可能性もあります。
靭帯の緩みがあると関節の安定性が失われ、変形性関節症のリスクが上昇します。
CM関節症の典型的な症状は以下の通りです。
▪️親指の付け根に違和感や軽い痛み
▪️つまむ動作(ペットボトルの蓋を開けるなど)での違和感
▪️痛みの増強(特に使用時)
▪️関節の腫れ、硬さ、可動域の制限
▪️母指の基部が外側に出っ張ってくる(変形)
▪️視診・触診:関節の腫脹や圧痛、変形を確認
▪️Grind test:親指をねじることで痛みを誘発し関節障害の有無を確認
▪️X線検査:関節裂隙の狭小化、骨棘形成などが確認できる
▪️超音波やMRI:早期病変や滑膜炎、関節内変化の評価に有効
CM関節症の治療は、症状の程度に応じて段階的に行われます。
▪️安静と日常生活動作の見直し
手の使いすぎを避ける
グリップを強く使う動作を制限する
▪️装具療法
母指スプリントやサポーターにより関節を安定させる
夜間装着で痛みの軽減を図る
▪️薬物療法
NSAIDsの内服・外用
関節内ステロイド注射(短期間に限る)
▪️理学療法・作業療法
関節周囲の筋力強化
柔軟性の維持
滑膜炎を抑える物理療法