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2025年8月9日

青あざはなぜ色が変わる?打撲後の体の不思議

ハイライト

青あざ(皮下出血)は、打撲などで壊れた毛細血管から漏れた血液が皮膚の下に広がる現象です。時間が経つにつれて赤→青紫→緑→黄色→茶色と色が変わるのは、血液中のヘモグロビンが分解される“体内の掃除プロセス”によるものです。本コラムでは、その仕組みや誤解されやすいポイント、適切なセルフケア、そして整形外科クリニックでの評価と治療について解説します。

目次

青あざとは何か? ― 打撲と皮下出血のメカニズム

青あざは医学的には「皮下出血」と呼ばれ、外力によって毛細血管が破綻し、血液が皮下組織に漏れ出すことで発生します。表面の皮膚は傷つかないため、内出血が透けて見える形で色の変化が現れます。

皮膚が薄く骨が近い部分(すね、前腕、まぶた)は特に青あざが目立ちやすく、重力によって血液が下方に移動し、打撲部位より広がって見えることもあります。

◾️高齢者:血管や皮膚が脆弱であるため。

◾️抗凝固薬・抗血小板薬を内服中の方:出血が止まりにくい。

◾️栄養状態(ビタミンC欠乏など)や全身疾患の影響。

色が変わる理由 ― ヘモグロビン分解の科学

青あざの色は、血液中の赤血球とヘモグロビンが分解されていく過程で変化します。

◾️赤〜紫(直後〜1日):酸素を含んだヘモグロビン。

◾️青紫(2〜3日):酸素が少ない状態のヘモグロビン。

◾️緑(3〜5日):分解産物のビリベルジン。

◾️黄色(5〜7日):さらに代謝されビリルビンへ。

◾️茶色(7日以降):鉄分が沈着しヘモジデリンとなり吸収される。

この分解を担うのは主にマクロファージ。壊れた赤血球を処理し、代謝産物を血流やリンパに乗せて排出します。つまり青あざは、体が損傷を修復する「自然の片づけ」の一部です。

誤解されやすい点 ― 色だけで受傷時期は判断できる?

  • 「色で何日前にできたか分かる?」は誤り

法医学や小児虐待の研究では、色の変化だけで受傷時期を正確に判断するのは不可能とされています。

◾️同じ人でも部位によって変化速度が違う。

◾️皮膚の厚さ・血流・体温・薬の影響で進行が異なる。

◾️写真では光の加減で大きく見え方が変わる。

  • 臨床での活用方法

青あざの色はあくまで経過観察の「参考」にすぎず、診断は問診・視診・触診・画像検査を組み合わせて行います。

打撲直後の対処法 ― セルフケアと注意点

  • PEACE & LOVEの原則

近年のスポーツ外傷管理では、従来の「RICE」に代わり、以下の概念が推奨されています。

  1. P:Protection(保護)
  2. E:Elevation(挙上)
  3. A:Avoid anti-inflammatory(過度な抗炎症薬回避)
  4. C:Compression(圧迫)
  5. E:Education(教育)
  6. L:Load(適度な負荷)
  7. O:Optimism(前向きな心)
  8. V:Vascularisation(循環促進)
  9. E:Exercise(運動療法)

  • 受診が必要なサイン

◾️青あざが異常に広がる/強い腫れがある。

◾️関節を動かせないほどの痛み。

◾️目の周囲の青あざと視力障害の併発。

◾️抗凝固薬を服用している方の大きな皮下出血。

これらは骨折・筋腱損傷・血腫形成の可能性があるため、速やかに整形外科での診察が必要です。

当クリニックでの対応と患者さんへのメッセージ

  • 画像診断での評価

当院では超音波検査を用いて皮下出血の深さや血腫の有無を確認し、必要に応じてX線で骨折の有無を評価します。

  • 治療とリハビリ

◾️圧迫・冷却・安静の基本処置。

◾️大きな血腫は穿刺排液を検討。

◾️関節周囲の打撲では可動域訓練や筋力トレーニングを段階的に導入。

  • 患者さんへのメッセージ

青あざは「ただの打撲」と軽視されがちですが、体が損傷を修復している証拠でもあります。色の変化を不安に思う方は多いですが、正しい知識を持つことで安心できます。気になる症状がある場合は、整形外科にご相談ください。

 

参考文献

  1. Bariciak E, et al.: Dating of bruises in children: an assessment of physician accuracy. Pediatrics. 112(4):804–807. 2003.
  2. Stephenson T, et al.: The age of bruises in children: a review. Arch Dis Child. 74(1):53–55. 1996.
  3. Langlois NE, et al.: The science behind the colour: a review of the physiology and timing of bruising. Forensic Sci Int. 219(1–3):15–24. 2012.
  4. 日本整形外科学会: スポーツ外傷・障害予防ガイドライン. 南江堂, 2020.
  5. Dubois B, et al.: Soft tissue injuries: PEACE & LOVE. Br J Sports Med. 54(2):72–73. 2020.

 

 



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