コラム・ブログ

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2026年3月8日

「いつの間にか骨折」を防ぐ。背中が丸くなってきたら見直したい生活習慣とリハビリ

ハイライト

「最近、少し背中が丸くなってきた気がする」「身長が縮んだかもしれない」と感じていませんか? それは加齢のせいだけでなく、背骨が少しずつ潰れる「いつの間にか骨折(圧迫骨折)」のサインかもしれません。痛みを感じないことも多いため放置されがちですが、早期に発見して適切な骨粗鬆症治療とリハビリテーションを行えば、骨折の連鎖を防ぎ、若々しい姿勢を保つことができます。本記事では、いつの間にか骨折の原因と対策について分かりやすく解説します。

目次

気づかないうちに背骨が潰れる「いつの間にか骨折」とは

「骨折」と聞くと、転んでポキっと骨が折れて激痛が走る……という状況を想像する方が多いでしょう。しかし、骨密度が低下する「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」が進むと、まったく違うタイプの骨折が起こりやすくなります。それが、通称「いつの間にか骨折」と呼ばれる「脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)」です。

背骨は、ダルマ落としの駒のように小さな骨(椎体:ついたい)がいくつも積み重なってできています。骨粗鬆症によってこの椎体がスカスカにもろくなると、重いものを持ち上げたり、尻餅をついたりした衝撃はもちろん、単にくしゃみをしただけ、あるいは日常生活の些細な動作の積み重ねだけで、椎体がグシャッと縦に潰れてしまうのです。

恐ろしいことに、この骨折は必ずしも強い痛みを伴うわけではありません。患者さんの約3分の2は、はっきりとした痛みを感じないまま、気づかないうちに骨折していると言われています。

身長低下や背中の丸みは危険なサイン

痛みがなくても、体は確実にサインを出しています。以下のような変化に心当たりはありませんか?

これらはすべて、潰れた背骨の影響で背骨全体が前かがみに曲がってしまっているサインの可能性があります。

とくに「身長が2センチ以上縮んだ」という方は、すでに圧迫骨折を起こしている可能性が高いため、早めに整形外科を受診してレントゲン検査や骨密度検査を受けることをお勧めします。

なぜ痛みがなくても油断してはいけないのか

「痛くないなら、別にそのままでいいのでは?」と思うかもしれませんが、それは大きな間違いです。「いつの間にか骨折」を放置してはいけない最大の理由は、「骨折のドミノ倒し」を引き起こすからです。

背骨の一部が潰れて背中が丸くなると、身体の重心が前にズレます。すると、潰れた骨のすぐ上下にある別の背骨に異常な体重がかかるようになり、次から次へと連鎖的に背骨が潰れていってしまうのです。

背骨がたくさん潰れると、背中が極端に曲がってしまい、内臓が圧迫されて「逆流性食道炎」を起こしやすくなったり、肺が膨らみにくくなって息苦しさを感じたりするなど、全身の健康状態に悪影響を及ぼします。

さらに、重心がズレてバランスを取りにくくなるため、転倒しやすくなり、今度は「大腿骨(太ももの付け根)」という寝たきりに直結する致命的な骨折を招く危険性が跳ね上がります。

骨を強く保つための食事と生活習慣の見直し

いつの間にか骨折を防ぎ、これ以上の進行を食い止めるためには、骨の材料をしっかり摂り、しなやかで強い状態を保つことが不可欠です。

  • カルシウムとビタミンDの摂取
    骨の主成分である「カルシウム(牛乳、小魚、大豆製品など)」はもちろん、カルシウムが腸から吸収されるのを助ける「ビタミンD(鮭、キノコ類など)」をセットで摂ることを心がけましょう。
  • 日光浴のすすめ
    ビタミンDは、紫外線に当たることで体内で合成されます。夏場なら木陰で30分、冬場なら1時間程度、顔や手に日光を浴びるだけでも十分な効果があります。
  • お薬による積極的な治療
    すでに骨粗鬆症と診断された場合は、食事だけでは骨密度を増やすことは困難です。自己判断で治療を中断せず、医師に処方された骨を強くするお薬(飲み薬や注射)をしっかりと継続することが骨折予防の要となります。

背筋を伸ばし転倒を防ぐリハビリテーション

お薬や食事と並行して絶対に行うべきなのが、体を動かす「リハビリテーション」です。
当院のリハビリテーションでは、理学療法士が患者さん個々の体の硬さや筋力を評価し、最適な運動プログラムを提供します。

  • 背中の筋肉を鍛える
    丸まりがちな背中を起こすために、背部(脊柱起立筋)の筋力トレーニングを行います。うつ伏せや座った状態で行う安全なメニューを指導します。
  • 胸のストレッチ
    背中が丸くなると、体の前側の筋肉(大胸筋など)が縮こまって硬くなります。ここをしっかりと伸ばすことで、深い呼吸ができるようになり、姿勢の改善に繋がります。
  • バランス訓練
    骨折の最大の原因である「転倒」を防ぐため、片脚立ちの練習や、足の裏全体でしっかり地面を踏みしめる感覚を養うトレーニングを行います。

「年齢だから仕方ない」と諦める必要はありません。正しい知識とリハビリテーションで、いつまでも背筋の伸びた若々しい体を守りましょう。

参考文献

  1. 日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」
  2. 厚生労働省「e-ヘルスネット:骨粗鬆症」


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