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2025年12月25日

「しびれ」=「神経の病気」とは限りません。画像には写らない? 筋肉が引き起こす「しびれ」の正体と治し方

ハイライト

手足がジンジン、ピリピリする。「もしかして脳の病気?」「ヘルニアが悪化した?」そんな不安に襲われたことはありませんか? 実は、しびれの原因すべてが「神経そのものの病気」とは限りません。硬くなった「筋肉」が神経を締め付けたり、痛みのサインを誤送信したりして起きる「筋肉由来のしびれ」が意外と多いのです。MRIには写らないその原因と、リハビリテーションによる解決法を解説します。

目次

はじめに:その「ジンジン感」、本当にヘルニアですか?

「足がしびれる」「指先がピリピリする」 こうした症状が出たとき、多くの方が真っ先に疑うのは、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、あるいは脳梗塞などの怖い病気ではないでしょうか。

整形外科を受診し、MRI検査を受けた結果、「背骨はきれいですね」「手術するほどではありません」と言われ、ビタミン剤や痛み止めを処方されたけれど、症状が変わらない…。 そんな経験をされている方が非常に多くいらっしゃいます。

もし、検査で大きな神経の病気が見つからなかったのなら、それは「筋肉」がしびれを引き起こしている可能性が高いです。 「筋肉痛は痛いだけで、しびれないでしょう?」と思われるかもしれませんが、実は硬く凝り固まった筋肉は、本物の神経痛とそっくりな「しびれ」を作り出すことができるのです。

筋肉が犯人パターン①:神経の通り道を塞ぐ「トンネル事故」

神経は、脳から背骨を通り、手足の先まで伸びる長い「電線」のようなものです。 この電線は、筋肉と筋肉の隙間や、骨の近くなど、非常に狭いルートを縫うように走っています。

もし、運動不足や姿勢の悪さで筋肉がカチカチに硬くなったり、むくんで太くなったりしたらどうなるでしょうか? すぐ近くを通っている神経が、筋肉によって圧迫され(締め付けられ)、血流が悪くなってしまいます。

これを専門的には「絞扼性(こうやくせい)神経障害」と呼びます。 正座をした後に足がしびれるのと同じ原理です。

これらは「神経そのものの損傷」ではなく、「筋肉による圧迫」が原因なので、筋肉を緩めれば症状が改善するケースが非常に多いのです。

筋肉が犯人パターン②:離れた場所に飛ばす「関連痛の罠」

もう一つ、非常に厄介なのが「トリガーポイント」による関連痛(かんれんつう)です。

筋肉の中に「トリガーポイント」と呼ばれる、疲労物質が溜まった硬いシコリができると、なぜかその場所ではなく、離れた場所に痛みやしびれを飛ばすという性質があります。

  • お尻の筋肉のトリガーポイント:お尻には何ともないのに、「足のすね」や「足首」にしびれのような痛みを飛ばすことがあります。
  • 肩甲骨の筋肉のトリガーポイント:肩には痛みがないのに、「腕」や「手の指先」にしびれを感じさせることがあります。

患者さんは「指がしびれるから、手首が悪いのかな?」と思いがちですが、本当の犯人(トリガーポイント)はずっと遠くの肩にある、ということが珍しくありません。 これは脳が痛みの場所を錯覚して起きる現象であり、MRIで首や腰を撮影しても、筋肉の中にあるこの「シコリ」は写りません。

異常なし」と言われた時こそ、エコーとリハビリの出番

「MRIで異常なし=原因不明」ではありません。 「骨や中枢神経には異常がなかった。では、筋肉や末梢神経の通り道を詳しく見てみよう」という、次のステップに進む合図です。

ここで活躍するのが、当クリニックでも導入している「超音波画像診断装置(エコー)」「リハビリテーション」です。

● エコーで「動き」を見る

レントゲンやMRIは静止画ですが、エコーはリアルタイムで体の中を観察できます。

– 「腕を上げた時に、この筋肉が神経を挟み込んでいますね」

– 「ここの筋肉の滑りが悪くて、神経が引っ張られていますね」 このように、しびれの原因となっている「圧迫ポイント」を視覚的に探し出すことができます。

● 理学療法士による徒手検査

私たち理学療法士は、解剖学の知識に基づき、原因と思われる筋肉を指で押したり(圧迫)、特定の姿勢をとらせたりして、症状が再現されるかを確認します。 「ここを押すと、いつもの指先のしびれが強くなりませんか?」 これが確認できれば、その筋肉が治療のターゲットになります。

薬で消えないしびれに、理学療法士ができること

筋肉が原因のしびれに対して、単に痛み止め(鎮痛薬)を飲むだけでは、根本的な解決になりません。硬くなった筋肉を物理的に緩め、環境を変える必要があります。

整形外科のリハビリテーションでは、以下のようなアプローチを行います。

  • 1. 徒手療法(リリース):神経を締め付けている筋肉(絞扼ポイント)や、しびれの原因となっているトリガーポイントを、理学療法士の手技によって丁寧に緩めます。
  • 2. 神経系モビライゼーション(神経のストレッチ):圧迫されていた神経は、周囲の組織と癒着して滑りが悪くなっています。神経を優しく動かす特殊な運動を行い、滑走性(すべり)を良くして血流を改善させます。
  • 3. 姿勢改善(根本治療):なぜその筋肉が硬くなったのでしょうか? 多くは「猫背」や「反り腰」などの不良姿勢が原因です。 再びしびれが出ないよう、負担のかからない姿勢や動作を指導します。

「しびれ」は体からのSOSですが、必ずしも手術が必要な重病ばかりではありません。 「ずっと治らないから」と諦める前に、筋肉や神経の通り道に問題がないか、一度整形外科で専門的な評価を受けてみませんか?

あなたのその不快な症状、リハビリテーションの手で和らげることができるかもしれません。

参考文献

1. **Travell, J.G., & Simons, D.G.** (1999). _Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual._ (トリガーポイントによる関連痛、筋膜性疼痛症候群の基礎文献)

2. **Simons, D.G.** (2002). “Understanding effective treatments of myofascial trigger points.” _Journal of Bodywork and Movement Therapies._ (筋肉由来の痛み・しびれの治療メカニズムに関して)

3. **Neal, S., & Fields, K.B.** (2010). “Peripheral nerve entrapment and injury in the upper extremity.” _American Family Physician._ (上肢における絞扼性神経障害の診断と治療)

4. **日本整形外科学会.** 「胸郭出口症候群」および「腰部脊柱管狭窄症」の診療ガイドライン. (鑑別診断の基準に関して)

 

 

 

 



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