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2025年10月10日

「冬になると腰痛が増えるのはなぜ?」 寒さと筋肉・血流の意外な関係

ハイライト

冬になると「腰が重い」「痛みがぶり返す」と感じる方が増えます。その背景には、寒さによる筋肉の緊張・血流低下・神経過敏といった複合的な変化が関係しています。今回は、季節性の腰痛を整形外科の視点から解説します。

目次

冬に腰痛が悪化しやすい理由──冷えが体に与える生理的変化

気温が低下すると、自律神経のうち交感神経が優位になります。

その結果、末梢血管が収縮し、筋肉や関節への血流が減少します1)。

血液は酸素と栄養を運ぶ“治癒の源”です。血流が滞ることで筋肉が硬直し、痛みを感じやすくなります。

寒さから体を丸めて防御姿勢をとることで、背中や腰の筋肉が常に緊張します。

この持続的な負担が筋膜や関節に微細な炎症を生じ、腰痛を誘発します。

冬は活動量が減り、筋肉の伸縮や血液循環が不足します。

「動かないこと」自体が腰痛の大きなリスク要因となります。

筋肉の冷えと緊張──“こわばり”が痛みを生むメカニズム

筋肉は温度が下がると粘性が増し、伸び縮みしにくくなります。

これにより、筋線維や筋膜に小さな“引っかかり”が生じ、動かしたときに痛みを感じやすくなります。

寒さや痛みを感じると、体は無意識に筋肉を収縮させて守ろうとします。

しかし、過度な筋収縮はかえって血流を妨げ、痛み物質(ブラジキニン、乳酸など)が蓄積します2)。

この悪循環が、慢性的な腰痛へとつながります。

筋膜は筋肉を包む薄い膜で、滑らかに動くことで痛みなく体を支えています。

寒さや血行不良で水分量が減ると、筋膜の滑走性が低下し、「張るような痛み」「動作時のつっぱり」を感じるようになります。

血流低下と酸素不足──筋膜性腰痛の背景にある循環障害

  • 血流の滞りが“痛み物質”を増やす

血流が悪くなると、筋肉内の酸素供給が不足し、乳酸やヒスタミンなどの代謝産物が蓄積します。

これらの物質が神経終末を刺激して痛みを感じさせることが知られています3)。

  • 筋肉ポンプの働きが低下

立ち仕事やデスクワークでは、長時間同じ姿勢を続けることが多く、筋肉のポンプ作用が働きません。

特に腰部の多裂筋や大殿筋などの深層筋が硬くなると、局所的な血流低下を起こしやすくなります。

  • 温めるだけでは足りない”理由

温熱療法(カイロ・入浴など)は一時的に血流を改善しますが、筋肉を動かすことでこそ根本的な循環回復が得られます

整形外科では、温熱+運動(アクティブリハビリ)を組み合わせた治療を推奨しています。

寒さと神経の関係──“しびれ”や“違和感”の正体

  • 冷えが神経伝導を遅らせる

神経は温度変化に敏感で、冷えると伝達速度が低下します。

これにより、痛みの感覚が鈍くなる一方で、“違和感”や“しびれ”といった異常感覚が出やすくなります4)。

  • 筋緊張が神経を圧迫する

腰部の筋肉(特に腰方形筋や梨状筋)が硬くなると、神経を圧迫し坐骨神経痛を引き起こすことがあります。

寒さによる筋緊張がこの神経絞扼を悪化させるため、冬場に「脚のしびれが強くなる」と訴える方も多く見られます。

  • 自律神経の乱れ

冬は交感神経が優位になりやすく、血管収縮や冷えを助長します。

副交感神経とのバランスが崩れると、筋肉のリラックスができず、慢性的な痛みにつながります。

深呼吸やストレッチなどで自律神経のバランスを整えることも大切です。

冬の腰痛を防ぐ生活習慣──温め・動かす・整える

  • 温める

腰や下半身を中心に、血流を促す工夫を。

入浴は38〜40℃で10〜15分

湯上がり後は冷やさないよう靴下や腹巻きを活用

就寝時は湯たんぽや電気毛布で腰を温める

  • 動かす

筋肉は「動かすことで温まる」。

朝起きたら軽い体幹ストレッチや深呼吸を行い、筋肉を起こす習慣をつけましょう。

ウォーキングや軽いスクワットなど、全身を使った運動が特に効果的です。

  • 姿勢を整える

寒さで猫背になりやすいため、背筋を伸ばす意識を。

イスに深く座り、骨盤を立てる姿勢を保つと腰部への負担が軽減します。

  • 栄養と睡眠

冷え対策には、血流を良くする鉄分・ビタミンE・タンパク質を意識的に摂取。

十分な睡眠は自律神経を整え、痛みの閾値を上げます。

  • 整形外科でのサポート

痛みが長引く場合や神経症状が出る場合は、自己判断せず医療機関へ。

整形外科では、

筋・神経・関節の評価

超音波・X線による原因特定

個別リハビリ指導

を通じて、根本からの改善を目指します。

リハビリではお腹の筋肉がどう働いているかなどチェックすることも可能です↑↑

 

参考文献

  1. Boron WF, et al.: Physiology of the gastrointestinal system. Med Physiol. 2nd ed. 2012.
  2. Ouwehand AC, et al.: The effects of probiotics on the gastrointestinal microbiota. Int J Food Microbiol. 171(2):117–124. 2014.
  3. Petersen AM, Pedersen BK: The anti-inflammatory effect of exercise. J Appl Physiol. 98(4):1154–1162. 2005.
  4. Walsh NP, et al.: Exercise and immune function. Exerc Immunol Rev. 17:6–63. 2011.
  5. Pedersen BK, Saltin B: Exercise as medicine—evidence for prescribing exercise as therapy in chronic disease. Scand J Med Sci Sports. 25(Suppl 3):1–72. 2015.

 



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