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2026年2月2日

「放っておけば治る」は間違い? 五十肩の拘縮を防ぐリハビリテーションの重要性

ハイライト

「放っておけばいつか治る」そう信じて痛みに耐えていませんか? 五十肩(肩関節周囲炎)は、放置すると肩が固まり、二度と元通り動かなくなる恐れがあります。炎症期から拘縮期までの正しい対処法と、可動域を取り戻すためのリハビリテーションの重要性を解説します。

目次

五十肩の正体。「肩こり」とは全く違う関節内部の炎症

一般的に「五十肩」と呼ばれていますが、医学的には「肩関節周囲炎」という病名がつきます。これは、肩こりのような筋肉疲労とは全くの別物です。
肩の関節は、「関節包」という袋に包まれています。加齢や使いすぎにより、この袋自体が炎症を起こし、分厚く硬くなってしまうのが五十肩の正体です。

● 典型的な症状

激痛で眠れない夜。「炎症期」にやってはいけないこと

五十肩には3つの病期があります。最初の「炎症期」は、最も痛みが強く出る時期です。特に特徴的なのが「夜間痛」です。
寝返りを打ったり、肩が冷えたりするだけで目が覚めてしまうほどの痛みが出ます。

● この時期のNG行動

まずは整形外科で消炎鎮痛剤の処方や、関節内注射(ヒアルロン酸やステロイド)を受け、炎症を鎮火させることが最優先です。

痛みが引いても腕が上がらない。「拘縮期」の恐怖と誤解

炎症が落ち着くと、痛みは和らぎますが、今度は「拘縮(こうしゅく)」という時期に入ります。関節包が癒着し、まるで錆びついた蝶番のように肩が動かなくなります。
ここで多くの人が陥る誤解が、「痛みがないから治った」と思ってしまうことです。

● 放置のリスク

この時期に適切なリハビリテーションを行わないと、肩の可動域が制限されたまま固定されてしまいます。「痛みはないけれど、腕が耳まで上がらない」「背中に手が回らない」という後遺症を残して一生を過ごすことになりかねません。

 

放置こそ最大のリスク。早期リハビリテーションが予後を決める

「五十肩は放っておけば1〜2年で治る」という説もありますが、これは「痛みは消える」という意味であり、「元通り動くようになる」という意味ではありません。
拘縮期こそ、リハビリテーションの出番です。

理学療法士による可動域訓練

  • 関節モビライゼーション:硬くなった関節包を、理学療法士が徒手で少しずつ広げていきます。
  • 筋膜リリース:癒着した組織を剥がし、滑走性を改善します。
  • 筋肉の再教育:痛みをかばって使われなくなったインナーマッスル(回旋筋腱板)を活性化させ、正しい肩の動きを脳に思い出させます。

整形外科でのリハビリテーションは、単に動かすだけでなく、痛みの再発を防ぎながら効率的に可動域を広げるためのプログラムです。

自宅でできる「コッドマン体操」と生活上の注意点

自宅で安全に行えるリハビリとして「コッドマン体操(アイロン体操)」があります。重力を利用して関節の隙間を広げる運動です。

● やり方

1. 痛くない方の手をテーブルにつき、上半身を前かがみにします。

2. 痛い方の腕をだらりと垂らし、力を抜きます。

3. 手に500mlのペットボトルなどを持ち、振り子のように前後左右、円を描くように小さく揺らします。
決して力を使わず、重さと遠心力だけで動かすのがコツです。

五十肩は「老化現象だから仕方ない」と諦める必要はありません。適切な時期に適切なリハビリテーションを行えば、再びスムーズに腕を上げ、ゴルフや水泳などの趣味を楽しむことも十分に可能です。

参考文献

1. 日本整形外科学会 「肩関節周囲炎」
2. 日本肩関節学会 「肩関節周囲炎理学療法ガイドライン」
3. 厚生労働省 「e-ヘルスネット:五十肩」
4. Neviaser, A. S., & Hannafin, J. A. (2010). “Adhesive Capsulitis: A Review of Current Treatment.” The American Journal of Sports Medicine.
5. 日本理学療法士協会 「運動器の痛みと理学療法」

 



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