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2025年10月13日

「歩く」だけで免疫力が上がる? 運動が体の防御システムを整える仕組み

ハイライト

ウォーキングは体力をつけるだけでなく、免疫力を高める“自然のワクチン”。血流・代謝・ホルモンバランスを整え、体がウイルスや細菌に強くなるメカニズムを、整形外科の視点から解説します。

目次

免疫力とは?──体を守る防御システムの基本

体内に侵入したウイルスや細菌を排除する仕組み。白血球・リンパ球・NK細胞などがその主役です。

睡眠不足、栄養バランスの乱れ、ストレス、運動不足などが続くと、免疫細胞の働きが低下します。

軽い運動は血流と体温を上げ、免疫細胞を活性化します。「動くこと」は最大の予防医学です。

「歩く」と免疫が上がる理由──体内で起こる3つの変化

筋肉の収縮がポンプの役割を果たし、免疫細胞が全身を巡ります。冷え性やむくみの改善にも効果的です。

ウォーキング直後に、ウイルスを攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞が増加します1)。これが“風邪をひきにくくなる”理由の一つです。

筋肉は「分泌器官」としても働き、マイオカインという抗炎症物質を出します2)。慢性的な炎症を抑え、免疫のバランスを整えます。

歩きすぎは逆効果?──免疫とストレスのバランス

  • 過剰な運動の落とし穴

長時間の激しい運動は「コルチゾール」というストレスホルモンを増やし、免疫力を一時的に下げます3)。

  • 理想的な強度と時間

息が弾む程度(最大心拍数の50〜60%)で30分程度のウォーキングを週3〜5回が理想です。

「やや疲れる」くらいの軽負荷を継続することが、免疫力維持に最も効果的です。

続けるコツ──時間・強度・頻度のポイント

  • 朝の光を浴びる

朝のウォーキングは体内時計を整え、自律神経のリズムを安定させます。これが免疫バランスの維持につながります。

  • 姿勢と呼吸を意識

猫背になると呼吸が浅くなり、酸素供給が減ります。胸を開き、深くゆっくり呼吸を意識しましょう。

  • 無理をせず継続

「毎日歩けない日があってもOK」。10〜15分の短時間でも、続けることに意味があります。

膝や腰が痛む場合は、整形外科でフォームや靴の確認を行いましょう。

整形外科から見た“歩く免疫療法”──筋骨格と免疫の関係

  • 筋肉・関節の健康が免疫を支える

下肢筋群を動かすことで血流が改善し、骨密度の維持や関節の栄養供給にもつながります4)。

  • 炎症を抑える効果

運動により、体内の炎症性物質(IL-6、TNF-αなど)がバランスを保ち、関節や筋肉の慢性炎症を防ぎます。

  • ストレス軽減も重要

歩行時に分泌されるセロトニンやエンドルフィンは“幸せホルモン”。ストレスホルモンの減少は免疫機能を安定させます5)。

参考文献

  1. Nieman DC, et al.: Exercise, infection, and immunity. Int J Sports Med. 15(3):S131–S141. 1994.
  2. Pedersen BK, Febbraio MA: Muscle as an endocrine organ: focus on muscle-derived interleukin-6. Physiol Rev. 88(4):1379–1406. 2008.
  3. Walsh NP, et al.: Position statement. Part one: Immune function and exercise. Exerc Immunol Rev. 17:6–63. 2011.
  4. Fujita Y, et al.: Effects of walking exercise on bone metabolism in postmenopausal women. J Bone Miner Metab. 30(1):89–95. 2012.
  5. Irwin MR, et al.: Exercise, sleep, and the immune system: moderation and mediation. Brain Behav Immun. 57:47–53. 2016.

 

 

 



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