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2026年2月4日

シャワーだけで済ませていませんか? 入浴が筋肉と関節に与える医学的メリット

ハイライト

忙しい毎日、お風呂をシャワーだけで済ませていませんか? 入浴は単なる汚れを落とす行為ではなく、医学的に認められた「温熱療法」の一つです。湯船に浸かることで得られる3つの効果(温熱・水圧・浮力)と、痛みを和らげる正しい入浴法について、整形外科医が解説します。

目次

湯船は自宅でできる「物理療法」。シャワーでは得られない3つの効果

整形外科のリハビリ室にある「ホットパック」などの物理療法機器。実は、自宅の湯船はこの効果を全身で受けられる優れた装置です。

「忙しいのでシャワーだけ」という方も多いですが、医学的に見るとシャワーと入浴は別物です。
シャワーは「洗浄」「リフレッシュ」には有効ですが、「筋肉のコリをほぐす」「痛みを和らげる」といった効果は不十分です。
湯船に浸かることで初めて得られる、以下の「3つの物理作用」こそが入浴の真価です。

これらは、ただお湯に浸かっているだけで自動的に体に働きかけ、メンテナンスを行ってくれます。まさに「頑張らなくていいリハビリ」なのです。

血流改善の決定打。温熱作用が凝り固まった筋肉を溶かす

入浴の最大のメリットは、体温の上昇に伴う「血流の改善」です。
湯船に肩まで浸かると、体は温まり、皮膚の表面だけでなく体内の血管も拡張します。これにより、血液の流れが劇的に改善されます。

また、関節のコラーゲン繊維は温めると柔らかくなる性質があり、入浴後に関節が動きやすくなるのはこのためです。

むくみ解消のメカニズム。「静水圧」がポンプ機能を助ける

お風呂の水圧(静水圧)は、むくみ解消に絶大な効果を発揮します。

  • 血液やリンパ液は重力で下半身に溜まりがちですが、静水圧がポンプのように働き、末梢の血液を心臓へと押し戻します(静脈還流の促進)。これにより全身の循環が良くなります。

また、胸にも水圧がかかるため、呼吸筋を使った呼吸が必要となり、適度な心肺機能のトレーニングにもなります。

重力からの解放。「浮力」を利用した関節リハビリテーション

地球上で暮らしている限り、私たちの体は常に重力の影響を受けています。立っているだけで、足裏、膝、股関節、そして背骨には体重がかかり続けています。
しかし、お湯の中に入ると「浮力」が働き、体重は陸上の約9分の1から10分の1程度になります。
体重60kgの方であれば、お風呂の中ではわずか6kg程度で体を支えれば良いことになります。

この「重力からの解放」は、関節にとって最高の休息時間です。

  • 変形性股関節症
  • 変形性膝関節症
  • 腰部脊柱管狭窄症

などの疾患をお持ちの方にとって、体重をかけずに動ける環境は非常に貴重です。
陸上では痛くてできない運動も、お風呂の中でなら可能な場合があります。この浮力を利用した、簡単な「お風呂リハビリ」をご紹介します。

◾️ 膝の曲げ伸ばし運動

湯船の中で、膝を抱えるようにゆっくり曲げ、そしてゆっくり伸ばします。浮力が脚を持ち上げるのを助けてくれるため、筋肉に過度な負担をかけずに関節の可動域訓練(動く範囲を広げる練習)ができます。

◾️ 腰のひねり運動

湯船に浸かった状態で、ウエストを左右にゆっくりひねります。浮力で体が軽くなっているため、スムーズに動かせます。腰周りの筋肉の緊張をほぐすのに効果的です。

ただし、滑らないように手すりや浴槽の縁をしっかり掴んで行ってください。

長湯は逆効果? リラックス効果を最大化する温度と時間

ここまで入浴のメリットをお伝えしましたが、入り方を間違えると逆効果になることもあります。特に「温度」と「時間」の設定が重要です。

◾️ おすすめの温度:38度〜40度(ぬるめ)

副交感神経を優位にし、リラックスするのに最適です。42度以上の熱いお湯は交感神経を刺激し、覚醒してしまうため、夜には不向きです。

◾️ おすすめの時間:10分〜15分

額にうっすら汗をかく程度が目安。長湯はのぼせや脱水の原因になります。

「ぬるめのお湯に、じんわりと」を心がけてください。入浴は、酷使した体への「お疲れ様」のメッセージであり、明日への活力への投資です。

参考文献

1. 日本温泉気候物理医学会 「温泉医学の基礎と臨床」
2. 早坂信哉 「入浴検定 公式テキスト」
3. 厚生労働省 「健康長寿のための入浴法」
4. Becker, B. E. (2009). “Aquatic therapy: scientific foundations and clinical rehabilitation applications.” PM&R.
5. 日本理学療法士協会 「水治療法の基礎」



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