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2026年2月23日

ヘルニア=手術ではない? 痛みをコントロールし共存するための保存療法

ハイライト

「椎間板ヘルニア」と診断されると、「手術しかないのか」と絶望的な気持ちになるかもしれません。しかし、実はヘルニアの約8割は、手術をせずに痛みをコントロールできることをご存知でしょうか? 整形外科医が教える、切らずに治す「保存療法」の可能性と、再発を防ぐための生活術について解説します。

目次

飛び出した中身はどこへ行く? ヘルニアが自然消滅するメカニズム

「ヘルニア」とは、本来あるべき場所から中身が飛び出してしまった状態を指します。腰椎の場合、骨と骨の間にあるクッション(椎間板)の中身(髄核)が飛び出し、神経を圧迫することで激痛やしびれを引き起こします。
驚くべきことに、飛び出したヘルニアは、体にとって「異物」とみなされます。すると、白血球の一種であるマクロファージがその異物をパクパクと食べて吸収してしまうのです。
この自然治癒力により、数ヶ月でヘルニアが縮小、あるいは消失することが多くの研究で確認されています。

手術が必要なケースとは。「膀胱直腸障害」と「進む麻痺」

では、どんな場合に手術が必要になるのでしょうか。それは主に以下の2つのケースです。

1. 膀胱直腸障害

2. 進行する麻痺

これらに当てはまらない、ただ「痛みが強い」だけの状態であれば、あわててメスを入れる必要はありません。

ブロック注射という選択肢。痛みの回路を断ち切る治療法

手術をしない場合、いかに痛みをコントロールし、ヘルニアが吸収されるのを待つかが勝負になります。その強力な武器が「神経ブロック注射」です。
痛みの原因となっている神経の近くに、直接麻酔薬や抗炎症薬を注入します。

● 効果

  • 興奮した神経を鎮める。
  • 筋肉の緊張を解き、血流を改善する。
    痛みの悪循環(痛み→筋肉の緊張→血行不良→さらなる痛み)を断ち切ることで、自然治癒を後押しします。

コルセットは諸刃の剣。正しい着用期間と外しどき

激痛がある急性期には、医療用コルセットが役立ちます。腹圧を高め、腰椎への負担を減らしてくれます。
しかし、痛みが引いてきたら徐々に外していく必要があります。長期間つけ続けると、体幹の筋肉(天然のコルセット)がサボることを覚え、どんどん弱ってしまうからです。
「コルセットがないと不安」という状態は、腰にとって危険なサインです。

腹圧を高めて腰を守る。リハビリテーションによる体幹強化

保存療法の最終ゴールは、コルセットに頼らず、自分の筋肉で腰を支えられるようになることです。
そのためには、「インナーマッスル(腹横筋や多裂筋)」の強化が不可欠です。

● ドローイン呼吸法

  • 1. 仰向けに寝て膝を立てる。
  • 2. 息を大きく吸ってお腹を膨らませる。
  • 3. 息を細く長く吐きながら、おへそを背骨にくっつけるイメージでお腹を凹ませる。
  • 4. そのまま10秒キープ。

地味な運動ですが、これを続けることで「天然のコルセット」が鍛えられ、ヘルニアがあっても痛みが出ない体を作ることができます。
焦らず、じっくりと自分の体と向き合いましょう。

参考文献

1. 日本整形外科学会 「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン」
2. Kreiner, D. S., et al. (2014). “An evidence-based clinical guideline for the diagnosis and treatment of lumbar disc herniation with radiculopathy.” The Spine Journal.
3. 日本脊椎脊髄病学会 「腰痛診療ガイドライン」
4. 厚生労働省 「腰痛対策参考資料」
5. Jensen, T. S., et al. (2006). “Natural course of disc morphology in patients with sciatica.” BMC Musculoskeletal Disorders.



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