コラム・ブログ

コラム・ブログ

2026年1月13日

メンタル不調の意外な原因?猫背が脳に与える負荷と姿勢改善の重要性

ハイライト

「心が疲れた」と感じたとき、あなたは自分の姿勢を意識したことがありますか? 実は、猫背やストレートネックといった身体の歪みは、脳への血流や呼吸を阻害し、自律神経の乱れ、ひいてはメンタル不調の引き金となります。整形外科的な視点から、姿勢と心の健康の深い繋がりを解き明かし、リハビリテーションを通じた「軽やかな自分」への整え方を詳しく解説します。

目次

なぜ「姿勢」が「心」を左右するのか。身体とメンタルの双方向な関係

昔から「胸を張って生きる」という言葉があるように、姿勢は人の精神状態を雄弁に物語ります。しかし、近年ではこれが単なる比喩ではなく、医学的にも姿勢が脳や心にダイレクトに影響を与えることがわかってきました。整形外科を受診される患者様の中には、肩こりや腰痛だけでなく、「何となく気分が晴れない」「やる気が出ない」といった不調を同時に抱えている方が非常に多くいらっしゃいます。

● 脳へのフィードバック

「心が形を作る」だけでなく、「形(姿勢)が心を作る」という視点を持つことが、メンタルケアの新しい突破口になります。

脳が酸欠状態に?猫背による肺活量低下が自律神経に与えるダメージ

姿勢の崩れがメンタルに与える最大の物理的要因は「呼吸」の質の低下です。特に猫背の状態は、解剖学的に見て非常に効率の悪い身体環境を作り出します。

● 肺活量の低下と酸欠

自律神経への負担
浅く速い呼吸は、交感神経(闘争と逃走の神経)を常に優位にさせます。本来、リラックスしたい時でも身体が「緊急事態」だと誤解し、自律神経が休まらなくなります。これが不眠や慢性的な不安感の一因となるのです。

身体の歪みが招く慢性疲労。常に「緊張状態」にある脳のエネルギー源

身体が歪んでいると、本来なら骨(骨格)で支えるべき体重を、無理やり筋肉で支え続けなければなりません。これが、自覚のない「慢性疲労」を作り出し、精神的な余裕を奪っていきます。

● 無意識のエネルギー浪費

  • 姿勢が悪い人の筋肉は、寝ている間も完全にリラックスできていないことがあります。
  • 脳は常に筋肉のバランスを取るために高度な計算を強いられ、24時間「バックグラウンドで重い処理を実行しているパソコン」のような状態になります。
  • この計算負荷が脳を疲弊させ、感情のコントロールや判断力を低下させてしまうのです。

整形外科の診察室で姿勢を正すと、多くの方が「視界が明るくなった」「頭がスッキリした」と仰るのは、この過剰な計算負荷から脳が解放された瞬間だからです。

リハビリテーションで解きほぐす。姿勢のクセを正し、呼吸を取り戻す方法

歪んで固まった姿勢は、残念ながら「気をつける」という意識だけではなかなか治りません。長年のクセで固まった筋肉や筋膜を、専門的なリハビリテーションによって物理的に整える必要があります。

● リハビリテーションで行うアプローチ

  • 胸郭の可動域訓練:固まった肋骨周りの筋肉を理学療法士が揉みほぐし、深い呼吸ができる「器」を再建します。
  • インナーマッスルの再教育:外側の大きな筋肉ではなく、背骨を内側から支える深層筋を正しく使えるように訓練します。
  • 身体知覚の修正:鏡や感覚を利用して、本人が「真っ直ぐだ」と感じている歪んだ感覚を、正常な位置に修正していきます。

リハビリテーションは、単に筋肉を鍛える場所ではありません。自分の身体を最もストレスのない「ニュートラル」な状態に戻し、そこから世界を見るためのベースキャンプなのです。

メンタルケアとしての姿勢習慣。日々の動作を「整える」ためのヒント

最後に、メンタルを健やかに保つための、日常的な姿勢のコツをご紹介します。

● 「スマホ首」のリセット

スマホを1時間見たら、必ず「肩甲骨を後ろに寄せて、胸を張る」動作を10秒行ってください。これだけで脳への血流が一時的に改善されます。

● 椅子に深く、お尻を当てる

椅子の背もたれにお尻の付け根がしっかり当たるように座るだけで、骨盤が立ち、自然と脊柱が正しいカーブを描きます。

● 空を眺める習慣

私たちは下(地面やスマホ)ばかり見て生活しています。1日3回、意識的に空を見上げることで、首の前面の筋肉が伸び、脳に対して「解放」の信号が送られます。

姿勢を整えることは、自分の可能性を整えることです。身体という器が整えば、その中に宿る心も自ずと穏やかに、そして力強くなっていくものです。「なんだか気分が重いな」と感じたら、まずは整形外科のクリニックを訪ねてみてください。

参考文献

1. 日本整形外科学会 「姿勢と健康の関連に関する調査報告」
2. 日本心身医学会 「身体的姿勢が感情調節におよぼす影響」
3. 日本理学療法士協会 「呼吸機能と姿勢の関係性についての臨床知見」
4. Peper, E., et al. (2012). “How posture affects memory recall and mood.” Biofeedback.
5. 厚生労働省 「e-ヘルスネット:自律神経と生活習慣」



一覧へ