
ハイライト
「心が疲れた」と感じたとき、あなたは自分の姿勢を意識したことがありますか? 実は、猫背やストレートネックといった身体の歪みは、脳への血流や呼吸を阻害し、自律神経の乱れ、ひいてはメンタル不調の引き金となります。整形外科的な視点から、姿勢と心の健康の深い繋がりを解き明かし、リハビリテーションを通じた「軽やかな自分」への整え方を詳しく解説します。
目次
なぜ「姿勢」が「心」を左右するのか。身体とメンタルの双方向な関係

昔から「胸を張って生きる」という言葉があるように、姿勢は人の精神状態を雄弁に物語ります。しかし、近年ではこれが単なる比喩ではなく、医学的にも姿勢が脳や心にダイレクトに影響を与えることがわかってきました。整形外科を受診される患者様の中には、肩こりや腰痛だけでなく、「何となく気分が晴れない」「やる気が出ない」といった不調を同時に抱えている方が非常に多くいらっしゃいます。
● 脳へのフィードバック
- 私たちの脳は、身体の各部位からの情報を常に受け取っています。
- うつむき加減で背中を丸めている姿勢は、脳に対して「今、自分は自信がない、あるいは落ち込んでいる」という偽の信号を送ってしまいます。
- 逆に、背筋を伸ばし、顔を上げるだけで、脳内ではポジティブなホルモン(セロトニンなど)が分泌されやすくなるという研究結果も報告されています。
「心が形を作る」だけでなく、「形(姿勢)が心を作る」という視点を持つことが、メンタルケアの新しい突破口になります。
脳が酸欠状態に?猫背による肺活量低下が自律神経に与えるダメージ

姿勢の崩れがメンタルに与える最大の物理的要因は「呼吸」の質の低下です。特に猫背の状態は、解剖学的に見て非常に効率の悪い身体環境を作り出します。
● 肺活量の低下と酸欠
- 背中が丸まると、肋骨(胸郭)の動きが制限され、肺が十分に膨らむスペースが失われます。
- これにより呼吸が浅くなり、結果として血液中の酸素濃度が低下します。
- 脳は体重のわずか2%程度の重さしかありませんが、体全体の酸素の約20%を消費する「大食漢」です。酸素不足は脳の機能を鈍らせ、イライラや集中力の欠如を招きます。
● 自律神経への負担
浅く速い呼吸は、交感神経(闘争と逃走の神経)を常に優位にさせます。本来、リラックスしたい時でも身体が「緊急事態」だと誤解し、自律神経が休まらなくなります。これが不眠や慢性的な不安感の一因となるのです。
身体の歪みが招く慢性疲労。常に「緊張状態」にある脳のエネルギー源