コラム・ブログ

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2026年2月8日

合わない靴が膝・腰を壊す。足の健康を守る靴選びとインソールの役割

ハイライト

「おしゃれは足元から」と言いますが、健康もまた足元から始まります。膝の痛みや腰痛の原因が、実は毎日履いている「靴」にあることをご存知でしょうか。整形外科医が教える、身体の土台を守るための正しい靴選びと、医療用インソール(足底板)の効果について解説します。

目次

足はビルの基礎工事。崩れれば全身が歪むメカニズム

その腰痛、靴が原因かも? サイズ選びの落とし穴

日本人の多くは、「脱ぎ履きしやすいから」という理由で、実際の足のサイズよりも大きすぎる靴を選んでいる傾向があります。
ブカブカの靴を履くと、無意識のうちに脱げないように足の指で踏ん張ったり、引きずりながら歩いたりする「悪い癖」がつきます。これが足底筋膜炎や外反母趾、ひいては慢性的な腰痛の隠れた原因となっているケースが非常に多いのです。

● 正しいサイズとは

靴底の減り方で分かる! あなたの「歩き方」診断

ご自身のよく履く靴の底を見てみてください。減り方によって、足のトラブルや将来のリスクが見えてきます。

● パターン別診断

  • 理想的:カカトの少し外側から着地し、親指の付け根で蹴り出すため、カカトの外側とつま先の内側が均等に減っている。
  • 外側ばかり減る(O脚傾向):膝の内側に負担がかかりやすく、変形性膝関節症のリスクが高い状態。
  • 内側ばかり減る(X脚・扁平足傾向):足のアーチが潰れており、疲れやすく、外反母趾になりやすい状態。
  • 左右で減り方が違う:骨盤の歪みや脚長差がある可能性があり、腰痛の原因になります。

良い靴の条件とは? 「カカト」と「捨て寸」が命

整形外科的な視点で「良い靴」を選ぶ際のポイントは、デザインよりも機能性、特に以下の3点です。

1. カカト(ヒールカウンター)が硬くしっかりしている

カカトの骨を左右からガッチリ支えてくれるものがベストです。指で押してペコペコ凹むような柔らかい靴は、足のグラつきを止められず、疲れの原因になります。

2. 靴のねじれ剛性がある

雑巾絞りのように靴をねじったとき、適度な抵抗があるものが良い靴です。柔らかすぎる靴は、着地したときの衝撃を吸収できず、膝への負担を増やします。

3. つま先が反り上がっている(トゥスプリング)

つまずき防止のために、つま先が少し上を向いているものを選びましょう。

オーダーメイドの医療用インソール(足底板)という治療法

市販の靴ではどうしても足に合わない、あるいはすでに膝や腰に痛みがある場合、整形外科では「足底装具(インソール)」による治療を行います。
これは単なる中敷きではありません。医師の処方のもと、義肢装具士が個々の足の形や歩き方の癖に合わせて作成する、精密な医療器具です。

● インソールのリハビリテーション効果

  • 崩れたアーチ(偏平足など)を持ち上げ、足本来のバネ機能を回復させる。
  • O脚やX脚による膝への偏った荷重を修正し、関節を守る。
  • タコや魚の目ができる部分の圧力を分散させる。

「魔法の靴」はありませんが、「自分専用のインソール」で今ある靴を魔法の靴に変えることは可能です。足元の不調を感じたら、靴を買い換える前に一度、整形外科で足の診断を受けてみてはいかがでしょうか。

参考文献

1. 日本靴医学会 「靴の医学」
2. 日本フットケア・足病医学会 「足病変とフットケア」
3. McPoil, T. G., et al. (2008). “Heel pain—plantar fasciitis: clinical practice guidelines.” Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy.
4. 厚生労働省 「足元の健康と靴選び」
5. 日本義肢装具学会 「足底装具の適応と効果」

 



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