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2026年3月5日

子供が急に腕を痛がって動かさない!「肘内障」の原因と親が知っておくべき対処法

ハイライト

小さなお子さんと手をつないで歩いているとき、急に子どもが泣き出して腕をだらんと下げ、動かさなくなってしまった。骨折かもしれないとパニックになる前に知っておきたいのが「肘内障(ちゅうないしょう)」です。これは子どもの肘の関節が外れかかってしまう状態で、適切な処置を受ければすぐに元通りになります。本記事では、肘内障のサインと原因、親が取るべき正しい対処法について分かりやすく解説します。

目次

腕をだらんと下げて動かさない「肘内障」のサイン

元気よく遊んでいたはずのお子さんが、急に火がついたように泣き出し、片方の腕を「だらん」と下げたまま全く動かそうとしない。万歳をさせようとしても痛がって手を挙げず、おもちゃを差し出しても痛い方の腕を使おうとしない……。
子育て中の親御さんなら、「もしかして骨を折ってしまったのでは!?」と血の気が引く瞬間かもしれません。

しかし、このような症状を見せたとき、整形外科で最もよく見られるのが「肘内障(ちゅうないしょう)」という怪我です。とくに1歳から5歳くらいの小さなお子さんに非常に多く発症します。

お子さんは肘をわずかに曲げた状態でお腹の前にくっつけるような姿勢をとり、その腕を誰かに触られることを極端に嫌がります。しかし、腫れや内出血などは見られないのが特徴です。

なぜ子供の肘ははずれやすいのか? その原因とメカニズム

肘内障とは、簡単に言うと「肘の関節が外れかかっている(亜脱臼)」状態のことです。
人間の肘の関節は、腕の骨と、その骨を束ねている輪っか状の靭帯(橈骨輪状靭帯:とうこつりんじょうじんたい)によって支えられています。

大人の場合、骨の発達が完了しており、この靭帯も骨にしっかりと固定されています。しかし、5歳くらいまでの小さなお子さんは、骨や関節がまだ未発達で柔らかく、輪っか状の靭帯も緩い状態です。そのため、腕を強い力で引っ張られたりした衝撃で、骨の一部がこの靭帯の輪っかからスポッと抜けかかってしまうのです。

骨と靭帯がズレて引っかかっている状態なので、腕を動かそうとするたびに痛みが生じ、子どもは本能的に腕を動かさなくなります。

こんな動作に注意! 日常生活に潜む引き金

肘内障は、日常の些細な動作がきっかけで起こります。親御さんが「乱暴に引っ張ったつもりはないのに」と驚かれることも少なくありません。以下のようなシチュエーションには注意が必要です。

  • 手をつないで歩いているとき

子どもが急に転びそうになったり、違う方向へ走り出そうとしたりしたとき、親がとっさに子どもの手を強く引っ張ってしまうことで発生します。これが最も多い原因です。

  • 遊びの中で

「高い高い」をするために腕を引っ張って持ち上げたり、子どもと手をつないでグルグルと振り回す遊び(いわゆる飛行機ごっこなど)をした際に、遠心力と引っ張る力が加わって外れてしまうことがあります。

  • 着替えのとき

シャツや上着の袖に腕を通す際、無理に腕を引っ張ったり、ひねったりした拍子に起こることもあります。また、寝返りを打った際に自分の体の下敷きになった腕を無理に引き抜こうとして外れるケースもあります。

慌てないための正しい対処法とやってはいけないこと

もしお子さんが肘内障のような症状を見せたら、まずは慌てず落ち着いて行動しましょう。

  • 絶対にやってはいけないこと

親御さんが自己流で「関節を入れよう」として、無理に腕を引っ張ったり、曲げ伸ばししたりするのは絶対にやめてください。肘内障ではなく、鎖骨や腕の骨折である可能性もゼロではありません。無理に動かすことで、靭帯や神経を傷つけ、症状を悪化させてしまう恐れがあります。

  • 正しい対処法

腕を無理に動かさず、だらんと下げた楽な姿勢のまま、速やかに整形外科を受診してください。
クリニックでは、医師が丁寧に触診し、骨折などの疑いがないかを判断した上で「徒手整復(としゅせいふく)」と呼ばれる処置を行います。これは、医師がリラックスした子どもの腕を持ち、特定の方向に少し回しながら曲げることで、数秒でズレた靭帯を元の位置に戻す治療です。「コクッ」という小さなクリック音とともに正しい位置に収まると、嘘のように痛みが消え、数分後には自分から腕を使って遊び始めるようになります。

再発を防ぐための関わり方とリハビリテーションの考え方

肘内障は整復されればすぐに治る怪我ですが、一度経験した子どもは関節や靭帯が緩くなりやすいため、小学校に上がるまでの間は「再発しやすい(クセになりやすい)」という特徴があります。

そのため、日常の関わり方において少しの工夫が必要です。

  • 急に手を引くときは「手首や腕」ではなく、「二の腕(肘より上の部分)や脇の下」を持つようにする。
  • 腕を引っ張って持ち上げる「高い高い」の遊びは控える。

また、子どもが転びそうになったときに手が出ないなど、運動機能の発達に不安がある場合は、当院の理学療法士にご相談ください。リハビリテーションの観点から、年齢に応じた適切な遊びを通して、体幹のバランス感覚を養い、転倒しにくい身体の使い方(受け身の取り方など)を身につけるためのアドバイスを行うことができます。

「腕を動かさない」と気づいたら、自己判断せずにいつでも早めに当院へお越しください。適切な処置と優しいケアで、お子様の元気な笑顔を取り戻します。

参考文献

日本小児科学会「こどもの救急」
日本整形外科学会「肘内障」



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