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2026年2月12日

寝ている間に体は治る。良質な睡眠がリハビリテーション効果を高める理由

ハイライト

「いくらリハビリに通っても痛みが取れない」そんな悩みをお持ちの方は、もしかすると「睡眠」に問題があるかもしれません。睡眠は単なる休息ではなく、傷ついた組織を修復する重要な治療時間です。枕の選び方や寝返りの重要性など、整形外科医が教える「治すための睡眠法」について解説します。

目次

睡眠は最強の治療薬。成長ホルモンと組織修復のメカニズム

私たちは人生の3分の1を睡眠に費やしますが、この時間は決して無駄ではありません。寝ている間、特に深い睡眠(ノンレム睡眠)のときに、脳下垂体から「成長ホルモン」が大量に分泌されています。
このホルモンは子供の身長を伸ばすだけでなく、大人にとっても以下の重要な働きをしています。

つまり、リハビリテーションで運動をした後、その効果を体に定着させ、組織を強く作り変えるのは睡眠中の働きなのです。睡眠不足は、せっかくの治療効果を半減させてしまう行為と言えます。

「寝返り」が打てないと体は壊れる。腰痛とマットレスの関係

朝起きたときに腰が痛いと感じる場合、それは「寝返り」が足りていない証拠かもしれません。
健康な人は一晩に20回以上寝返りを打ちます。これにより、体重がかかる部分を分散させ、血液の循環を促し、筋肉が固まるのを防いでいます。

● 良いマットレスの条件

朝起きると首が痛い? あなたに合った枕の絶対条件

「高い枕が好き」「枕なしが良い」など好みは様々ですが、医学的に正しい枕には明確な基準があります。それは、「立っているときの姿勢をそのまま横に倒した状態」を保てることです。

● 理想の枕高

  • 仰向け:首の骨(頚椎)が自然なS字カーブを描き、目線が真上よりやや下(足元側)を向く高さ。高すぎると気道が圧迫され、いびきの原因にもなります。
  • 横向き:首から背骨が一直線になる高さ。肩幅の分だけ高さが必要になるため、仰向けよりも高めの設定が必要です。

最近では、中身の量を調節して「仰向け用」と「横向き用」の高さを使い分けられる枕も登場しています。

痛くて眠れない負のスパイラル。不眠と痛みの深い関係

慢性的な痛みを持つ患者さんの多くが、不眠を訴えます。「痛いから眠れない」のはもちろんですが、実は「眠れないから痛みに過敏になる」という逆のメカニズムも存在します。
睡眠不足が続くと、脳の痛みを抑制する機能(下行性疼痛抑制系)が低下し、普段なら気にならない程度の刺激でも強い痛みとして感じてしまうのです。

  • この「負のスパイラル」を断ち切るためには、痛み止めによるコントロールと同時に、睡眠環境の改善や、リラックスして入眠するための工夫が不可欠です。

寝る前のリハビリ習慣。副交感神経を優位にするストレッチ

良質な睡眠を得るためには、寝る1時間前から脳と体をリラックスモード(副交感神経優位)に切り替える必要があります。

● おすすめの入眠儀式

  • 38〜40度のぬるめのお湯にゆっくり浸かる。
  • スマホやテレビの強い光を目に入れない。
  • 軽いストレッチを行う:激しい運動は交感神経を刺激してしまうためNGです。深呼吸をしながら、手足の力を抜くようなゆったりとしたストレッチや、筋肉の緊張をふっと解く「筋弛緩法」が効果的です。

明日、元気に動ける体を作るために。今夜は少し早めに布団に入り、自分の体を労ってあげましょう。

参考文献

1. 厚生労働省 「健康づくりのための睡眠指針 2014」
2. 日本睡眠学会 「睡眠障害の診断・治療ガイドライン」
3. Finan, P. H., et al. (2013). “The association of sleep and pain: an update and a path forward.” The Journal of Pain.
4. 日本理学療法士協会 「睡眠と理学療法」
5. 西野精治 「スタンフォード式 最高の睡眠」



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