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2026年1月27日

成長痛か、それともスポーツ障害か?見分け方と早期対応

ハイライト

子供が「足が痛い」と訴えた時、多くの親御さんは「成長痛かな?」と考えがちです。しかし、中には放置すると危険な「スポーツ障害」が隠れていることも。成長痛とスポーツ障害の決定的な違い、家庭での見分け方のポイント、そして適切なリハビリテーションの重要性について、整形外科の専門知識を交えて詳しく解説します。

目次

意外と知らない「成長痛」の本当の正体。医学的な定義と特徴

夕方から夜にかけて、お子様が突然「足が痛い」と泣き出す。しかし、朝になるとケロッとして元気に走り回っている。このような経験をされた親御様は多いのではないでしょうか。一般的に「成長痛」と呼ばれているこの現象は、実は骨が伸びることで痛みが出るわけではありません。

医学的な視点では、成長痛は以下のような特徴を持つ「非特許的な痛み」と定義されます。

成長痛の原因は完全には解明されていませんが、日中の活動による筋肉の疲労や、精神的なストレス、あるいはまだ未発達な骨格に対して筋肉が一時的に緊張することなどが関連していると考えられています。親御様が優しくさすってあげたり、安心させてあげたりすることで痛みが和らぐことが多いのも特徴の一つです。

放置は厳禁!「スポーツ障害」が生じるメカニズムと代表的な疾患

 

成長痛と混同されやすいのが、スポーツなどの過度な動きによって起こる「スポーツ障害(オーバーユース症候群)」です。こちらは、その名の通り身体を使いすぎること(使い方の間違い)で特定の部位に慢性的な炎症や損傷が起きている状態であり、適切な治療や指導が必要です。

スポーツ障害が発生する仕組み
成長期の子供の骨には、端の方に「成長軟骨(骨端線)」と呼ばれる、柔らかくて成長の源となる部分があります。この部分は非常に繊細で、周囲の筋肉や腱から繰り返し強い力が加わると、剥離したり炎症を起こしたりしやすいのです。

代表的なスポーツ障害

これらの障害は、成長痛とは異なり「安静にしていても痛みが続く」「動かすと常に痛い」といった特徴があります。放置すると将来的に関節の変形や、激しい痛みによる競技断念に繋がる恐れがあるため、見極めが極めて重要です。

親ができるセルフ診断。痛みが出る時間帯や場所による見分け方

「これは成長痛?それとも怪我?」と迷った時に役立つ、家庭でのチェックポイントを整理しました。

● 成長痛の可能性が高いサイン

  • 痛むのが夜だけで、朝には治っている。
  • 本人が指で指し示す場所が、日によってあちこち変わる。
  • お父さんやお母さんにマッサージしてもらうと安心して眠れる。
  • 激しい運動をしていない日でも痛むことがある。

● スポーツ障害(受診が必要)の可能性が高いサイン

  • 「ここが痛い」という場所が一点に決まっている
  • 運動を開始すると痛み出し、運動中もずっと痛い。
  • 患部を指で押すと鋭い痛み(圧痛)がある。
  • 左右を比べた時に、痛い方だけが腫れている、または硬くなっている。
  • 痛みのために、歩き方や走り方が不自然になっている(立っている姿勢が崩れている)。

もし、スポーツ障害のサインが一つでも当てはまる場合は、早めに整形外科クリニックを受診することをお勧めします。早期発見こそが、最短での復帰と重症化予防の唯一の手段です。

早期診断とリハビリテーションが未来の運動能力を守る理由

整形外科を受診した際、私たちはレントゲンや超音波(エコー)を用いて、骨や軟骨の状態を詳細に確認します。特にエコー検査は、レントゲンには写らない成長軟骨のミリ単位の変化や炎症を捉えることができるため、スポーツ障害の診断に非常に有効です。

診断がついた後、重要な役割を担うのが「リハビリテーション」です。私たちは単に「休んでください」と言うだけではありません。

リハビリテーションで行うこと

  • 原因の究明:なぜその場所が痛くなったのか。フォームの乱れや、特定の筋肉の硬さを見つけ出します。
  • 身体の柔軟性の改善:硬くなった筋肉を理学療法士が調整し、骨にかかる負担を軽減します。
  • 正しい使い方の指導:関節を保護しつつ、効率的に動けるようなトレーニングを行います。

リハビリテーションは、怪我を治す過程であると同時に、お子様の身体能力を最大限に引き出すための教育でもあります。正しい身体の使い方を今のうちに身に付けることは、将来的にアスリートを目指す上でも、生涯健康に過ごす上でも、かけがえのない財産となります。

家庭でできる初期対応の実践。安静と適切なストレッチの考え方

お子様が足を痛めた際、クリニックを受診するまでの間に家庭でできる最良のケアについてお伝えします。

適切な休息
痛みがスポーツ障害の疑いがある場合は、無理をして続けさせてはいけません。「これくらい我慢して」という励ましが、症状を悪化させることもあります。まずは数日間、その動作(ジャンプや投球など)を控えて様子を見ましょう。

冷やすか温めるか

  • 運動直後で熱を持っている場合:15分程度アイシングを行い、炎症を抑えます。
  • 夜間に成長痛のように痛む場合:蒸しタオルやお風呂で温め、リラックスさせることが有効です。

ストレッチの注意
痛みが強い時に、硬い場所を無理に引き伸ばすのは逆効果です。理学療法士から指導を受けた「痛くない範囲のストレッチ」を継続し、身体全体の柔軟性を高めることが大切です。

子供の「足が痛い」という言葉の裏には、様々なメッセージが隠されています。それが一時的な成長の徴候なのか、それとも本格的なケアを必要とする身体の悲鳴なのか。私たち整形外科の専門家は、親御様と共にそのメッセージを受け止め、お子様の未来を力強くサポートします。少しでも不安を感じたら、迷わず私たちの扉を叩いてください。

参考文献

1. 日本整形外科学会 「スポーツ障害:オスグッド病・シーバー病」解説資料
2. 小児整形外科学会 「成長痛の診断と対応ガイドライン」
3. 日本理学療法士学会 「成長期アスリートに対するリハビリテーション戦略」
4. Adirim, T. A., & Cheng, T. L. (2003). “Overview of injuries in the young athlete.” Sports medicine.
5. 日本スポーツ協会 「子供のスポーツ障害を防ぐための指導指針」



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