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2026年2月14日

抱っこやスマホで酷使する手首。「ドケルバン病」の予防とセルフケア

ハイライト

赤ちゃんの抱っこやスマートフォンの操作で、親指の付け根に激痛が走ることはありませんか? それは「ドケルバン病」という腱鞘炎かもしれません。産後のママだけでなく、現代人に急増している手首のトラブル。その原因と、自分でできるチェック法、悪化を防ぐケアについて解説します。

目次

親指の使いすぎが招く悲劇。ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)とは

手首の親指側には、指を広げたり伸ばしたりするための2本の腱(短母指伸筋腱あ・長母指外転筋腱)が通っています。この腱が通るトンネル(腱鞘)が、使いすぎによる摩擦で炎症を起こし、腫れて厚くなった状態を「ドケルバン病」と呼びます。
腱が腫れたトンネルの中を無理矢理通ろうとするため、親指を動かすたびに強い痛みが生じます。

痛みのレベルを診断。「フィンケルシュタインテスト」でセルフチェック

特別な器具を使わずに、ドケルバン病の可能性をチェックする方法があります。

● 手順
1. 親指を内側に入れて、他の4本の指で握り拳を作ります。
2. 肘を伸ばしたまま、手首を小指側(下方向)にゆっくりと曲げます。

このとき、手首の親指側に鋭い痛みが走る場合は、ドケルバン病の疑いが濃厚です。無理に行うと症状が悪化するため、痛みが出た時点ですぐに中止してください。

なぜ産後のママに多い? ホルモンバランスと手首の意外な関係

ドケルバン病は、実は「妊娠期〜産後」の女性に圧倒的に多く発症します。これには2つの理由があります。

1. 物理的な負担

  • 首の座らない赤ちゃんの頭を支えるとき、手のひらを大きく広げて親指に力を入れる動作(L字型に開く)が長時間続きます。これは腱にとって最も過酷な体勢です。

2. ホルモンの影響

  • 産後は「プロゲステロン」というホルモンの影響で、全身の組織が水分を含みやすく、むくみやすくなります。腱鞘もむくんで狭くなるため、少しの摩擦でも炎症が起きやすくなるのです。

手術を避けるために。安静の工夫と装具(サポーター)の活用

治療の基本は「局所の安静」ですが、育児や家事を完全に休むことは難しいでしょう。そこで、整形外科では専用の装具(サポーター)やテーピングを処方します。

● 正しいサポーターの選び方
市販の手首用サポーターでは不十分な場合があります。ドケルバン病専用の、「親指と手首を同時に固定できる」タイプが必要です。これをつけることで、無意識の動きを制限し、腱の休息時間を確保します。
また、痛みが強い場合はステロイド注射(腱鞘内注射)を行うことで、劇的に炎症を抑えることができます。

痛みが落ち着いたら始めよう。再発を防ぐ腱のリハビリテーション

炎症が引いた後、すぐに元通りの過酷な使い方を再開すれば、必ず再発します。ここで重要なのがリハビリテーションです。

● ストレッチと筋力強化

  • 手首のストレッチ:手のひらを前に向け、反対の手で指を反らせて前腕の筋肉を伸ばします。
  • 拮抗筋の強化:親指を「閉じる」筋肉や手首を「返す」筋肉を鍛え、特定の腱ばかりに負担がかからないようにバランスを整えます。

スマートフォンの片手操作も、親指にとっては「数百回のスクワット」と同じ負担です。両手で持つ、机に置くなどの工夫をし、大切な手首を労ってあげてください。

参考文献

1. 日本整形外科学会 「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」
2. Ilyas, A. M., et al. (2007). “De Quervain tenosynovitis of the wrist.” Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons.
3. 日本手外科学会 「手外科シリーズ:腱鞘炎」
4. Wolf, J. M., et al. (2009). “Male/female differences in musculoskeletal disease.” current opinion in orthopaedics. (Hormonal influence section)
5. リハビリテーション医学大辞典 「手関節・手指の理学療法」



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