コラム・ブログ

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2025年11月24日

服薬が転倒リスクを上げる?—整形外科医が知っておくべき薬剤の影響

ハイライト
高齢者の転倒は、筋力やバランスの問題だけが原因ではなく、「薬の副作用」が引き金になることも少なくありません。

眠気、ふらつき、血圧低下、注意力低下など、薬剤がもたらす“隠れたリスク”を理解し、適切に調整することが転倒予防につながります。

目次

なぜ薬で転倒が増える?──高齢者の身体特性と薬物動態

代謝・排泄能力の低下

結果として、わずかな量の薬でも効きすぎることがあります。

中枢神経の感受性が上昇

高齢者は、眠気・ふらつき・判断力低下などの中枢副作用が出やすく、転倒リスクが増加します1)。

多剤服用(ポリファーマシー)

複数の薬剤を服用することで、

などが起こり、転倒リスクが増加します。

転倒リスクを上げる薬① 中枢神経系薬(睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬)

睡眠薬(ベンゾジアゼピン系・非ベンゾ系)

眠気・注意力低下・ふらつきが出やすく、

☑️ 夜中のトイレでの転倒

☑️ 朝のふらつき

が典型例です。

リスクのある薬の例:

リルマザホン

ブロチゾラム

ゾルピデム

※長時間作用型は特にリスクが高い。

抗不安薬

☑️ 眠気

☑️ 反応速度低下

☑️ 脱力感

が生じやすく、日中の転倒が増えます。

抗うつ薬

特に三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)は

☑️ 立ちくらみ

☑️ ふらつき

☑️ 過度の鎮静

が起こることがあります。

抗精神病薬

認知症周辺症状に使用されることがありますが、

☑️ 鎮静

☑️ 筋緊張低下

☑️ 姿勢反射の低下

などが生じ、転倒リスクが増加します。

転倒リスクを上げる薬② 循環器薬(降圧薬・利尿薬・抗不整脈薬など)

降圧薬

☑️ α遮断薬

☑️ β遮断薬

☑️ Ca拮抗薬

☑️ ACE阻害薬

いずれも過度な血圧低下が問題となります。

“立ち上がった瞬間にフラッとする”という訴えは典型的。

利尿薬

脱水や電解質異常が起こると、

☑️ めまい

☑️ 筋力低下

☑️ 意識の低下

が起こり、転倒につながります。

抗不整脈薬

心拍数の低下や不整脈により、

☑️ 意識が遠のく

☑️ ふらつく

などの症状が起こり得ます。

糖尿病薬(低血糖)

インスリンなどでは低血糖による

☑️ 意識低下

☑️ ふらつき

☑️ 震え

が転倒のリスクになります。

その他のリスク薬──鎮痛薬・筋弛緩薬・複数薬剤併用

  • 鎮痛薬(オピオイド系)

強い眠気

ふらつき

注意力低下

が起きやすく、高齢者では特に慎重投与が必要です。

  • 筋弛緩薬

脱力

ふらつき

運動協調性の低下

が転倒につながります。

  • 抗ヒスタミン薬

市販薬でも眠気を生じるため、軽視できません。

  • ポリファーマシー(多剤併用)

薬が3剤以上になると転倒リスクが急増するという報告があります3)。

作用が重複し、眠気やふらつきが増します。

整形外科クリニックでの関わり方──問診・服薬チェック・多職種連携

  • 服薬内容のチェック

睡眠薬

抗不安薬

降圧薬

糖尿病薬

他科からの処方薬

市販薬の使用

 

薬剤の種類・時間・増減歴まで確認します。

  • 転倒リスク評価

筋力

バランス

歩行速度

起立性低血圧

神経学的評価

自宅環境の確認

 

“薬剤によるリスク”と“身体機能の弱点”を統合的に判断します。

  • 他科医師・薬剤師との連携

必要に応じて減薬を相談

作用時間の調整

代替薬の提案

 

患者さんが安全に過ごせるよう、多職種でサポートします。

  • リハビリテーション

ふらつき改善のバランス訓練

筋力トレーニング

立ち上がり動作練習

歩行練習

 

を段階的に行います。

参考文献

  1. Leipzig RM, et al.: Drugs and falls in older people: a systematic review and meta-analysis. J Am Geriatr Soc. 47:  30–39. 1999.
  2. Woolcott JC, et al.: Meta-analysis of the impact of antihypertensive drugs on falls. J Am Geriatr Soc. 57:  176–183. 2009.
  3. Kojima G: Frailty and polypharmacy. Clin Geriatr Med. 35:  147–157. 2019.

 

 

 

 



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