コラム・ブログ

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2025年11月30日

転倒を防ぐための“家の工夫”—段差・照明・家具配置のポイント

ハイライト

高齢者の転倒は「筋力低下」だけでなく、家の環境の小さな危険が引き金になることが多くあります。

段差・照明・家具の配置を整えるだけで、転倒リスクは大きく下げられます。

本コラムでは、家庭内でできる安全対策をわかりやすく解説します。

目次

家の中で転倒が多い理由──「慣れた場所」が危険になる

高齢者の転倒の約7割は自宅内で起こると言われています1)。

理由は大きく以下の通りです。

家の中には、

・小さな段差

・敷物のめくれ

・電源コード

・物の置きっぱなし

などが多く、“見えてはいるが気づきにくい危険”があります。

・足の筋力低下

・視力の低下

・暗所での見えにくさ

・歩行スピードの低下

・反応速度の低下

これらが重なり、小さな段差でも転倒につながってしまいます。

自宅では油断してしまいがちで、

・電気をつけず歩く

・段差の存在を忘れる

・布団やスリッパを踏んで滑る

などの行動が起きやすくなります。

危険ポイント① 段差──解消・見える化・手すり

小さな段差でも危険

2〜3cmの段差でもつまずくことがあります。

段差は“見えにくいこと”が転倒の原因になるため、以下の工夫が重要です。

段差の「解消」

段差の「見える化」

視覚的にわかりやすくすることが重要です。

■ ④ 手すりの設置

“つかまる場所がある”だけで転倒リスクは大きく低下します2)。

危険ポイント② 照明──暗さ・影・メリハリが転倒の原因

夜間のトイレや、夕方に照明をつけず歩くことが転倒の典型例です。

暗い廊下・階段は危険

照度不足は、見えているつもりでも段差や物が認識できません。

特に階段は“影”が誤解を生みやすい場所。

改善のポイント

  • 足元灯(フットライト)を設置
  • 人感センサーつき照明
  • 階段の明暗差をなくす
  • 白色系の明るい照明に変更

夜間のトイレ動線を照らす

  • 廊下にセンサーライト
  • ベッド周りに間接照明
  • ドアの開閉で自動点灯

夜間の「暗がり移動」をなくすだけで転倒リスクは大幅に減少します。

危険ポイント③ 家具配置──動線・床・コード類の工夫

家具や家のレイアウトも転倒リスクに直結します。

動線を「広く・まっすぐ」に

  • 通路幅を広げる
  • 家具の角を避ける
  • 不要な家具は減らす

杖や歩行器を使う方は、特に通路確保が重要。

床の危険を減らす

  • 滑りやすいマットを撤去
  • つまずきやすい敷物は固定
  • 浴室・脱衣所に滑り止めシートを設置

小さなラグの“めくれ”は転倒の典型原因です。

コード・配線の整理

  • 電源コードは壁沿いにまとめる
  • ケーブルカバーで保護
  • 床に伸ばさない

“またいで通る”動作は転倒につながるため避けるべきです。

収納位置を調整

  • よく使う物は「腰〜胸の高さ」に
  • 高所・床からの取り出しを減らす

無理な動作は転倒につながります。

整形外科クリニックでの関わり方──評価・住宅指導・リハビリ

整形外科では、家庭内転倒の予防に対して以下の観点から関わります。

身体機能の評価

  • 筋力(下肢・体幹)
  • バランス能力
  • 関節可動域
  • 標準化された転倒リスク検査

(TUGテスト、5回立ち上がりテストなど)

身体のどの弱点が転倒につながっているのかを明確にします。

家庭環境のチェック

必要に応じて、

  • 住宅環境チェックリスト
  • 動線確認
  • ステップ・手すりの提案
  • マット・照明の改善提案

など具体的なアドバイスを行います。

リハビリテーション

  • 下肢筋力トレーニング
  • 足首・股関節の可動域改善
  • 立位・歩行バランス訓練
  • 反応速度トレーニング
  • 生活動作練習(立ち上がり・方向転換)

「家の工夫」と「体の機能改善」を両輪で行うことが重要です。

介護保険・福祉用具の利用サポート

  • 手すり
  • 歩行器
  • ベッド周りの補助具

必要に応じて専門職と連携し、安全な生活環境を整えます。

参考文献

  1. Rubenstein LZ: Falls in older people: epidemiology, risk factors and strategies for prevention. Age Ageing. 35-S2: ii37–ii41. 2006.
  2. Gillespie LD, et al.: Interventions for preventing falls in older people living in the community. Cochrane Database Syst Rev. 2012;(9):CD007146.

 

 

 

 



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