コラム・ブログ

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2026年3月20日

野球やテニスを頑張る子供を守る。「投球障害肩・野球肘」のサインと休ませる勇気

ハイライト

野球やテニス、バレーボールなど、腕を大きく振るスポーツに打ち込む子どもたち。大好きなスポーツを長く楽しんでほしいと願う親御さんにとって、一番恐ろしいのが「使いすぎ(オーバーユース)」による肩や肘の怪我です。子どもの骨や関節はまだ成長途中のため非常にデリケート。「ちょっと痛いだけ」と練習を続けてしまうと、将来に修復不可能なダメージを残すことがあります。本記事では、投球障害のサインと、休ませる勇気、そして正しい身体の使い方を学ぶリハビリテーションの重要性を解説します。

目次

子ども特有の骨の弱点「成長軟骨」とは

スポーツに励む子どもたちの身体は、大人をそのまま小さくしたものではありません。とくに骨や関節に関しては「成長中である」という大きな違いがあります。

子どもの骨の両端(関節の近く)には、「骨端線(こったんせん)」と呼ばれる軟骨の部分があります。この軟骨細胞が増殖することで骨が長く伸び、身長が高くなっていきます。

この成長軟骨は、将来骨になるための組織ですので、大人の硬い骨と比べると「引っ張られる力」や「ぶつかる衝撃」に対して非常に弱く、傷つきやすいという弱点を持っています。成長期の子どもの怪我が、大人の怪我と全く異なるアプローチを必要とする理由がまさにここにあります。

ボールを投げると痛い!「野球肘・野球肩」の正体

野球の投球動作や、テニスのサーブ、バレーボールのスパイクなど、腕を頭より高く上げて強く振り下ろす動作を繰り返すことで起きる肩や肘の痛みを、総称して「投球障害(野球肩・野球肘)」と呼びます。

 

親が見逃してはいけないフォームの変化と痛みのサイン

子どもは「レギュラーから外されたくない」「チームに迷惑をかけたくない」という思いから、痛みを隠してプレーを続けてしまうことが少なくありません。だからこそ、親御さんや指導者がいち早くサインに気付く必要があります。

以下のような様子が見られたら、危険信号です。

  • ボールを投げた後に、肩や肘を気にしてさする
  • 今まで綺麗だった投球フォームが急に変わり、肘が下がってきた
  • 全力でボールを投げられず、遠投の距離が落ちた
  • 日常生活で、重いかばんを持ったりドアノブを回したりするだけで肘を痛がる

「休むこと」も練習のうち。投球制限の考え方

投球障害の治療において何よりも重要なのは、「局所を休ませること(ノースロー)」です。

「少し痛いくらいなら気合いで治せ」というひと昔前の考え方は、子どもの将来のスポーツ人生を奪いかねない非常に危険な思想です。軟骨のダメージが進行してしまうと、手術が必要になったり、最悪の場合は大人になっても腕が真っ直ぐに伸びなくなったり、痛みが残ったりして競技への復帰が絶望的になることもあります。

現在、多くの団体で子どもの「球数制限」や「練習日数の制限」が設けられています。痛みが出たときは焦らずにストップをかけ、医師の診断を仰ぐ「休ませる勇気」を持つことが、親御さんの最も大切な役目です。

全身の連動で負担を減らすリハビリテーション

では、肩や肘が痛い間、子どもはずっと休んでいなければならないのでしょうか。実はそうではありません。投球障害を起こす子どもの多くは、「肩や肘への負担が大きすぎる悪いフォーム」で活動しています。

当院のリハビリテーションでは、投球を休ませている期間を利用して、「肩や肘に頼らない、全身を使ったしなやかな身体の使い方」を身につけるための指導を行います。

  • 股関節の柔軟性アップ:下半身のパワーを上半身に伝えるため、股関節を柔らかくします。
  • 胸郭(肋骨まわり)の可動性アップ:胸をしっかり張り、肩の負担を減らすストレッチを行います。
  • 体幹トレーニング:身体の軸を安定させ、ブレのないフォームを作ります。

肩や肘の痛みは、「身体の使い方が間違っているよ」というSOSのサインです。リハビリテーションを通してこのサインに真摯に向き合うことで、ケガをする前よりもさらに良いパフォーマンスを発揮できる選手へと成長することができます。お子様の将来を守るために、少しでも違和感があればすぐにご相談ください。

参考文献

・日本整形外科学会「野球肘」
・日本スポーツ少年団「スポーツ障害の予防と対策」



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