コラム・ブログ

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2026年1月22日

閉経後の女性を守る骨の健康管理。リハビリテーションで支える対策

ハイライト

閉経を迎えると、女性の身体では骨を守ってくれていたホルモンが急激に減少します。これにより骨粗鬆症のリスクが一気に高まりますが、決して恐れる必要はありません。正しい知識に基づいた食事と、専門的なリハビリテーションを取り入れることで、骨の減少を抑え、生涯元気に歩き続ける身体を維持することができます。大切な転換期に向けた骨の守り方を詳しく解説します。

目次

なぜ閉経後に骨が弱くなるのか?エストロゲン減少のメカニズム

女性にとって、閉経は身体の大きな大きな節目です。この時期、体内で最も劇的に変化するのが、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌量です。実はこのエストロゲン、単に生殖を司るだけでなく、女性の骨の健康を強力に守るガーディアン(守護神)としての役割を果たしています。

● 骨の再生サイクルとエストロゲン
私たちの骨は、常に新しい骨を作る「骨形成」と、古い骨を溶かして吸収する「骨吸収」を繰り返しています。

この急激な骨の流出は、閉経後約10年ほど続きます。この「骨の激変期」をいかにスマートに乗り切るかが、その後の人生の質(QOL)を決定づけると言っても過言ではありません。

「いつのまにか骨折」の恐怖。自覚症状がないからこそ怖い背骨の変形

骨粗鬆症が恐ろしいのは、骨折するまで全く「痛みがない」という点です。特に閉経後の女性に多いのが、背骨の「圧迫骨折」です。転んだわけでも、ぶつけたわけでもないのに、自分の体重に耐えきれなくなった背骨が少しずつ潰れていく現象、それが「いつのまにか骨折」です。

こんな症状に心当たりはありませんか?

背骨が一つ潰れると、その周囲の骨にも連鎖的に負担がかかり、次々と骨折が起きる「骨折ドミノ」を招くことがあります。これが姿勢の悪化だけでなく、内臓を圧迫して消化不良や逆流性食道炎を引き起こし、さらには心肺機能の低下にも繋がってしまうのです。だからこそ、痛みがなくても「骨が弱くなっている可能性」を想定した管理が必要となります。

正しい診断が第一歩。骨密度測定と血液検査で知る自分の現状

整形外科クリニックでの最初の仕事は、あなたの骨が今どのような状態にあるのかを、精密に評価することです。

クリニックで行う検査の重要性

  • DEXA法(デキサ法)による骨密度測定:最も信頼性の高い方法で、腰椎(腰の骨)や大腿骨(足の付け根)の密度を測定します
  • 血液検査:単にカルシウム量を見るだけでなく、骨が今どのくらいのスピードで壊されているのか(骨代謝マーカー)を調べます。

これにより、「食事だけで改善できるレベル」なのか、「すぐにお薬による治療が必要なレベル」なのかを明確に判断します。最近では、非常に効果の高い骨粗鬆症治療薬が登場しており、骨密度の低下を食い止めるだけでなく、積極的に増やしていくことも可能になっています。

リハビリテーションが防波堤になる。骨を強くし、転倒を徹底予防する戦略

骨粗鬆症の管理において、お薬と同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが「リハビリテーション」です。お薬が骨を材料から整えるなら、リハビリテーションは「骨が必要とされる環境」を整える作業です。

リハビリテーションで取り組む3つの柱

  • 骨を呼び覚ます負荷運動:骨を作る細胞は、物理的な衝撃や負荷を受けることで活性化します。理学療法士は、膝や腰に負担をかけすぎない範囲で、骨に最も効果的な「重力負荷」を与える運動プログラムを組みます。
  • 転倒をゼロにするバランス訓練:どれだけ骨が弱くても、転ばなければ骨折はしません。足首や股関節の柔軟性を高め、咄嗟の時に足が出る「反射神経」と「筋力」をリハビリテーションで鍛えます。
  • 姿勢の再教育:背骨への負担を減らすため、正しい姿勢を維持するための深層筋(インナーマッスル)を強化します。

整形外科のリハビリテーション室は、単に痛みを治す場所ではなく、あなたが将来車椅子や寝たきりになるリスクを徹底的に削ぎ落とす「未来の健康製作所」なのです。

今日からできる新習慣。食事の質を高め、一生歩ける足を育てるポイント

最後に、クリニックでの治療を支えるための、ご家庭でのヒントをご紹介します。

● 栄養のチームビルディング

  • カルシウム(小魚、乳製品):骨の材料になります。
  • ビタミンD(サケ、キノコ、日光浴):カルシウムの吸収を助けます。
  • ビタミンK(納豆、緑黄色野菜):吸収されたカルシウムを骨にピタッとくっつけます。
    これらをバランスよく摂ることが、最強の骨を作る秘訣です。

「貯筋」は「貯金」より裏切らない
骨を支えるのは筋肉です。特に太ももの前(大腿四頭筋)や、お尻の横(中殿筋)は、歩行時の安定性を左右する重要な筋肉です。これらは何歳からでも鍛えることができます。

閉経は、あなたの人生が「第二のステージ」に入る合図でもあります。これまでは家族や仕事のために尽くしてきた時間を、これからは「自分自身の身体のメンテナンス」に充ててみませんか。整形外科の私たちと共に、5年後、10年後、そして20年後も、自分の足で凛と立ち、笑顔で歩き続ける自分を準備していきましょう。あなたの健康な骨は、あなた自身の意思と行動によって守ることができるのです。

参考文献

1. 日本骨粗鬆症学会 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」
2. 日本産科婦人科学会 「更年期障害および閉経後の骨粗鬆症に対する手引き」
3. 日本理学療法士協会 「高齢者の骨折病態と理学療法」
4. Riggs, B. L., et al. (1998). “A unitary model for involutional osteoporosis: estrogen deficiency causes both type I and type II osteoporosis in postmenopausal women and men.” Journal of Bone and Mineral Research.
5. 厚生労働省 「e-ヘルスネット:骨粗鬆症の予防のための食生活」



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