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2026年1月4日

20代からの警鐘。無理なダイエットが招く「若年性骨粗鬆症」

ハイライト

骨粗鬆症は高齢者の病気。そんな思い込みが、現代の若い女性の健康を脅かしています。無理なダイエットや偏った食生活は、骨の貯金期間である20代に深刻なダメージを与え、数年後の骨折や姿勢の変化を招きます。一生を支える骨を今から育てるための秘訣と、専門的なリハビリテーションが果たす役割について解説します。

目次

なぜ20代が重要なのか?一生の骨密度が決まる「骨の貯金期」

多くの女性にとって、骨の健康を意識するのは40代や50代、あるいは閉経後になってからかもしれません。しかし、整形外科の医学的な視点からは、それでは少し遅いと言わざるを得ません。なぜなら、人間の骨密度(骨の強さ)が一生のピークに達するのは、18歳から20代前半の間だからです。

この時期までにいかに骨を強くし、密度を高めておけるかが、その後の人生の骨の健康を左右します。これを私たちは「最大骨量(ピーク・ボーン・マス)」と呼びます。

・20代後半からは、新しい骨を作るスピードよりも、古い骨が壊されるスピードが徐々に上回り始めます。
・つまり、20代のうちにどれだけ高い山(ピーク)を作っておけるかが、老後の骨折リスクを減らすための唯一の備えとなります。
・この大切な時期に骨を削るような生活をしていると、将来、他の人よりもずっと早く「下限ライン」を下回り、寝たきりや骨折の危険に晒されてしまいます。

20代の骨は、一生を支える「土台」です。この時期の不摂生は、数十年後の自分に対する深刻な負債となってしまうのです。

無理なダイエットの代償。栄養不足と女性ホルモンが骨を溶かす仕組み

現代社会では、細い身体こそが美しいという価値観が根強く、極端な食事制限を行う20代女性が少なくありません。しかし、その「美しさ」と引き換えに、身体の中では骨がボロボロになっている可能性があります。

若くして月経が3ヶ月以上止まっている状態は、骨の状態だけで言えば「閉経後の高齢者」と同じ、あるいはそれ以上に過酷な環境に置かれていると言っても過言ではありません。

若年性骨粗鬆症のサイン。疲れやすさや腰痛に隠れた危険な徴候

骨粗鬆症は「沈黙の病」とも呼ばれ、初期にはほとんど自覚症状がありません。しかし、20代の女性において、骨が弱くなっていることを知らせるいくつかの小さなサインが存在します。

見逃してはいけない身体のサイン

  • 慢性的な腰の重だるさ:重い荷物を持ったわけでもないのに腰が痛むのは、背骨に微細な負担がかかっている可能性があります。
  • 身長が縮んだ、あるいは姿勢の変化:1cmでも身長が縮んだり、極端に背中が丸まったりしている場合は要注意です。
  • 疲れやすく、足がむくみやすい:骨代謝のバランスが崩れると、全身の代謝や血流にも影響が出ます。
  • 月経不順が続いている:先述の通り、これは骨の崩壊を告げる最大の警告灯です。

これらの症状を「仕事が忙しいから」「最近疲れているから」と放置していると、ある日突然、くしゃみや軽い転倒で背骨を圧迫骨折してしまうといった悲劇に見舞われることがあります。これを機に、ご自身のライフスタイルと骨の状態を見直す機会を持ってください。

骨を育てるオーダーメイド戦略。食事・運動・リハビリテーションの連携

もし、骨密度の低下が疑われる場合、あるいは将来を予防したい場合、整形外科クリニックでは多角的なサポートを提供します。単にカルシウム剤を処方するだけが治療ではありません。

リハビリテーションの重要性
骨を強くするためには、適度な「負荷」が必要です。しかし、自己流の激しい運動は、すでに弱っている骨を痛めるリスクがあります。そこで活躍するのが、理学療法士によるリハビリテーションです。

  • 骨に刺激を与える運動:安全に、かつ骨代謝を活性化させるための重力負荷運動を個別に指導します。
  • 姿勢改善トレーニング:骨が弱くても負担がかかりにくい「骨を守る姿勢」を身につけます。
  • 筋力の底上げ:骨を周囲から支える筋肉を鍛え、転倒や衝撃から守るクッションを作ります。

また、管理栄養士による食事指導と連携することで、「食べながら痩せ、かつ骨を強くする」という、健康的なボディイメージへの転換をサポートします。医療機関でのリハビリテーションは、あなたの将来の自由な動きを予約するための投資なのです。

30年後の自分に感謝される。今すぐ始めたい「骨活」の具体的なステップ

今、この瞬間からできる「骨活」をいくつかご紹介します。これらは特別な道具を必要とせず、毎日の生活の中で無理なく続けられるものばかりです。

毎日の食事にプラス1の工夫

  • 乳製品だけでなく、小魚、小松菜、納豆を意識して摂る。
  • ビタミンDを合成するために、1日15分ほど陽の光を浴びながら散歩する。

骨を刺激する簡単な動作

  • 「かかと落とし」運動:壁に手を付き、かかとを上げてストンと落とす。この振動が骨を作る細胞を呼び覚まします。
  • 階段を意識的に使う:エレベーターではなく階段を使うことが、足の骨への最高のご褒美になります。

定期的な骨密度測定
20代であっても、一度ご自身の現状を知るために整形外科で骨密度測定を受けることをお勧めします。若いうちの数値は、その後の変化を追うための「基準値」として非常に大きな意味を持ちます。

若さは永遠ではありませんが、20代で作った強い骨は、50代、70代、90代になってもあなたを支え続けてくれます。「将来、いつまでも自分の足で好きな場所へ行ける自分」でいるために。今こそ、鏡に映る外見だけでなく、身体の内側にある「骨」に愛を注いでみませんか。

参考文献

1. 日本骨粗鬆症学会 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」
2. 日本産科婦人科学会 「女性のヘルスケアアドバイザー:若年女性のダイエットと骨量」
3. 日本理学療法士協会 「ライフステージに応じた理学療法 – 若年層の骨の健康」
4. Weaver, C. M., et al. (2016). “The National Osteoporosis Foundation’s position statement on peak bone mass development and lifestyle factors: a systematic review and implementation strategy.” Osteoporosis International.
5. 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準 2020年版」

 

 

 

 



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