監修:慶元 秀規(日本整形外科学会認定整形外科専門医) 最終更新:2026年4月
「朝起きると指が曲がったまま動かしにくい」「指を動かすとカクンと引っかかる感じがある」「指の付け根を押すと痛い」といった症状はありませんか?
これはばね指(弾発指)と呼ばれる状態です。
ばね指は、指を動かす腱(けん)と、それを包む鞘(さや)のような組織「腱鞘(けんしょう)」の間で炎症が起き、腱がスムーズに通過できなくなることで起こります。炎症が進むと腱と腱鞘が分厚くなり、指を動かすたびにひっかかりが生じ、最終的にはばねのように指が跳ね返る「弾発現象」が出てきます。
親指・中指・薬指に多く見られ、特に親指(母指)が最も起こりやすいとされています。中高年の女性や、更年期・産後の方、糖尿病・関節リウマチをお持ちの方に多い傾向があります。
以下の症状に当てはまるものはいくつありますか?
ばね指は放置すると段階的に悪化します。症状の進行は大きく4つのステージに分けられます。
| ステージ | 状態 | 主な症状 |
|---|---|---|
| Stage 1 | 炎症期 | 指の付け根の痛み・腫れ・朝のこわばり |
| Stage 2 | 引っかかり期 | 屈伸時のひっかかり感、押すと痛い |
| Stage 3 | 弾発期 | 動かすたびに「カクン」と跳ね返る、痛みを伴う |
| Stage 4 | 拘縮期 | 指が曲がったまま伸びない、または伸びたまま曲がらない |
初期のうちは安静にすることで症状が和らぐこともあります。しかし日常生活で手を使い続けることで炎症が慢性化し、Stage 4の「拘縮(こうしゅく)」と呼ばれる状態に至ると、指が固まって動かなくなってしまいます。こうなると治療に時間がかかります。「そのうち治るだろう」と放置せず、早めにご相談ください。
同じ動作を繰り返すことで腱鞘に負荷が積み重なります。調理・裁縫・農作業など手を多く使う仕事のほか、スマートフォンやパソコンの長時間使用、ゴルフ・野球・テニスなどのスポーツも原因になります。
更年期・妊娠中・産後の女性に多く見られます。女性ホルモン(エストロゲン)の変化が腱鞘を炎症しやすい状態にすると考えられています。産後に赤ちゃんを抱っこする動作が続くことも誘因のひとつです。
糖尿病・関節リウマチ・透析を受けている方はばね指を発症しやすいことが知られています。これらの疾患をお持ちの方が指の症状を感じたときは、早めにご相談ください。
加齢とともに腱鞘が厚くなったり、腱が変性して太くなることがあります。これにより腱が腱鞘の中を通りにくくなり、ばね指を引き起こします。
整形外科では問診・視診・触診(指の付け根を押して圧痛の有無を確認)を行い、必要に応じてX線検査(骨に異常がないかの確認)を実施します。
近年は超音波(エコー)検査を用いた診断も広く行われています。エコーを使うことで、腱と腱鞘の状態をリアルタイムに画面で確認しながら評価することができます。「どこに炎症があるか」「腱鞘がどのくらい厚くなっているか」が正確にわかるため、より精度の高い診断と治療につなげることができます。
放射線による被ばくがなく、妊娠中の方にも安心
腱・腱鞘の状態をリアルタイムで可視化できる
診断と治療を同日に行えるため、通院回数を最小限に抑えられます
エコーを用いた診断の詳細は「エコーを用いた診断・診療」ページをご覧ください。
ばね指の治療には、症状の程度に応じていくつかの選択肢があります。症状の段階や生活スタイルに合わせて治療法を選ぶことが大切です。
症状が軽い初期の段階では、まず安静・テーピング・サポーターによる固定と、消炎鎮痛薬(内服・湿布)を組み合わせた保存療法を行います。リハビリテーションを併用して腱への負荷を減らすことも有効です。
ただし日常生活で手を使い続けることが多い方は、保存療法だけでは改善が難しく、症状が繰り返しやすい傾向があります。
炎症を鎮める薬(ステロイド)を腱鞘の中に注射する治療です。多くの場合、1回の注射で数か月単位の症状改善が得られます。
ただし注射を繰り返すと効果が弱まることがあり、一般的には2〜3回が目安です。それ以上繰り返しても改善しない場合や、症状がぶり返す場合は、手術的な治療を検討するタイミングです。
当院ではステロイド注射もエコーガイド下で行っています。画面で腱鞘の位置を確認しながら注射するため、より正確に薬を届けることができます。
保存療法・注射でも改善しない場合に選択される手術です。皮膚を約2〜3cm切開して腱鞘を開き、腱の通り道を広げます。健康保険が適用されます(3割負担で約8,000〜10,000円程度)。
切開・縫合が必要なため、術後は抜糸まで手を濡らすことができず、傷が落ち着くまで2週間ほど手を使うことができません。また、術前・術後の診察が複数回必要になります。
皮膚を切らずにばね指を治療できる「エコーガイド下経皮的腱鞘切開術」は、注射針(直径約1mm)を使ってエコー画面を見ながら腱鞘を正確に切開する方法で、傷の大きさは約1mmです。国内ではまだ一部の医療機関でしか行われていない、専門性の高い手術です。
| 手術時間 | 約5分 |
|---|---|
| 傷の大きさ | 約1mm(従来の手術は約2〜3cm) |
| 麻酔 | 局所麻酔 |
| 当日入浴 | 術後6時間以降から可能 |
| 縫合・抜糸 | 不要 |
| 術後の通院 | 基本不要 |
| 費用 | 期間限定価格 56,000円(税込) ※2026年5月31日まで |
| 比較項目 | 保存療法 | ステロイド 注射 |
従来の 手術 |
切らない 手術 |
|---|---|---|---|---|
| 根本的な解消 | 難しい | 一時的 | できる | できる |
| 手術時間 | — | 約5分 | 30〜60分 | 約5分 |
| 切開サイズ | なし | なし | 約2〜3cm | 約1mm |
| 当日入浴 | 可 | 可 | 不可 | 可(6時間後〜) |
| 縫合・抜糸 | 不要 | 不要 | 必要 | 不要 |
| 通院回数 | 複数回 | 複数回 | 複数回 | 基本1回 |
| 保険適用 | 適用 | 適用 | 適用 | 自費診療 |
何度も通院することに抵抗のある方
手術後に手が使えない期間を作りたくない方
仕事・家事・育児を続けながら治療したい方
*切らないばね指手術は自費診療(保険適用外)になります
*お支払いは現金のみとなります
炎症が強い時期に無理なストレッチや揉みほぐしを行うと、腱鞘の炎症を悪化させることがあります。また「そのうち治るだろう」と痛みを我慢して使い続けるのも症状を進行させる原因になります。
症状が強い急性期(腫れ・熱感がある時期)はアイシングが有効です。1回15〜20分を目安に、1日2〜3回患部を冷やしてください。
腫れや熱感が落ち着いた後は、ホットタオルや入浴で温めることで血行が改善し、こわばりの緩和が期待できます。
テーピングやサポーターで固定することも、日常生活での負担を減らすのに役立ちます。正しい使い方は受診時にご説明します。
長時間の手作業は途中で休憩を入れる(1時間に5分程度)
スマートフォンは持ち方を工夫し、親指への負担を減らす
作業前後に手のウォームアップを行う
セルフケアで症状が改善しない場合や、症状がぶり返す場合は、専門医へご相談ください。