コラム・ブログ

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2025年5月27日

「“寝違え”の正体は何? 首の筋肉と関節のプチトラブル」

ハイライト

朝起きたら首が痛くて動かせない…そんな「寝違え」は、筋肉や関節の小さな炎症が原因です。正しい理解とリハビリで、無理なく改善を目指しましょう。

目次

寝違えとは?―誰にでも起こる首のトラブル

「朝起きたら急に首が回らない」「振り向けないほど痛い」「寝方が悪かったかも…」

寝違えの原因―筋肉?関節?神経?

寝違えの原因としてよく挙げられるのが、「無理な姿勢で長時間寝ていた」ことです。しかし、それはあくまで「引き金」であり、本質的な原因は首や肩回りの筋肉・関節・靭帯の小さなトラブルにあります。

とくに関与が大きいとされているのが、僧帽筋、肩甲挙筋、頚板状筋などの筋肉群です。これらは首の動きを支え、頭部の重さ(約4〜5kg)を日常的に支える重要な筋肉です。

これらの筋肉に過度な負担がかかると、筋膜の癒着や微小な損傷が生じ、結果として寝違えのような痛みを引き起こします3)

頚椎(首の骨)とその周囲の小さな関節(椎間関節)に一時的な「ロック」や「ズレ」が生じることで、動作時の痛みや引っかかりが発生することがあります。

このような状態は、いわゆる「ファセットロック」と呼ばれ、急性の首の可動域制限の原因となります1)

ときに神経根が刺激され、しびれを伴うこともありますが、多くの場合は一過性の炎症によるもので、数日以内に改善します。ただし、症状が長引く、あるいは腕や手に強いしびれがある場合は、椎間板ヘルニアなどの鑑別が必要になります。

寝違え時の整形外科での診断と評価

首の痛みで受診された場合、整形外科ではまず問診と視診・触診を行います。以下のような観点から状態を把握していきます。

  • 問診

◾️痛みが出たタイミング

◾️寝姿勢や使用している枕の種類

◾️痛みの程度や持続時間

◾️手や腕への放散痛の有無

  • 身体診察

◾️頚部の可動域(回旋・前後屈・側屈)

◾️圧痛点の確認(特に肩甲挙筋や僧帽筋)

◾️神経学的な異常所見(腱反射や感覚異常)

必要に応じた画像検査

レントゲンや超音波を用いて、頚椎の配列異常や関節の動きの評価、筋肉や靭帯の状態を確認します。とくに超音波診断は、動的評価が可能であり、頚部筋群の損傷や炎症部位の特定に有効です4)

リハビリテーションでのアプローチ

整形外科における寝違えのリハビリは、「炎症の軽減」「筋緊張の緩和」「可動域の回復」が中心となります。

  • 急性期(〜3日)

◾️安静と局所冷却:アイスパックで1日数回、10〜15分程度冷却し炎症の拡大を抑制します。

◾️痛みのコントロール:必要に応じて消炎鎮痛剤(NSAIDs)の処方や、低出力の超音波治療を行うこともあります。

  • 亜急性期(4〜7日)

◾️温熱療法:ホットパックや温熱シートで循環を促進し、治癒を促します。

◾️徒手療法:頚部や肩甲帯の筋膜リリースや軽度のモビライゼーションを実施します。

  • 回復期(1週〜)

◾️頚部のストレッチ・運動療法:前後屈・回旋運動を痛みの範囲内でゆっくりと行います。

◾️姿勢指導・エルゴノミクス:デスクワークや寝具の見直しなど、再発予防の生活習慣改善をアドバイスします。

リハビリによって関節の可動性や筋肉の柔軟性が回復しやすくなり、再発防止にも効果的です2)

繰り返さないための予防とセルフケア

  • 良好な寝姿勢の確保

◾️枕の高さの見直し:首が自然なS字カーブを保てる枕が理想です。高すぎても低すぎても筋緊張の原因となります。

◾️寝返りを妨げない寝具:硬すぎるマットレスや枕が原因で寝返りが打てないと、一部の筋肉に負担が集中します5)

  • 日常生活での工夫

◾️長時間同じ姿勢を避け、1時間に1回程度の軽いストレッチを推奨。

◾️スマートフォンの長時間使用や猫背姿勢も首へのストレスになります。

  • セルフストレッチ

寝違えの予防には、普段からの柔軟性維持が重要です。以下のようなストレッチが推奨されます。

◾️頚部回旋ストレッチ:顔を左右に向けて可動域を保つ。

◾️肩甲骨の動きを意識した体操:肩をすくめて回す運動や、バンザイ動作など。

 

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参考文献

1)石井慎一郎: 頚部痛とその治療. 理学療法ジャーナル. 55(3): 245-252. 2021.

2)小林唯: 寝違えに対する徒手療法の理論と実際. 臨床スポーツ医学. 37(1): 64-70. 2020.

3)山田幸司ほか: 頚部筋群の疼痛メカニズム. 日本臨床整形外科学会雑誌. 34(5): 317-322. 2019.

4)大塚弘樹: 慢性頚部痛における超音波診断の意義. 超音波医学. 42(6): 579-585. 2017.

5)平林大樹: 枕と頚部痛の関係. 日本整形外科スポーツ医学会誌. 22(2): 88-93. 2016.

 



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