

手首の小指側、手の甲側から触ると小さく飛び出している骨(尺骨頭)があります。この骨と手首の骨(手根骨)の間には、少し隙間が空いています。この隙間を埋め、手首を安定させながらクッションの役割を果たしているのが、TFCC(三角線維軟骨複合体)です。
TFCCは、ひとつの組織ではありません。名前のとおり「複合体」で、次のような構造が組み合わさっています。
役割は大きく2つです。ひとつは、手をついたときに手首の小指側にかかる力を受け止めるクッション。もうひとつは、ドアノブを回す、タオルを絞る、ドライバーを使うといった前腕を回す動きの安定装置です。
TFCCは血流に乏しい部分があり、とくに中央部は自然な修復が起こりにくい構造をしています。これが「なかなか治らない」と言われる理由のひとつです。

原因は大きく2つに分けられます。
●外傷によるもの
とくに、手をついたときに手首が小指側へ倒れ、同時にひねりが加わると損傷しやすくなります。
●使いすぎ・加齢によるもの
もうひとつ、体質的な要因として尺骨突き上げ症候群があります。前腕の2本の骨のうち、尺骨が橈骨よりわずかに長い形の方は、手首の小指側にかかる圧が構造的に大きく、TFCCが傷みやすくなります。レントゲンで骨の長さの関係を確認することで判断できます。
ケガの記憶がはっきりしないまま痛みが続く方も多く、「いつの間にか痛くなった」と話される場合でも、繰り返しの負担や骨の形が背景にあることは珍しくありません。
FAQ
Q
レントゲンで「異常なし」と言われましたが、痛みが続きます。どうすればよいですか?
A
TFCCは軟骨と靭帯からなる組織のため、レントゲンには写りません。骨に異常がないことが確認できたうえで痛みが続く場合は、エコーやMRIによる評価が有効です。「骨に異常がない=問題がない」ではありませんので、痛みが続くようなら再度ご相談ください。
Q
サポーターはどのくらいの期間つけたほうがよいですか?
A
損傷の程度によりますが、痛みが強い時期には数週間から数か月、日中の作業時を中心に使用します。ずっと固定し続けると手首を支える筋肉が弱ってしまうため、痛みが軽くなってきたら、リハビリテーションと並行して使用時間を減らしていきます。外すタイミングは自己判断せず、経過を診ながら決めるのが安全です。
Q
スポーツはいつから再開できますか?
A
痛みなく手首を回せること、手をついても痛みが出ないこと、握力が反対側と同程度に戻っていることが目安になります。競技によって手首にかかる負担は大きく異なるため、テーピングや装具を併用しながら段階的に復帰するのが一般的です。目安の時期は状態によって変わりますので、診察のうえでご相談ください。
参考文献
・日本手外科学会 一般の方へ「TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)」
・日本整形外科学会 症状・病気をしらべる「手首の痛み」
・日本手外科学会 手関節疾患に関する診療情報