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ドアノブを回すと手首の小指側が痛い。「TFCC損傷」の原因とリハビリテーション

ハイライト

ドアノブを回すとき、フライパンを持ち上げるとき、手をついて体を支えるときに、手首の小指側がズキッと痛む。腫れは目立たないのに、なかなか治らない。そんな症状は「TFCC損傷」かもしれません。手首の小指側にあるクッションと支持組織が傷んだ状態で、レントゲンには写らないため見過ごされがちです。原因と、装具やリハビリテーションを含む治し方を解説します。

目次

TFCCとは手首のどこにある、どんな組織か

手首の小指側、手の甲側から触ると小さく飛び出している骨(尺骨頭)があります。この骨と手首の骨(手根骨)の間には、少し隙間が空いています。この隙間を埋め、手首を安定させながらクッションの役割を果たしているのが、TFCC(三角線維軟骨複合体)です。

TFCCは、ひとつの組織ではありません。名前のとおり「複合体」で、次のような構造が組み合わさっています。

役割は大きく2つです。ひとつは、手をついたときに手首の小指側にかかる力を受け止めるクッション。もうひとつは、ドアノブを回す、タオルを絞る、ドライバーを使うといった前腕を回す動きの安定装置です。

TFCCは血流に乏しい部分があり、とくに中央部は自然な修復が起こりにくい構造をしています。これが「なかなか治らない」と言われる理由のひとつです。

TFCC損傷が起こる原因

原因は大きく2つに分けられます。

●外傷によるもの

とくに、手をついたときに手首が小指側へ倒れ、同時にひねりが加わると損傷しやすくなります。

●使いすぎ・加齢によるもの

もうひとつ、体質的な要因として尺骨突き上げ症候群があります。前腕の2本の骨のうち、尺骨が橈骨よりわずかに長い形の方は、手首の小指側にかかる圧が構造的に大きく、TFCCが傷みやすくなります。レントゲンで骨の長さの関係を確認することで判断できます。

ケガの記憶がはっきりしないまま痛みが続く方も多く、「いつの間にか痛くなった」と話される場合でも、繰り返しの負担や骨の形が背景にあることは珍しくありません。

こんな症状が出たらTFCC損傷を疑う

次のような症状が典型的です。

  • 手首の小指側を押すと痛む(尺骨頭のすぐ手前のくぼみ)
  • ドアノブや鍵を回すと痛む
  • タオルを絞る動作でズキッとくる
  • フライパンや鍋を片手で持ち上げると痛い
  • 手をついて立ち上がるとき、床に手をつくときに痛む
  • 手首を小指側に倒すと痛みが走る
  • 手首を回すと、ゴリッ、コリッというクリック音がする
  • 手首がグラグラして力が入らない感じがある

腫れや熱感は目立たないことが多く、見た目はほとんど変わりません。そのため周囲から「まだ痛いの」と言われてしまい、我慢して使い続けた結果、慢性化してしまうことがよくあります。

日常生活では、次のような場面で困りやすくなります。

  • 車の運転でハンドルを回す
  • スマートフォンを片手で長時間支える
  • パソコンのマウス操作
  • 洗濯物を絞る、雑巾がけをする
  • 子どもを抱き上げる

診断と、他の手首の痛みとの見分け方

診察では、痛みの場所を丁寧に特定します。手首の小指側のくぼみに圧痛があるか、手首を小指側へ倒しながら軸方向に圧を加えたときに痛みが再現されるか(尺骨手根ストレステスト)などを確認します。

画像検査では、まずレントゲンで骨折や関節の変形、尺骨と橈骨の長さの関係を確認します。TFCC自体は軟部組織のためレントゲンには写りませんが、超音波(エコー)検査であれば、手首を動かしながら腱や靭帯の状態、周囲に液体がたまっていないかをその場で確認できます。損傷の範囲を詳しく見る必要がある場合には、MRI検査を行います。

手首の小指側の痛みには、他にも原因があります。

  • 尺側手根伸筋腱炎や腱の脱臼…手首を回したときに腱が飛び出すような感触がある
  • 豆状骨や有鉤骨のトラブル…手のひらの小指側の付け根が痛む
  • 尺骨突き上げ症候群…TFCC損傷と併存することが多い
  • 遠位橈尺関節の不安定症…前腕を回すとぐらつく
  • 骨折(見えにくい骨のひび)…外傷後の痛みが強い場合は要注意
  • 関節リウマチなど炎症性の疾患…複数の関節に症状が出る

これらは治療方針が異なるため、痛みが続く場合は自己判断せず確認することをおすすめします。

治療とリハビリテーションの進め方

TFCC損傷は、まず保存療法から始めるのが原則です。

◾️安静と装具

最も大切なのは、痛みの出る動きを一時的に減らすことです。手首を回す動作、小指側へ倒す動作を制限するサポーターや装具を使い、数週間から数か月にわたって組織が落ち着くのを待ちます。装具は、前腕の回旋まで抑えるタイプが有効なことがあります。

日常生活では、次の工夫が負担を減らします。

  • 鍋やフライパンは両手で持つ
  • 重い物は手のひら全体で下から支える
  • ドアノブは、手首をひねらずに前腕全体を使って回す
  • 雑巾は絞らず、押し当てて水気を切る道具を使う
  • マウスやキーボードの位置を調整し、手首が小指側へ倒れないようにする

◾️薬物療法と注射

炎症が強い時期には消炎鎮痛剤を使用します。改善が乏しい場合、エコーで確認しながら関節内や腱の周囲に注射を行い、痛みを抑えることもあります。

◾️リハビリテーション

痛みが落ち着いてきたら、手首を支える力を取り戻していきます。

  • 前腕の回内・回外運動…肘を体につけたまま、手のひらを上下に返す動きをゆっくり行う
  • 手首の可動域訓練…痛みの出ない範囲で、上下・左右へ動かす
  • 尺側手根伸筋・尺側手根屈筋のトレーニング…手首の小指側を支える筋肉を、軽い負荷から鍛える
  • 握力強化…柔らかいボールを握るところから始め、段階的に負荷を上げる
  • 肩甲骨と肘の動きの調整…手首だけで作業を行わず、腕全体で動作するパターンを身につける

回復には時間がかかります。数週間で完全に治るものではなく、3か月ほどの経過を見ながら段階的に負荷を戻していくことが多くなります。焦って早く使い始めると、また痛みがぶり返すという繰り返しに陥りやすいので、負荷の上げ方をリハビリテーション担当者と確認しながら進めることが大切です。

◾️手術が検討される場合

数か月の保存療法でも痛みが続く場合、手首のぐらつきが強く日常生活や競技に支障がある場合には、関節鏡を使った手術が検討されます。傷んだ部分を切除する方法、断裂した部分を縫合する方法、尺骨が長い場合には骨を短くする方法などがあり、状態に応じて選択されます。手術後も、可動域と筋力を回復させるリハビリテーションが結果を左右します。

手首の小指側の痛みは、放置しても自然に治りにくく、使い続けることで悪化しやすい特徴があります。当院ではエコーを含めた検査で痛みの原因を確認し、装具の選択から段階的なリハビリテーションまで一貫してご相談に応じています。手をつくと痛い、ドアノブが回しにくいという症状が2週間以上続く方は、早めにご相談ください。

FAQ

よくある質問

Q

レントゲンで「異常なし」と言われましたが、痛みが続きます。どうすればよいですか?

A

TFCCは軟骨と靭帯からなる組織のため、レントゲンには写りません。骨に異常がないことが確認できたうえで痛みが続く場合は、エコーやMRIによる評価が有効です。「骨に異常がない=問題がない」ではありませんので、痛みが続くようなら再度ご相談ください。

Q

サポーターはどのくらいの期間つけたほうがよいですか?

A

損傷の程度によりますが、痛みが強い時期には数週間から数か月、日中の作業時を中心に使用します。ずっと固定し続けると手首を支える筋肉が弱ってしまうため、痛みが軽くなってきたら、リハビリテーションと並行して使用時間を減らしていきます。外すタイミングは自己判断せず、経過を診ながら決めるのが安全です。

Q

スポーツはいつから再開できますか?

A

痛みなく手首を回せること、手をついても痛みが出ないこと、握力が反対側と同程度に戻っていることが目安になります。競技によって手首にかかる負担は大きく異なるため、テーピングや装具を併用しながら段階的に復帰するのが一般的です。目安の時期は状態によって変わりますので、診察のうえでご相談ください。

参考文献

・日本手外科学会 一般の方へ「TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)」
・日本整形外科学会 症状・病気をしらべる「手首の痛み」
・日本手外科学会 手関節疾患に関する診療情報



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