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内くるぶしの下が痛み、土踏まずがつぶれてきた。大人の扁平足「後脛骨筋腱機能不全」の進み方とリハビリテーション

ハイライト

「最近、土踏まずがなくなってきた」「内くるぶしの下が腫れて、長く歩くと痛む」。そんな変化は、大人になってから進む扁平足「後脛骨筋腱機能不全」のサインかもしれません。中高年の女性に多く、放っておくと少しずつ足の形が崩れていくのが特徴です。セルフチェックの方法、進行の段階、インソールや装具、後脛骨筋のトレーニングを中心としたリハビリテーション、手術が検討される場合までを解説します。

目次

後脛骨筋腱とは、足のアーチを支えるどんな腱か

すねの骨の奥、ふくらはぎの深いところに「後脛骨筋」という筋肉があります。この筋肉から伸びる腱(後脛骨筋腱)は、内くるぶしのすぐ後ろを回り込むように通り、土踏まずの内側にある骨(舟状骨)を中心に、足の裏の骨へ広く付いています。

後脛骨筋腱には、主に次のような役割があります。

つまり後脛骨筋腱は、足のアーチを保つ「吊り橋のワイヤー」のような存在です。この腱が傷んだり伸びたりして十分に働けなくなった状態を、後脛骨筋腱機能不全と呼びます。

この病気は、大人になってから土踏まずが少しずつ低くなっていく「成人期扁平足」の代表的な原因です。最近では、足全体が徐々につぶれていく変形という意味で「進行性の足部崩壊変形」という呼び方も提案されています。

なお、生まれつきや成長期にみられる子どもの扁平足や、舟状骨の内側に余分な骨がある有痛性外脛骨とは、起こる年代も成り立ちも異なります。大人になってから、もともとあった土踏まずが失われていく点が、後脛骨筋腱機能不全の大きな特徴です。

後脛骨筋腱機能不全が起こる原因と、なりやすい人

はっきりしたケガがなくても、長い年月をかけて腱が少しずつ傷んでいく(変性する)ことが主な原因です。

●腱が傷みやすい理由

後脛骨筋腱は、内くるぶしの後ろで急なカーブを描いて向きを変えます。この部分は腱がこすれやすく、しかも血流が乏しいため、傷んでも修復されにくいと考えられています。歩くたびに体重を支え続ける腱なので、負担の蓄積が起こりやすい場所でもあります。

●なりやすい人

●きっかけになりやすい出来事

「年のせいで足が平らになっただけ」と思われがちですが、実際には腱の働きが落ちていることが背景にある場合が少なくありません。

こんな症状とサインがあれば要注意

初期のうちは、足の形の変化よりも「痛み」や「疲れやすさ」として現れることがほとんどです。

●よくみられる症状

  • 内くるぶしの下から土踏まずにかけての痛み
  • 内くるぶしの後ろ〜下が腫れぼったい、押すと痛い
  • 長く歩いた後、立ち仕事の後に足の内側がだるく痛む
  • 坂道や階段、でこぼこ道で痛みが強くなる
  • 片足だけ土踏まずが低くなってきた、靴の内側ばかりすり減る
  • 進んでくると、外くるぶしの下(足の外側)まで痛むようになる

足の外側の痛みは、かかとが外側へ倒れ込むことで、骨どうしがぶつかり合うようになって起こるものです。病気がある程度進んでいるサインと考えられます。

●ご自宅でできるセルフチェック

  • 片脚つま先立ち…壁や手すりに軽く手を添え、痛い側の脚だけでつま先立ちをしてみます。かかとが上がらない、何回も続けられない、かかとが内側へ入らずに外側へ倒れたまま上がる、といった場合は腱の働きが落ちている可能性があります
  • 後ろから足を見る(too many toes sign)…ご家族に、立った状態の足をかかとの真後ろから見てもらいます。通常は小指側の指が1〜2本見える程度ですが、つま先が外を向いて、小指側の指が3本以上見える場合は、足が崩れてきているサインです
  • 左右を比べる…立ったときに、内くるぶしの下の膨らみや土踏まずの高さが左右で違わないかを確認します

多くの場合、片側の足から始まります。左右差がはっきりしてきたら、早めに受診することをおすすめします。

病気の進み方と、診察・検査で確かめること

後脛骨筋腱機能不全は、時間をかけて段階的に進むことが知られています。代表的な分け方は、次のとおりです。

◾️第1段階(腱の炎症・傷みの始まり)

内くるぶしの後ろに痛みや腫れがあるものの、足の形はほぼ保たれています。片脚つま先立ちも、少しつらいながら何とかできる段階です。

◾️第2段階(柔らかい扁平足)

腱が伸びたり部分的に切れたりして、立つと土踏まずがつぶれ、かかとが外側に倒れます。ただし、座って体重をかけなければ、手で足の形を元に戻すことができます。片脚つま先立ちが難しくなり、too many toes signがはっきりしてきます。

◾️第3段階(固い扁平足)

変形が固まり、手で戻そうとしても足の形が元に戻らなくなります。かかとの外側や足の外側の痛みが強くなることもあります。

◾️第4段階(足首まで影響が及ぶ)

足首の関節にも傾きや傷みが生じた状態です。

一般に、第1段階から第2段階の早い時期であれば、手術をしない保存療法で改善が期待できることが多いとされています。早く気づくほど、治療の選択肢が広がる病気です。

●診察で確かめること

  • 痛みや腫れの場所、押したときの痛み
  • 後ろから見たかかとの傾き、too many toes sign
  • 片脚つま先立ちができるか、そのときかかとが内側へ入るか
  • 足の柔らかさ(手で足の形を戻せるか)
  • ふくらはぎやアキレス腱の硬さ

●検査

  • レントゲン…立った状態で撮影し、アーチの高さや骨の並び、関節の変形を確認します
  • 超音波(エコー)検査…腱の太さ、腱のまわりの水のたまり具合、部分的な断裂の有無を、その場で動かしながら確認できます
  • MRI検査…腱の傷みや断裂の範囲をより詳しく調べる必要がある場合に行います

内くるぶし周辺の痛みは、足根管症候群や、内くるぶし付近の疲労骨折、足首の関節の変形などでも起こります。似た場所の痛みでも治療方針が異なるため、自己判断せずに確認することが大切です。

インソール・装具とリハビリテーション、手術が検討される場合

治療は、まず手術をしない保存療法から始めるのが基本です。保存療法の目的は、傷んだ腱への負担を減らして痛みを落ち着かせること、そして足のアーチを支える力を取り戻し、変形の進行を食い止めることです。

◾️負担を減らす工夫と装具

痛みや腫れが強い時期には、長時間の歩行や立ち仕事を一時的に控え、腱を休ませます。症状が強い場合は、短期間、足首を固定するブーツ型の装具を使うこともあります。

痛みが落ち着いてきたら、次のような方法で足を支えます。

  • インソール(足底板)…土踏まずの内側を下から支え、かかとが内側へ倒れ込むのを防ぎます。足の形に合わせて作製するものもあります
  • 足首のサポーターや装具…第2段階など、インソールだけでは支えきれない場合に、足首から足部までを支える装具を使います
  • 靴の見直し…かかとをしっかり包み込む硬めのヒールカウンター、ひもやベルトで甲を固定できるもの、適度なクッション性がある靴を選びます。底のすり減った靴や、薄くて柔らかい靴は避けます

◾️後脛骨筋を中心としたリハビリテーション

インソールで足を支えるのと並行して、アーチを内側から支える力を取り戻していきます。インソールと装具に、後脛骨筋の筋力トレーニングを組み合わせることで、痛みや足の機能がより改善したという研究報告もあります。代表的な運動をご紹介します。

  • タオルギャザー…椅子に座り、床に置いたタオルを足の指でたぐり寄せる。足の裏の小さな筋肉を目覚めさせる
  • ショートフット…足の指を曲げずに、指の付け根とかかとを近づけるイメージで土踏まずを持ち上げ、5〜10秒保つ
  • ゴムバンドでの内返し運動…椅子に座って足首にゴムバンドをかけ、足の裏を内側へ向けるように、ゆっくりと引く。戻すときもゆっくり行うのがポイント
  • 両脚のかかと上げ…両手を壁に添え、かかとの間にボールやタオルを挟んで、かかとが外へ開かないように上げ下げする。慣れてきたら、下ろす動作を時間をかけて行う
  • ふくらはぎのストレッチ…壁に手をつき、アキレス腱からふくらはぎをじっくり伸ばす。ふくらはぎが硬いと、アーチをつぶす方向の力がかかりやすくなる
  • 股関節やお尻の筋肉のトレーニング…膝が内側に入る歩き方を防ぎ、足にかかる負担を減らす

運動を行うときのポイントは、次のとおりです。

  • 痛みが強く出ない範囲で行い、翌日に痛みが増えていないかを確認する
  • 回数より、正しいフォームを優先する
  • 片脚でのかかと上げは負担が大きいため、両脚で楽にできるようになってから、担当者と相談して始める
  • 効果が感じられるまでには、数週間から数か月かかることが多い。研究でも12週間ほどのプログラムで効果が確かめられているため、焦らず続ける

体重のコントロールも、足への負担を減らす大切な治療のひとつです。膝や腰に不安がある方は、水中ウォーキングや自転車こぎなど、足に体重がかかりにくい運動を取り入れるのも良い方法です。

◾️薬と注射について

痛みが強い時期には、湿布や痛み止めを使うことがあります。一方、腱のまわりへのステロイド注射は、腱をさらに弱めて断裂のきっかけになるおそれがあるため、慎重に判断されます。

◾️手術が検討される場合

数か月にわたって保存療法を続けても痛みや歩きにくさが改善しない場合や、変形が進んでいる場合には、手術が検討されます。

  • 腱のまわりの炎症を起こした組織を取り除く手術
  • 足の指を曲げる別の腱を移し替えて、後脛骨筋腱の働きを補う手術
  • かかとの骨の向きを整える骨切り術
  • 変形が固まっている場合に、関節を固定して足の形を安定させる手術

どの方法が選ばれるかは、病気の段階、足の柔らかさ、年齢や活動量によって異なります。手術を受けた後も、筋力やバランス、歩き方を取り戻すリハビリテーションが、その後の結果を大きく左右します。

後脛骨筋腱機能不全は、早い段階で気づき、足を支える工夫とリハビリテーションを続けることで、進行を抑えられる可能性がある病気です。当院では、診察とエコーを含めた検査で腱の状態を確認したうえで、インソールや装具の選択、後脛骨筋のトレーニング、靴選びや生活上の工夫まで、一緒に取り組んでいます。手術が必要と考えられる場合には、専門の医療機関と連携してご案内します。内くるぶしの下の痛みや腫れが続く方、片足だけ土踏まずが低くなってきたと感じる方は、早めにご相談ください。

FAQ

よくある質問

Q

扁平足は大人になってから治るものではないと聞きました。治療する意味はありますか?

A

後脛骨筋腱機能不全は、放っておくと少しずつ進行し、変形が固まってしまうことのある病気です。足の形が柔らかいうちに治療を始めれば、インソールや装具、リハビリテーションで痛みを抑え、進行を食い止められる可能性があります。土踏まずを完全に元の高さへ戻すことは難しくても、「痛みなく歩ける足」を目指すことには大きな意味があります。

Q

インソールは市販のものでも大丈夫ですか?

A

症状が軽い場合は、土踏まずとかかとをしっかり支えるタイプの市販品で楽になることもあります。ただし、足の柔らかさや変形の程度によって適した形や硬さは異なり、合わないものを使うと別の場所が痛くなることもあります。痛みが続く場合や、変形が進んでいる場合は、足の状態を確認したうえで、作製したインソールや装具を検討することをおすすめします。

Q

痛みがあっても、ウォーキングは続けたほうがよいですか?

A

内くるぶしの下の痛みや腫れが強い時期に長く歩くと、腱の傷みが進むおそれがあります。この時期は歩く距離や時間を減らし、自転車こぎや水中運動など足への負担が少ない運動に切り替えるのがおすすめです。痛みが落ち着いてきたら、インソールや支えのある靴を使いながら、少しずつ距離を戻していきましょう。再開の目安は、リハビリテーションの担当者と相談しながら決めると安心です。

参考文献

・Johnson KA, et al. Tibialis posterior tendon dysfunction. Clin Orthop Relat Res. 1989.
・Kulig K, et al. Nonsurgical management of posterior tibial tendon dysfunction with orthoses and resistive exercise: a randomized controlled trial. Phys Ther. 2009.
・Myerson MS, et al. Classification and Nomenclature: Progressive Collapsing Foot Deformity. Foot Ankle Int. 2020.



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