

すねの骨の奥、ふくらはぎの深いところに「後脛骨筋」という筋肉があります。この筋肉から伸びる腱(後脛骨筋腱)は、内くるぶしのすぐ後ろを回り込むように通り、土踏まずの内側にある骨(舟状骨)を中心に、足の裏の骨へ広く付いています。
後脛骨筋腱には、主に次のような役割があります。
つまり後脛骨筋腱は、足のアーチを保つ「吊り橋のワイヤー」のような存在です。この腱が傷んだり伸びたりして十分に働けなくなった状態を、後脛骨筋腱機能不全と呼びます。
この病気は、大人になってから土踏まずが少しずつ低くなっていく「成人期扁平足」の代表的な原因です。最近では、足全体が徐々につぶれていく変形という意味で「進行性の足部崩壊変形」という呼び方も提案されています。
なお、生まれつきや成長期にみられる子どもの扁平足や、舟状骨の内側に余分な骨がある有痛性外脛骨とは、起こる年代も成り立ちも異なります。大人になってから、もともとあった土踏まずが失われていく点が、後脛骨筋腱機能不全の大きな特徴です。

はっきりしたケガがなくても、長い年月をかけて腱が少しずつ傷んでいく(変性する)ことが主な原因です。
●腱が傷みやすい理由
後脛骨筋腱は、内くるぶしの後ろで急なカーブを描いて向きを変えます。この部分は腱がこすれやすく、しかも血流が乏しいため、傷んでも修復されにくいと考えられています。歩くたびに体重を支え続ける腱なので、負担の蓄積が起こりやすい場所でもあります。
●なりやすい人
●きっかけになりやすい出来事
「年のせいで足が平らになっただけ」と思われがちですが、実際には腱の働きが落ちていることが背景にある場合が少なくありません。
FAQ
扁平足は大人になってから治るものではないと聞きました。治療する意味はありますか?
後脛骨筋腱機能不全は、放っておくと少しずつ進行し、変形が固まってしまうことのある病気です。足の形が柔らかいうちに治療を始めれば、インソールや装具、リハビリテーションで痛みを抑え、進行を食い止められる可能性があります。土踏まずを完全に元の高さへ戻すことは難しくても、「痛みなく歩ける足」を目指すことには大きな意味があります。
インソールは市販のものでも大丈夫ですか?
症状が軽い場合は、土踏まずとかかとをしっかり支えるタイプの市販品で楽になることもあります。ただし、足の柔らかさや変形の程度によって適した形や硬さは異なり、合わないものを使うと別の場所が痛くなることもあります。痛みが続く場合や、変形が進んでいる場合は、足の状態を確認したうえで、作製したインソールや装具を検討することをおすすめします。
痛みがあっても、ウォーキングは続けたほうがよいですか?
内くるぶしの下の痛みや腫れが強い時期に長く歩くと、腱の傷みが進むおそれがあります。この時期は歩く距離や時間を減らし、自転車こぎや水中運動など足への負担が少ない運動に切り替えるのがおすすめです。痛みが落ち着いてきたら、インソールや支えのある靴を使いながら、少しずつ距離を戻していきましょう。再開の目安は、リハビリテーションの担当者と相談しながら決めると安心です。
参考文献
・Johnson KA, et al. Tibialis posterior tendon dysfunction. Clin Orthop Relat Res. 1989.
・Kulig K, et al. Nonsurgical management of posterior tibial tendon dysfunction with orthoses and resistive exercise: a randomized controlled trial. Phys Ther. 2009.
・Myerson MS, et al. Classification and Nomenclature: Progressive Collapsing Foot Deformity. Foot Ankle Int. 2020.