コラム・ブログ

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2026年8月25日

夜中に突然、肩が激痛で眠れない。「石灰沈着性腱板炎」の正体とリハビリテーションによる回復の進め方

ハイライト

昨日まで普通だったのに、夜中に突然肩が激痛になり、腕を1ミリも動かせない…。それは「石灰沈着性腱板炎」かもしれません。肩に溜まったカルシウムが溶け出すときに起こる、五十肩とはまったく別の急性の痛みです。痛みの正体と、痛みが引いたあとにリハビリテーションで肩の機能を取り戻し再発を防ぐ方法を解説します。

目次

石灰沈着性腱板炎とはどんな病気か

肩の関節は、「腱板」と呼ばれる4つの筋肉の腱が上腕骨を包み込むようにして支えています。この腱板の中に、リン酸カルシウムの結晶(ハイドロキシアパタイト)が沈着してしまうのが石灰沈着性腱板炎です。沈着しやすいのは、腕を横に上げる働きをする棘上筋の腱です。

40代から50代の女性に多くみられ、家事や仕事で特別なことをしていなくても発症します。「思い当たる原因がまったくないのに、ある日突然肩が動かなくなった」というのが、この病気の典型的な語られ方です。

なぜ突然、激しい痛みが起こるのか

意外に思われるかもしれませんが、痛みが出るのは石灰が溜まっているときではなく、体が石灰を溶かして吸収しようとするときです。

●石灰の状態は時期によって変わる

沈着した直後の石灰は、歯磨き粉のように硬く固まった状態で、この時期はほとんど痛みを感じません。健康診断のレントゲンでたまたま見つかることもあります。

●吸収期に激痛が起こる

体が石灰を異物と認識して吸収を始めると、石灰は液状に変化し、内部の圧力が急激に高まります。この圧力と炎症が腱を強く刺激し、耐えがたい痛みを引き起こします。夜間や明け方に突然発症することが多く、痛みで一睡もできない、腕の重みだけでも激痛が走る、という方も少なくありません。

●その後は自然に落ち着いていく

吸収が進むと石灰は消えていき、痛みも和らいでいきます。つまり激痛は、体が治そうとしている過程で起きている痛みでもあるのです。

五十肩や腱板断裂との見分け方

同じ肩の痛みでも、原因が違えば対応も変わります。目安として次のような違いがあります。

  • 石灰沈着性腱板炎…数時間から1日で急激に痛みが強くなる。じっとしていても痛い
  • 五十肩(肩関節周囲炎)…数週間かけて少しずつ痛みと動きの制限が進む
  • 腱板断裂…腕を上げる力が入らない、上げ始めだけ痛いなど、力の低下が目立つ

診断はレントゲン検査で石灰の影を確認することで比較的はっきりつきます。あわせて超音波(エコー)検査を行うと、石灰が硬い状態か、液状に変化している吸収期かまで確認でき、治療方針を決める助けになります。

痛みを鎮める治療とリハビリテーションの進め方

急性期(激痛のある時期)

まずは痛みを抑えることが最優先です。消炎鎮痛剤の内服に加え、肩峰下滑液包へのステロイド注射で炎症を鎮めます。液状化した石灰に対しては、エコーで位置を確認しながら針を刺し、石灰を洗い出す処置を行うこともあります。この時期は無理に動かさず、腕を安定させて休ませます。

◾️回復期(痛みが和らいできた時期)

痛みが落ち着いたら、リハビリテーションを開始します。急性期に肩を動かさずにいると関節が固まり、石灰が消えたあとも肩が上がらない状態が残ってしまうためです。まずは振り子運動など負担の少ない動きから始め、少しずつ可動域を広げていきます。

◾️安定期(再発を防ぐ時期)

肩甲骨まわりの筋肉や腱板を鍛え、腕を上げるときに肩の中で腱が挟み込まれにくい動き方を身につけていきます。猫背などの姿勢の改善も、腱板への負担を減らすうえで重要です。

保存的な治療で改善しない場合や、石灰が硬いまま残って引っかかり感が続く場合には、関節鏡による手術が検討されることもあります。

再発を防ぐために日常でできること

石灰沈着性腱板炎は再発することがあり、また反対側の肩に起こることもあります。次のような心がけが予防につながります。

  • 肩を長時間同じ姿勢で固定しない。デスクワークの合間に肩を回す
  • 洗濯物を干す、高い棚の物を取るなど、腕を上げる動作の前に軽く肩を動かしておく
  • 肩や首まわりを冷やさないようにする
  • 痛みが軽いうちに受診し、石灰の有無を確認しておく

当院では、レントゲンとエコーで石灰の状態を確認したうえで、痛みの時期に応じたリハビリテーションプログラムをご提案しています。突然の強い肩の痛みは我慢する必要のあるものではありません。眠れないほどの痛みがあるときは、遠慮なくご相談ください。

FAQ

よくある質問

Q

石灰は放っておけば自然に消えますか?

A

多くの場合、吸収期を経て自然に消えていきます。ただし激痛を我慢する必要はなく、注射や処置で痛みの期間を大きく短縮できます。また硬いまま残ると引っかかり感や動かしにくさが続くことがあるため、一度診察を受けることをおすすめします。

Q

カルシウムの摂りすぎが原因ですか?

A

いいえ、食事のカルシウム量とは関係がないと考えられています。血液中のカルシウム値も通常は正常です。カルシウムを控える必要はありませんので、骨の健康のためにも普段どおり摂取してください。

Q

痛みが強い時期は温めた方がよいですか、冷やした方がよいですか?

A

急に痛みが出て熱感や腫れを伴う急性期は冷やすほうが楽になることが多く、痛みが落ち着いてきた時期は温めて血流を促すほうが動かしやすくなります。判断に迷う場合は、リハビリテーション担当者にご相談ください。

参考文献

・日本整形外科学会 症状・病気をしらべる「肩の痛み(石灰沈着性腱板炎)」
・日本肩関節学会 一般の方向け情報
・日本整形外科学会診療ガイドライン 肩関節疾患に関する記載



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