2026年7月18日
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手首の手のひら側には、「手根管」と呼ばれる骨と靱帯に囲まれたトンネルがあり、その中を指の感覚を伝える正中神経と、指を動かす腱が通っています。この手根管の中で神経が圧迫されると、親指・人差し指・中指・薬指の親指側にしびれや痛みが出ます。これが「手根管症候群」です。
正中神経は、指先の感覚だけでなく、親指を他の指と向かい合わせる動き(母指対立運動)にも関わっています。そのため症状が進行すると、しびれだけでなく「ボタンがかけにくい」「小さなものをつまみにくい」「ペットボトルのふたが開けづらい」といった細かい動作の不自由さが出てきます。さらに進行すると、親指の付け根のふくらみ(母指球)の筋肉がやせて、手のひらが平らになってくることもあります。
整形外科の外来でも非常によく見られる疾患のひとつで、特に30代以降の女性に多いことが知られています。しびれという症状だけを見ると神経内科的な病気を心配される方もいますが、手首という限られた部位で神経が圧迫されて起こる、局所的な問題であることがほとんどです。
女性に多い理由としては、もともと手根管そのもののスペースが男性より狭い傾向にあることに加え、妊娠・出産や更年期のホルモンバランスの変化によって手根管内の組織がむくみやすくなることが関係していると考えられています。家事や育児で手首を酷使する機会が多いことも、発症のしやすさに影響している可能性があります。

手根管症候群の特徴的な症状のひとつが、「夜間から明け方にかけてしびれで目が覚める」というものです。日中は動かしている手首も、就寝中は同じ姿勢で長時間曲げた状態が続きやすく、手根管の中の圧力が高まりやすくなります。また、横になることで下半身にたまっていた水分が上半身へ移動し、手や手首がむくみやすくなることも、夜間に症状が強まる一因とされています。
目が覚めたときに手を振ったり、指を開いたり閉じたりすると症状が和らぐのも特徴で、患者さんの多くが「手をブラブラさせると楽になる」と表現されます。日中は忙しさに紛れて気にならなくても、休んでいるときにこそ神経の圧迫がはっきり自覚されるため、「夜だけの症状だから大したことはない」と誤解されやすい点にも注意が必要です。実際には、日中の細かい動作のしにくさが徐々に進んでいることも少なくありません。
FAQ
手根管症候群は自然に治りますか?
軽度であれば、手首の使い方を見直したり、就寝時に手首を安静に保つサポーターを使ったりすることで改善するケースもあります。ただし、しびれや筋力低下が進行している場合は自然経過での改善が難しいこともあるため、早めの受診をおすすめします。
手術が必要になるのはどんな場合ですか?
保存療法を行っても症状が改善しない場合や、親指の付け根の筋肉がやせてきている場合には、圧迫されている神経を開放する手術が検討されます。近年は負担の少ない方法での手術も普及しています。
予防のためにできることはありますか?
手首を反らせた姿勢を長時間続けない、パソコンやスマートフォンの使用中はこまめに手首を休ませる、手首に負担のかかる作業の合間にストレッチを取り入れることが予防につながります。
参考文献
・日本整形外科学会「手根管症候群」症状・病気をしらべる
・日本手外科学会 関連情報