2026年8月8日


「骨粗鬆症=女性の病気」というイメージが非常に強く定着しています。確かに女性は閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の急激な低下によって骨密度が減少するため、患者数は女性が圧倒的に多いのは事実です。
しかし、日本国内には約300万人以上の男性の骨粗鬆症患者が存在すると推計されており、全体の約25%、つまり4人に1人は男性患者です。
男性の骨粗鬆症には、以下のような女性とは異なる重篤な特徴があります。
●発見が遅れて重症化しやすい
女性のように骨折予防のための定期的な検診(骨密度測定)を男性が受ける機会が圧倒的に少ないため、本人が気づかないうちに進行します。多くの場合、転倒して大腿骨や背骨を骨折(いつの間にか骨折を含む)して初めて診断されます。
●骨折後の死亡率や寝たきり移行率が高い
統計データによると、大腿骨近位部(太ももの付け根)を骨折した後の1年以内の死亡率は、男性の方が女性よりも約2倍高いことが報告されています。これは、男性の方が骨折する年齢が高齢であり、心血管系などの合併症を抱えているケースが多いためです。
●明らかな原因疾患(二次性)が存在することが多い
男性の骨粗鬆症の約半数は、加齢だけでなく、特定の疾患や薬の副作用によって引き起こされる「二次性骨粗鬆症」です。したがって、持病を抱えている男性は、年齢に関わらず骨の脆弱化に対して警戒を強める必要があります。

男性における二次性骨粗鬆症の最も主要な原因となっているのが、現代病の代表である「生活習慣病」です。糖尿病、高血圧、慢性腎臓病(CKD)、脂質異常症などが骨の健康を脅かします。
それぞれの生活習慣病が骨を劣化させる具体的な医学的メカニズムは以下の通りです。
●糖尿病(特に2型糖尿病)
高血糖状態が続くと、血液中の過剰な糖分が骨の主成分であるコラーゲン(タンパク質)と結合します。これにより、コラーゲン繊維の構造が変化し、骨の強度が致命的に低下します。糖尿病患者は、健康な人と比べて骨折リスクが約1.5倍から2倍高くなると言われています。
●高血圧症
血圧が高い状態が続くと、体内でカルシウムの排泄機能が高まります。尿中へとカルシウムが余計に排出されてしまうため、体は血液中のカルシウム濃度を維持しようとして骨を溶かし、骨密度の低下(骨粗鬆症)を誘発します。
●慢性腎臓病(CKD)
腎臓は、骨へのカルシウム吸収を助ける「活性型ビタミンD」を合成する極めて重要な臓器です。腎機能が低下するとビタミンDの活性化が行われず、腸からのカルシウム吸収が激減します。また、不要なリンが体内に蓄積し、これがカルシウムと結合して体外へ排出されるため、骨がスカスカになります。
FAQ
Q
骨密度検査の結果が正常だったのですが、それでも骨折のリスクはありますか?
A
あります。糖尿病などの生活習慣病があると、骨の量(骨密度)は正常でも、骨のコラーゲンの質(骨質)が「悪玉架橋(AGEs)」によって劣化し、骨がしなやかさを失って脆くなっていることがあります。骨密度の数値だけで安心せず、持病がある方は骨質の劣化リスクも意識しておくことが大切です。
Q
生活習慣病があると、必ず骨粗鬆症になりますか?
A
必ずなるわけではありません。ただし、糖尿病や高血圧、慢性腎臓病などがあると骨が弱くなるリスクは確実に高まります。血糖値や血圧を医師の指示通りに管理し、タンパク質やビタミンD・Kなどの栄養を意識することで、リスクを下げることができます。
Q
骨を強くするために、自己流で筋トレを始めても大丈夫ですか?
A
持病がない方であれば適度な運動は有効ですが、糖尿病や高血圧をお持ちの方が自己流で高負荷なウエイトトレーニングを行うと、血圧の急上昇や脊椎の圧迫骨折などの危険を伴うことがあります。理学療法士の監督のもとで、血圧管理を行いながら安全に負荷をかけるリハビリテーションを受けることをおすすめします。
参考文献
・日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015」
・糖尿病における二次性骨粗鬆症の診断と治療に関するコンセンサス
・Male osteoporosis: epidemiology, pathophysiology, and management. Lancet Diabetes and Endocrinology, 2018.
・The role of physical therapy and cardiovascular-safe exercise in patients with secondary osteoporosis. Clinical Rehabilitation, 2020.