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小指と薬指だけがしびれる…肘の内側で神経が圧迫される「肘部管症候群」の見分け方とリハビリテーション

ハイライト

手のしびれというと「手根管症候群かな」と思われる方が多いのですが、しびれるのが小指と薬指だけなら、原因は手首ではなく肘にあるかもしれません。肘の内側を通る尺骨神経が圧迫されて起こる「肘部管症候群」です。進行すると指の力が落ち、手の筋肉がやせてしまうこともあります。しびれる指の場所で見分けるコツと、リハビリテーションを含めた対処法を整形外科の視点で解説します。

目次

しびれる指の場所が、原因を教えてくれる

手のしびれで受診される方の多くが、「手根管症候群ではないか」と心配して来られます。テレビや雑誌でよく取り上げられる病名なので、無理もありません。しかし手のしびれには複数の原因があり、どの指がしびれるかによって、どこで神経がトラブルを起こしているかがかなり絞り込めます。

手には大きく3本の神経が走っています。

●正中神経

親指・人差し指・中指と、薬指の親指側半分の感覚を担当します。手首の中にあるトンネル(手根管)で圧迫されると手根管症候群になります。

●尺骨神経

小指と、薬指の小指側半分の感覚を担当します。肘の内側にあるトンネル(肘部管)で圧迫されると肘部管症候群になります。

●橈骨神経

手の甲側、主に親指から中指のあたりの感覚を担当します。

つまり、しびれるのが小指と薬指だけであれば、原因は手首ではなく肘の可能性が高いということです。薬指はちょうど境目にあたるため、「薬指の小指側だけがしびれる」という訴え方をされる方もいます。これは尺骨神経のトラブルを強く示すサインです。

もうひとつの手がかりが、しびれる場所が手のひら側だけか、手の甲側にも及ぶかという点です。尺骨神経は手首より手前で枝分かれして手の甲側の感覚も担当するため、小指側の手の甲までしびれる場合は、肘のあたりで問題が起きていると考えやすくなります。

肘部管症候群とはどんな状態か

肘の内側、いわゆる「ファニーボーン」と呼ばれる部分を机の角にぶつけると、小指のほうまでビリッと電気が走る感覚がありますね。あれはまさに、尺骨神経が皮膚のすぐ下を通っているために起こる現象です。

この神経は、肘の内側の骨の出っ張り(上腕骨内側上顆)の後ろにある溝を通り、その上を靭帯や筋膜がふたのように覆っています。この骨と靭帯でできたトンネルが肘部管です。

肘部管はもともと余裕の少ない狭い通り道で、しかも肘を曲げるとさらに狭くなり、神経が引き伸ばされます。ここに次のような要因が加わると、神経が慢性的に圧迫されて症状が出ます。

症状は段階的に進みます。はじめは小指と薬指のしびれだけで、肘を曲げていると強くなり、伸ばすと楽になるという波があります。次の段階では、しびれが常時続くようになります。さらに進むと、指を開いたり閉じたりする力が落ち、細かい動作がしにくくなります。

進行した状態でよく聞かれる困りごとは、次のようなものです。

さらに進むと、親指と人差し指の間の水かき部分の筋肉や、手のひらの小指側の筋肉がやせて、へこんで見えるようになります。ここまで来ると、手術をしても筋力の回復には時間がかかり、元どおりにならないこともあります。だからこそ、しびれの段階で気づいていただきたい病気なのです。

こんな人に起こりやすい、という傾向

肘部管症候群は、中高年の男性にやや多い傾向があります。ただし年齢や性別にかかわらず、次のような方は注意が必要です。

  • デスクワークで、肘をついて頬杖をつく時間が長い方
  • スマートフォンを長時間、肘を深く曲げた姿勢で操作する方
  • 寝るときに肘を曲げて腕を抱え込むような姿勢をとる方
  • 長距離運転で、窓枠や肘掛けに肘を乗せ続ける方
  • 野球の投手や、柔道・レスリングなど肘に負担のかかる競技をしている方
  • 肉体労働で、重量物の持ち運びや工具の使用が多い方

とくに「寝ている間」は見落とされやすいポイントです。肘を曲げた姿勢で眠ると、肘部管の中の圧力は肘を伸ばしているときの何倍にも上がります。朝起きたときにしびれが強い、夜中にしびれで目が覚めるという方は、睡眠中の姿勢が症状を悪化させている可能性があります。

診断の進め方と、放置してはいけない理由

診察では、まずしびれの範囲を丁寧に確認します。小指側だけに限られているかどうかが、最初の分かれ道です。

そのうえで、次のような診察を行います。

◾️チネル徴候

肘の内側の神経が通る部分を軽く叩き、小指のほうへ響くしびれが出るかを確認します。

◾️肘屈曲テスト

肘を深く曲げた姿勢を1分ほど保ち、しびれが強まるかを見ます。

◾️筋力と筋のやせ具合の確認

指を開く力、紙を挟む力、手の筋肉のくぼみの有無を左右で比べます。

検査としては、レントゲンで肘の変形や骨のとげの有無を確認します。あわせて超音波(エコー)検査を行うと、神経が腫れている場所やガングリオンの有無をその場で確認でき、圧迫の原因を絞り込むうえで役立ちます。必要に応じて、神経の伝わる速さを測る神経伝導速度検査を行い、障害の程度を数値で評価します。

放置してはいけない理由は、神経の障害には回復の期限があるからです。しびれだけの段階なら、生活の工夫と保存療法で改善が見込めます。しかし筋肉がやせてしまってからでは、神経を圧迫から解放しても、痩せた筋肉が元の太さに戻るまでには長い時間がかかり、完全には戻らないこともあります。「そのうち治るだろう」と数年放置してから受診されるケースは決して少なくありません。

治療とリハビリテーション、日常でできる工夫

治療は、症状の段階によって変わります。

◾️保存療法(しびれが中心の段階)

まずは肘を深く曲げ続けないことが最優先です。日中の姿勢を見直し、夜間は肘が曲がりすぎないように、タオルを巻いた簡易的な装具や柔らかいサポーターで軽く固定する方法をご案内することがあります。あわせて、神経の回復を助けるビタミンB12製剤の内服や、炎症が強い場合には消炎鎮痛剤を用います。

◾️リハビリテーション

リハビリテーションでは、神経そのものへの負担を減らしながら、周囲の環境を整えていきます。

  • 神経の滑走を促す運動…肘や手首の角度をゆっくり組み合わせて動かし、神経がトンネルの中でスムーズに滑るようにします。強く引き伸ばすのは逆効果なので、痛みやしびれが強まらない範囲で行うことが大切です
  • 前腕と手のストレッチ…肘の内側から手首につながる筋肉の緊張をゆるめ、トンネル周囲の圧を下げます
  • 肩甲骨と姿勢の調整…猫背で頭が前に出た姿勢は腕全体の神経の通り道を狭くします。肩甲骨まわりを動かし、姿勢を整えることも症状の軽減につながります
  • 手指の巧緻性トレーニング…指を開く、つまむといった動作を反復し、残っている筋力を効率よく使えるようにします

◾️手術が検討される場合

筋肉のやせが始まっている場合、しびれが常時続いて生活に支障がある場合、保存療法を数か月続けても改善しない場合には、手術が検討されます。神経を圧迫している靭帯を切離してトンネルを広げる方法や、神経を圧迫の少ない位置に移動させる方法があります。手術後も、握力や指の細かい動きを取り戻すためのリハビリテーションが回復を左右します。

最後に、今日から実践できる工夫をまとめます。

  • 机で頬杖をつかない。肘を机の角に乗せない
  • デスクワークでは、肘の角度が直角より深く曲がりすぎないように椅子と机の高さを調整する
  • スマートフォンは長時間同じ姿勢で持たず、こまめに持ち替える
  • 寝るときは、肘を抱え込む姿勢を避ける。バンザイのような姿勢も神経を引き伸ばすので避ける
  • 車の運転で肘掛けに体重を預けない
  • しびれが強まった日は、その直前に何をしていたかを記録しておく(原因の特定に役立ちます)

当院では、レントゲンとエコーで肘の状態を確認したうえで、しびれの程度に応じたリハビリテーションと生活指導を組み立てています。小指側のしびれが数週間以上続いている、または以前より箸が使いにくいと感じている方は、筋肉がやせてしまう前にご相談ください。

FAQ

よくある質問

Q

小指のしびれは、頚椎(首)が原因のこともあると聞きました。どう見分けるのですか?

A

首の神経の障害でも小指側にしびれが出ることがあります。見分けの手がかりは、しびれが手だけにとどまるか、前腕や上腕まで広がるかという点です。肘部管症候群では、しびれは手のひら側と甲側の小指側に限られ、前腕の内側には及びません。また、首を後ろに反らすと症状が強まる場合は首が原因の可能性が高まります。診察と検査で両者を区別できますので、自己判断せずご相談ください。

Q

しびれているところをマッサージしたり、無理に伸ばしたりしてもよいですか?

A

神経が圧迫されている場所を強く揉んだり、しびれが出るまで引き伸ばしたりするのは避けてください。かえって神経を刺激して症状が悪化することがあります。リハビリテーションで行う神経の運動は、しびれが強まらない範囲でゆっくり動かすのが原則です。自己流で強く行わず、方法を確認したうえで実施しましょう。

Q

保存療法ではどのくらいで良くなりますか?

A

症状の程度によりますが、しびれが中心で筋力の低下がない段階であれば、肘の使い方を見直すことで数週間から3か月ほどで軽くなってくる方が多くみられます。3か月ほど続けても改善がない場合や、その間に筋力の低下が進む場合は、手術も含めて方針を見直します。経過を確認するためにも、途中で自己判断で通院を中断しないことが大切です。

参考文献

・日本整形外科学会 症状・病気をしらべる「肘部管症候群」
・日本手外科学会 一般の方へ「肘部管症候群」
・日本整形外科学会/日本手外科学会 末梢神経障害に関する診療情報



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