コラム・ブログ

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2026年5月18日

手のしびれや肩こりの原因は首にある?「頚椎症」の早期発見と痛みを和らげるリハビリテーション

ハイライト

マッサージしても治らない「頑固な肩こり」や「手のしびれ」は、首の骨(頚椎)の異常が原因かもしれません。加齢や長時間の不良姿勢により、首のクッション(椎間板)がすり減るのが「頚椎症」です。上を向いたときや、首を回したときに腕のほうまでピリピリと痛みが走るのが特徴です。放置すると、お箸が使いにくくなったり、ボタンがかけにくくなったりと、生活に支障をきたします。整形外科での正確な診断と、首周りの緊張を解きほぐすリハビリテーションが有効です。

目次

その肩こり、本当にただの「疲れ」ですか?

「最近、肩から首にかけてのコリがひどくて辛い」
「指先や腕に、ピリピリとしたしびれを感じることがある」
中高年になると、こうした不調を感じる方は非常に多くなります。多くの方が「ただの疲れ目だろう」「歳だから肩がこりやすくなったのだろう」と考え、市販の湿布を貼ったり、マッサージ店で強く揉んでもらったりしてやり過ごそうとします。

しかし、もしその肩こりやしびれが長期間続いていたり、特定の動きで痛みが強くなったりする場合は注意が必要です。それは筋肉の疲労ではなく、首の骨や神経に問題が起きている「頚椎症(けいついしょう)」という病気のサインかもしれないからです。

「頚椎症(けいついしょう)」とは何か? 原因と首の構造

私たちの首には「頚椎(けいつい)」と呼ばれる7つの小さな骨がブロックのように積み重なっています。そして、骨と骨の間には「椎間板(ついかんばん)」というゼリー状のクッションが挟まっており、首を前後左右に滑らかに動かす役割を果たしています。また、頚椎の中心には脳から続く太い神経(脊髄)が通り、骨の隙間からは腕や手先へと向かう細い神経の枝(神経根)が伸びています。

「頚椎症」とは、加齢に伴ってこの椎間板の水分が失われてすり減ったり、頚椎の骨そのものが変形してトゲ(骨棘:こっきょく)のように出っ張ったりする状態のことです。

年齢を重ねれば誰の顔にもシワができるように、首の骨の変形自体は決して珍しいことではなく、多くの中高年の方に見られます。しかし、そのすり減った椎間板や変形した骨のトゲが、近くを通っている「神経」を圧迫してしまうと、強い痛みやしびれといった辛い症状を引き起こすのです。

危険なサインを見逃さないで! 頚椎症の代表的な症状

頚椎症は、圧迫される神経の場所によって、症状の出方が大きく二つに分かれます。ご自身に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

  • 神経根症(しんけいこんしょう):手や腕のしびれ・痛み
    首から腕へと伸びる神経の「枝」が圧迫されるタイプです。
    ・片方の腕や手先に、ピリピリ・ジンジンとしたしびれがある
    ・うがいをするときなど「上を向く」と、首から腕にかけて電気が走るような痛みが強くなる
    ・首すじから肩甲骨の裏側にかけて、重苦しい痛みやコリが続く
  • 脊髄症(せきずいしょう):手先の細かい作業ができない・足のふらつき
    首の中心を通る「太い神経(脊髄)」そのものが圧迫される、より重症なタイプです。
    ・お箸をうまく使えない、シャツのボタンがかけにくい、字が書きにくい(巧緻運動障害)
    ・足が突っ張って歩きにくい、階段を下りるのが怖い(歩行障害)
    ・両手両足が同時にしびれる

特に後者の「脊髄症」のサインが出ている場合は、放置すると転倒や寝たきりのリスクが高まるため、一刻も早く整形外科専門医の診察とMRI検査を受ける必要があります。

痛みを悪化させる日常生活のNGアクション

頚椎症の症状を和らげ、進行を防ぐためには、日々の生活の中で「首に負担をかける動作」を避けることが非常に重要です。以下のNGアクションを行っていないか見直してみましょう。

・スマートフォンやパソコンを、うつむいた姿勢(ストレートネック状態)で長時間見続ける
・うつ伏せに寝て、首を不自然に曲げた状態で本を読んだりテレビを見たりする
・高さが合っていない枕(高すぎる枕)を使って寝ている
・首をポキポキと強く鳴らすクセがある
・美容院の洗髪台などで、長時間首を後ろに反らせる

首は、約5〜6キロもある重たい「頭」を細い筋肉と骨で常に支えています。姿勢が悪くなるだけで、首への負担は通常の数倍に跳ね上がります。正しい姿勢を意識することが、頚椎症の最大の予防法でもあります。

首の負担を減らす! クリニックで行う治療とリハビリテーション

「頚椎症=すぐに手術」と心配される方もいらっしゃいますが、手足の麻痺や歩行障害といった重篤な症状(脊髄症)がない限り、まずは手術以外の方法(保存療法)で痛みをコントロールしていくのが基本です。当クリニックでは、薬物療法と併せて専門的なリハビリテーションを提供しています。

  • 物理療法(牽引・温熱)

首を専用の機械で優しく上方に引っ張る「頚椎牽引(けいついけんいん)」により、狭くなった骨と骨の隙間を一時的に広げ、神経の圧迫を和らげます。また、ホットパックなどで首から肩にかけての患部を温め、血流を改善することで筋肉の緊張と痛みを鎮めます。

  • 理学療法士による徒手療法と姿勢指導

硬くこわばった首や肩周りの筋肉(僧帽筋など)を、理学療法士が専門的な手技で丁寧にほぐしていきます。また、首だけに負担がかからないように、肩甲骨の動きを良くするストレッチや、背骨全体のカーブ(姿勢)を正しく保つための体操をご指導します。

  • 生活指導と装具療法

痛みが強い時期には「頚椎カラー」と呼ばれる首のコルセットを処方し、首の動きを制限して安静を保ちます。また、ご自宅での正しい枕の選び方や、パソコン作業時の目線の高さなど、環境調整のアドバイスも行います。

首の不調は、放っておくと生活の質(QOL)を大きく低下させてしまいます。「歳だから仕方ない」「いつもの肩こりだろう」と自己判断せず、しびれや痛みが続く場合は、ぜひお早めに当クリニックにご相談ください。専門的な診断とリハビリテーションで、快適な日常を取り戻すお手伝いをさせていただきます。

参考文献

・日本整形外科学会「頚椎症性神経根症」「頚椎症性脊髄症」
・日本脊髄外科学会「脊椎・脊髄疾患の基礎知識」
・関連する整形外科学およびリハビリテーション医学の標準的ガイドライン



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